CORE1000ノミネート

『小さく賭けろ!』ピーター・シムズ著《CORE1000ノミネート作品》


圧勝するために小さく賭ける。

 

僕は最もよいビジネス書とは実際に使える本だと考えております。

それは例えば読んでいる間に、自分の仕事に関するアイデアや改善策が溢れてきて、何度も読むのを中断して、大量のメモを取らざるを得なくなるような本のことです。

 

 『小さく賭けろ!』は、まさにそんな本です。

 

実際に、僕はこの本を読み終えるまでに、1冊のメモ帳を最後まで書ききってしまいました。

そのおかげで、明日から何をすべきなのか、自分の仕事にどう活かせばいいのか、不思議なほど明確に頭の中に描かれることになりました。

 

まずは、冒頭の「ウケない」お笑い芸人についてのエピソードが抜群にいい。

 

ショーは45分ほど続く。その間、ほとんどのジョークはスベる。新しい演し物が最初に演じられるのを見るのは辛い。ジョークはしろどもどろになる。話の脈絡を自分でも見失ってノートを読み返す。明らかに面白くなさそうに腕組みをしている観客もいる。ロックのジョークに笑うのではなく、ジョークがスベっているロックを笑う声も上がる。自分ではこれ以上ないくらいの面白いネタを仕込んだつもりでも、何度繰り返しても観客が笑わないなら、お蔵入りにするしかない。逆につまらないジョークだと思っていても、小屋中爆笑の渦ということもある。(本文P6より)

 

面白いのは、この「ウケない」お笑い芸人が、決して「売れない」お笑い芸人ではないというところです。

じつは、この「ウケない」お笑い芸人は、アメリカでもっとも人気のあるコメディアンの一人、クリス・ロックです。

彼は、その小屋の45分のショーで何をやっているのかといえば、ひたすら生の客の反応を見ています。この小屋はいわば彼の実験室で、ウケようがウケまいが、さまざまな「小さな賭け」をしてみて、ここでの実験の成果を後に控える大きな舞台で活かすのです。そして、彼は本来立つべきその大きな舞台において、一際強い輝きを放ちます。

 

もちろん、彼が偉大な才能の持ち主であることは疑いない。彼の優れているところは、一つひとつのアイデアを育てていくアプローチにもある。彼が大舞台で見せる十八番の芸は、それまでに彼が小さな舞台で試した無数の失敗の上に成り立っている。(本文P5より)

 

あなたは失敗を恐れていないでしょうか。

失敗を恥ずかしいことだと思っていないでしょうか。

できるだけ失敗をしないように、事前に部屋に籠もって戦略を練ることは確かに大切なことです。

けれども、それよりも重要なことは、クリスのように実際に人前に立ってみることです。実践してみることです。実践して、失敗して、恥をかいてみることです。

そこからしか生まれないことが、世の中にはあるということを、この本は教えてくれます。

 

“Done is better than perfect” 最初から完璧を狙うな。(訳者あとがきより)

 

そう、完璧を狙ったとしても、おそらく、きっと、いや、絶対に、だ。絶対に物事が思い通り完璧に行くことなどない。

 

また、この本では、偉大な成功者たちの、結晶化された結果論ではない、貴重な「生」の部分が多く描かれています。

Googleのラリー・ペイジとサーゲイ・ブリンにも、アマゾンのジェフ・ベゾスにも、スターバックスのハワード・シュルツにも、そして、スティーブ・ジョブズにも、はじめから革新的なアイデアがあったわけではありません。数々の失敗と試行錯誤の中で、みな自分の強みを見いだしていきました。

それを聞くと、どこか、ほっとしないでしょうか。

彼らも我々とまったく同じで、一秒先の未来も予測できなかったということです。

 

マーケットは「不確実性」に満ちています。

そこで圧勝する唯一の方法は、やはり、小さく賭けることなのだと思います。賭け続けることなのだと思います。

 

それは人生についても同様に言えることです。

完璧に準備したと考えても、思い通りにいかないのが、マーケットであり、人生です。

思い通りにいかないとき、失敗したとき、この本を読んでいれば、次に自分が取るべき行動が明確にわかるはずです。

 

そう、また小さく賭ければいい。

 

この本は広く人生の成功哲学について書かれた本です。

成功のひとつの側面について、紛れもない真実を描いたものです。

 

改めて冷静に考えてみても、この本を買わない理由が見当たりません。

 

 

*この作品『小さく賭けろ!』を第1作目の「CORE1000ノミネート作品」に選定致します。また、近日中に「マガジン化」したリーディングライフもアップします。もっとも、「CORE1000」を利用するか否かは、版元様のご判断によりますが、当方としましてはご用命がある場合は全力でこの本を広めるお手伝いをさせていただく所存です。

 》》「CORE1000」専用ページ


2012-04-08 | Posted in CORE1000ノミネート, READING LIFE

関連記事