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今年52歳の母の挑戦が教えてくれたこと


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記事:結珠(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「面接、受かったよ!」
 
今年、52歳になる母からLINEで一報が届いた。
 
「まさか本当に行くことになるとは!」
と驚いた。それは、母が日本語教師として働くことになったという報告だった。
 
母は、一昨年から日本語教師の資格の勉強を始めていた。
毎日、仕事前にカフェで勉強をし続け、1年後には試験に合格し、日本語教師の仕事を探していることは知っていた。
「この年齢から良く挑戦するよな」と思ってはいたが、家族ぐるみで好奇心が強く新しいことに興味を持つ性質をだというとは自覚していたため、日本語教師として働くことなったと聞いても、そこまで驚きはなかった。
 
しかし、最後まで疑いを持っていたことがある。
それは、「働く場所」である。
 
そう、私の母は今年の10月から単身で台湾に住み、最低1年は現地の日本語学校で働くということになったのだ。
 
前触れが無いわけではなかった。
その報を受ける3ヶ月前のことだ。
私が台湾留学していた頃の友人から招待を受けて、結婚式に参加するために台湾へ行く事をなんの気なしに母に話した数日後だ。
 
急に「私も行くことにしたから案内ほしい」と言われた。
 
たしかに、私の留学時代も突発的に台湾に来た時もある母だ。
ひとり旅の予定だった私は「まあ、案内すれば、宿代とメシ代が少し浮くかもしれない」くらいに思って了承した。
しかし、そんな母には私の思いもよらない重大な任務があったのだ。
 
台湾に到着し、台北で母と合流した夜のことだ。
友人に聞いたおすすめの小籠包屋さんで夕飯を食べいる最中、急にこう切り出された。
 
「そういえば、明日〇〇日本語学校で面接があるんだけど、場所分かる?」
 
突然の発言に、私は咄嗟に
「え、面接? なんの?」と聞いた
 
「日本語教師のだよ」
 
そういえばそうだった! と、その時に母が日本語教師を目指していたことを思い出した。
しかし、まさかの国外でしかも台湾とは思っていなかった。
私自身、その学校が主催した交流会に何度か参加したこともあったので場所も知ってる。
台湾の中心街の近くにあり、台湾の日本語学校でもかなり大きな部類に入る。
 
母は、その学校で日本語教師としての働くための面接を受けるために台湾旅行についてきたのだ。
 
まさか台湾で働くつもりだったとは思わなかったので、とても驚いた。
 
「中国語、話せたっけ?」と聞いたら
 
「今から勉強する」と返ってきた。
 
「本気なのか?」
実際の所、その時点では私としてはあまり現実的でないような疑い半分の気持ちでいた。
そして、実際にはその台北で有名な日本語学校の試験には残念ながら落ちてしまったという報を受けた。
 
その時、私は内心、少し安心してしまっていた。
台湾に住むというのは、学生の頃に台湾に留学して、台湾の魅力にハマった私がいつか叶えたい夢でもあったのだ。
しかし、その夢に向かって努力出来ているとは言えず、いつか動き出せればいいやと思い、行動をしていなかった。
 
それを先に母に達成されてしまったら、何とも不甲斐なく、悔しい気持ちになる予感がしていたからだ。
そのため、初の試験には落ちてしまったと聞いたときには勝手にきっともう諦めるんだろうと思い込んでいた。
しかし、母は本気だった。
 
そして、遂に台北市から北部に上がったある市の日本語学校の面接に合格したのだ。
 
我が母ながら、すごいチャレンジだ。
年齢も既に50歳を超えており、中国語も今のところは一切話せない。
 
しかも、私の母は、父親や数人のスタッフとともに長野県の南部でオーガニック&エコロジーをコンセプトにした小売店を経営している自営業者だ。
その創業者としての職を手放すとなると勇気がいるだろうし、人手不足の昨今、会社としても大きな変化を強いられる。
息子の私が継ぐ選択肢もあったが、私としては両親を超えてこその息子の使命だと考えていたため、親の会社を継いだり、入ることはないという事は伝えていた。
 
普通に考えたら躊躇してしまう素材はいくつも思い浮ぶ。
しかし、母は諦めずに、言い訳をせずに自分の夢を達成したのだ。
 
その事実は、私に大きな気づくを与えてくれた。
 
私たちは、よく何かに挑戦したいことがあっても
 
「今から取り組んでも、遅いんではないか」
 
「スキルを持っていない自分にはできない」
 
「自分の今の環境を変えて、取り組む勇気がない」
 
といった言葉で挑戦を諦めてしまう事が多い。
 
しかし、私の母の行動はそれらの疑問や言い訳に対する全ての答えを出していた。
 
何歳になっても、自分の環境を変えてでもスキルを身に着けて挑戦することはできるのだ。
失敗したからといって、諦めなければ何度でも挑戦できる。
 
例えば、RPGの冒険者は何度挑戦して、敵に倒されても冒険者として復活する。
私達も、生きてる限りは失敗してもいつでも冒険者であり続けられる。
そこに年齢もレベルも関係ない。何度だって挑戦していいのだ。
 
自分の人生に言い訳をして、行動をせず、前に進めない人は村人Aと同じことだ。
同じ村で同じことを言い続けて、違うフィールドに出ることがないキャラクターになってしまう。
きっと、台湾に住みたいと言い続けて何も行動していなかった自分は村人Aになりかけていたのだと思う。
 
それを母親という冒険者に気付かされたのだった。
 
実際、母親に先を越されたという悔しさと今まで足踏みをしていた自分への不甲斐なさは感じた。
しかし、やるからには2、3年は台湾に住み、帰ってこないでほしいと今は思っている。
 
息子の使命は、両親を越すことだ。
いつからでも何度でも挑戦できることを母親から教わった私は、その母を追い越して見返さければいけない。
 
私が母を越すその時のためにも、母親には更に高く先へ進んでいてほしい。
 
 
 
 
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2019-09-13 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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