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メディアグランプリ

珍味を探すと、街はもっと楽しくなる。縁もゆかりもない福井を愛してしまった私の話


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記事:江戸しおり(ライティング・ゼミGW特講)
 
 
「福井出身なんですよね?」
 
福井とは正反対の太平洋に面した漁師町で生まれ育った私に、最近幾度となく投げかけられる言葉だ。
 
私が福井に初めて足を踏み入れたのは、3年半前のこと。偶然目に入った福井県への体験移住の募集がきっかけだった。
 
「あの鯖江市に」「めがね日本一」などと書かれている。「鯖江市」というのはどうやら「福井県鯖江市」のことを言っているらしい。これが、私の意識の中にはっきりと「福井県」が登場した一番最初だった。
 
調べてみると、福井は東尋坊と永平寺が二大観光地らしい。東尋坊のほうは、サスペンス好きな私にとってはよく知る名前だ。しかし、それが福井県にあったとは知らなかった。
 
永平寺のほうは曹洞宗の大本山らしい。大本山というのがどれだけのものなのか、当時の私にはよくわかっていなかったけれど、どうやら20代の女性がわざわざ旅行に行こうと思えるような県でないことだけはわかった。
 
福井県は、(株)ブランド総合研究所が発表する「地域ブランド2018」(魅力度ランキング)では39位。外から見ると微妙というのは数値でも裏付けられている。簡単に言ってしまえば「地味」なのだ。それでも私はなぜか、翌日には体験移住への参加申し込みをしていた。
 
楽しみと不安が交互に繰り返されるような日々を過ごしたが、移住初日、私を待ち受けていたのは、拍子抜けしてしまうくらい、想像よりもずっと素敵な福井県だった。
 
10月頭の福井は東京よりも暑いくらいで、きれいに晴れ渡っていた。(どんよりと曇っている日がほとんどであることは、そのあとの10日くらいではっきりとわかるのだが……。)山が近くに見えて、空気もきれいな気がする。それでいてど田舎というほどでもなく、ある程度の便利さもあるその街がやたらと魅力的に見えた。
 
「この街をもっと知りたい」
 
私は毎日あてもなく歩いた。
 
日々、小さな発見がたくさんあった。
なぜか蓋のない大きな水路、
そこかしこにある大小さまざまなお寺、
静かに佇む文化財、
電車が到着する時に鳴るやたらと長い駅メロ。
 
その一つ一つに感動したり、驚いたり、なぜだろう? と不思議に思ったり。私の感情はいちいちいろんな方向に行ったり来たりして、すごく忙しかったように思う。
 
そんな発見の日々で、一番琴線に触れたことは「人のあたたかさ」だった。
 
山あいの集落を歩いていると、向こうから自転車でやってきた中高生が、すれ違いざまに「こんにちは」と挨拶をしてくる。振り返った時には、彼らはもう声も届かない遠くに行ってしまっていた。知らない人でも、自転車に乗っていても挨拶をする。きっとこれが彼らの日常なのだろう。
 
近所のおばちゃんが、おすそ分けを持ってきてくれた。
近くに住むおじいちゃんが、畑仕事の手伝いのお礼に、軽トラに満タンに積んだ野菜をくれた。
何屋なのか、オープンしているのかもわからないお店のオーナーはすごく気さくで、1日中そこでダラダラすることもあった。
 
恥ずかしがりの福井の人に、「福井が大好きなんです」と言うと、とても嬉しそうに福井自慢が次から次へと出てくる。いつもは口癖のように「福井なんて何もないのに」と言っているのに。
 
もちろん、都会から来たわけのわからない若者にアレルギー反応を示した人も少なくはなかった。けれど、どう接していいのか迷っているだけで、根っこは優しいんだろうと感じる人ばかりだった。
 
福井には、キャッチーで無条件に人々が飛びついてしまうようなわかりやすい魅力はないかもしれない。でも、来れば必ずわかる良さがそこかしこにある。
 
そうだ、福井って、珍味だ。
 
珍味は、最初は躊躇するけれど、一度その味を知ってしまうとどこまでも奥が深くてハマってしまう。福井も、積極的に行こうとはなかなか思えない場所だけど、一度行くとその素晴らしさに、驚きにも似た感動を覚える。
 
人の優しさだけじゃなくて、食事の美味しさや、景色の美しさや、ちょっとした場所に詰まった偉大な歴史。どれも、福井を訪れないとわからなかったことだ。
 
 
あれから3年半。東京と福井を毎月行き来し、いろいろなところで福井の情報を好き勝手に発信させてもらっていた自分も、先日、正真正銘の福井人となった。
 
以前までは「外から来た人の目線で福井が語られることが新鮮だ」と言われていたのに、最近では「福井の人より福井人だね」と言われることも増えた。自分のウリみたいなものが薄れていることに危機感を感じなくもないが、くすぐったいような嬉しさがある。あたたかい人ばかりの福井人に、自分なんかがなってもいいのだろうか、という躊躇さえ覚える。
 
それでも、私以上に福井を愛する夫とともに見る福井の姿は、これまでとはまた違って見えて、まだまだハマりそうだ。
 
私も、珍味みたいな福井の一部になれたらいいなと思いながら、これからも、福井で生きていく。
 
福井に魅力を感じない人はたくさんいると思う。そういう人たちに私は、ぜひ福井の珍味な部分を探してください。と伝えたい。
 
 
 
 
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2019-05-02 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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