メディアグランプリ

貴方の概念をくつがえす?! 京都発、本当の納豆


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:小林祥子(ライティング・ゼミ平日コース)
 
「どこの誰が作っているか知らない大豆を使うより、実際に生産者さんと会って、話をして、自分の目で確かめて、そうやって選んだ大豆を使いたいんだよね」
そう熱く語ってくれたのは、京都鞍馬で納豆店を営む藤原さんだ。
藤原さんという納豆屋に出会ったのは、3月30日京都天狼院のイベント「秘トリップ」に参加した時のことだ。
この日、私は人生で初めて納豆屋に出会った。
 
その日は生憎の雨模様。その京都の納豆屋は鞍馬というところにあるという。
四条河原町付近の混雑を避けるためにも、タクシーで鞍馬駅まで向かった。
タクシーに乗り込み、少し年老いた運転手さんに場所を告げる。
「鞍馬駅にある納豆屋さんですが、藤原食品ってご存知ですか?」
「え? 納豆? わざわざ納豆屋に行くなんて、そんなに納豆好きなの?」
怪訝な顔で尋ねられた。
確かに、京都で納豆屋に行く人を乗せるなんて、これからもこれまでも私達ぐらいだろう。「いや、そういう訳ではなく……」
なんて、おかしな返事をしつつ、鞍馬駅まで行ってもらうことにした。
 
ここからは一方通行だから、と鞍馬駅の降り口に面した大通りで降ろされ、我々一行は納豆屋を目指した。
「表からは納豆屋と分かりづらいんです」
今回の秘トリップで、しおりの作成から京都の名所巡り、そしてこの納豆屋までアテンドしてくれている京都天狼院店長、池田さんがお店を探しつつ、そう教えてくれた。
「あ、ここです!」
池田さんの指したそこには、渋い赤い暖簾がかかったお店があった。お店といってもドアが開いている訳でもなく、中が見えるわけでもなく、何か商品が売っている訳でもない。
そのドアを開け、恐る恐る入ってみると、そこには想定外の風景が広がっていた。
 
私が入れるのではないだろうかと思えるぐらいの大きな圧力釜、そこにダクトパイプが繋がっており、ベレー帽、丸メガネ、エプロン姿の藤原さんが、大豆を炊いているまっ最中だった。
納豆屋に出会ったのも初めてだったが、納豆の製造現場に来たのも初めてだった。
 
私達を笑顔で出迎えてくれたのは、藤原食品4代目の代表。今回、我々一行がここに来た真の目的は、納豆屋で味噌を手作りすることだ。
皆さんは味噌を手作りしたことがあるだろうか。「私、味噌手作りしているの」と言われたら、なんて食に対して意識の高い人なんだろう。と感じてしまう。
私自身、手作り味噌には興味はあったが、実際に自分でやるとなるとハードルが高く、なかなかできないことだった。
銀色のテーブルの上に置かれた大きなボール、そこには塩と麹が準備されていた。
 
「では、味噌作り始めましょうか」
藤原さんの説明のもと、味噌作りが開始された。まずは、麹と塩を合わせる工程。それぞれがおもいおもいに混ぜ合わせる。単純な作業のようだが、この工程だけでもその人の混ぜ方によって味噌の味が変わるという。
もくもくと混ぜていると、お待ちかねの大豆が炊きあがったようだ。
「ここが見どころだから」と大きな圧力釜の圧を抜いて、蓋が開いた。
ふっくら、ピカピカの大豆が顔をのぞかせる。
それぞれのボールに大豆が投入され、勧められるがままその熱々の大豆を食べてみる。
「美味しい! 大豆ってこんなにも美味しいものなの?!」
あまりにも美味しさに全員言葉をなくして唸る。
これが、生産者さんに寄り添って仕入れた大豆。そして、これが藤原食品の納豆の原材料。
 
もっと食べたい気持ちを抑えつつ、味噌作りを続ける。
熱々の大豆と塩麹を混ぜ合わせる。もちろん、素手なので、やけどしそうにアツアツだ。
しかし、この時間が重要。ここで躊躇してしまうと、大豆がひんやり冷たくなり、固くなって潰れなくなる。あの味噌のペーストは、この潰す過程で作られているのだ。
全員が「アツいアツい」と言いながらも、まるで子供の頃に戻ったかのように大豆を潰し、粘土のようにこね、味噌作りは進んでいった。
最後はガーゼと酒粕で蓋をして、完了!
これで、6ヶ月間冷暗所で保管すると、自分が作った味噌が完成するという。なんとも愛おしい味噌。あんなにも美味しい大豆で作ったのだから、美味しいに違いない!
 
一般的に売られている納豆に使われている大豆は、アメリカまたはカナダの輸入物、もしくは国産物に大きく分類される。海外では大豆を食用にする文化がなく、輸入される大豆の大半は家畜の餌用として生産されていたものを人が食べる用にと出荷されているらしい。もともと家畜用の大豆なのだから、味が美味しいわけがない。
また、日本国内で作られた大豆であっても、多くの納豆は農協で売られている大豆を使用している。つまり、色々な農家から一定の値段で農協が購入するのだから、美味しい大豆を作ろうという考えは働きづらいといえる。それに、大豆は米との二毛作で仕方なく生産するという場合が多々あり、大豆専業農家というのは本当にごくわずかという。
 
藤原さんの納豆は違った。藤原さんは納豆屋であることを誇りに思い、だからこそ大豆農家を大切に考えていた。納豆は、大豆で変わるからと。
納豆は大豆で変わる。皆さんは納豆を食べて大豆の味を感じたことがあるだろうか。
藤原さんの納豆はしっかりした大豆の味がする。
そして、大豆の生産者さんだけでなく、藤原さんの丁寧な仕事がこの美味しい納豆を生み出している。
ぜひ、一度食べて欲しい。本当の納豆を。
 
 
 
 
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2019-04-23 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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