メディアグランプリ

「ごめんなさい」をファストパスにしない為に伝えたいこと


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:鈴木ゆうみ(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「なんて言うの? ごめんなさいは?」
 
3歳になり、言葉も随分上達してきた息子に、わたしが口癖のように言ってしまっていたこの言葉がもたらした悲劇の出来事を聞いてほしい。
 
泣くことが仕事だった0歳
ワンワンやニャンニャンが言えるだけでも可愛いかった1歳
少しずつ自分の気持ちを言葉で伝え、会話ができることが嬉しくなった2歳
 
そして3歳の今、まだまだ言い間違いが多いながらも、落ち着いて聞いてあげると「あれがしたかった」「〇〇くんがやりたかったのにー」と自分の気持ちはほぼほぼ伝えられるようになってきた。と、同時に、親や大人の顔色を伺いながらの行動・言動も増えた。保育園の怖い先生がいるだけで、いつもより何倍も大きな声で挨拶をしたり、自分でなんでもやって見せて見たこともないくらいお利口な息子に変化したり。
まさに、やっていいこと・だめなことをすでに理解していて、自分がどうにか嫌な思いをしなくていいいように、と幼子ながらに考えて行動しているのであろうと感じる一コマさえ見られるようになった。
 
そうともなれば親としては、悪いことは悪いと教えなければいけないし、悪いことをしてしまった時には「ごめんなさい」と言える子に育てなければいけない。「ごめんなさい」が言えないことは「悪」だと決めつけてしまう。わたしはそうだった。
 
そんなわたしの口癖は冒頭に書いた通り。
 
お友達のこと叩いてしまった時、お友達のおもちゃを横取りしてしまった時、気に入らなくてものを投げてしまった時、ママがこんなに忙しくしているのにわがままが止まらない時……
「なんて言うの? ごめんなさいは?」
 
呪文のようにこの言葉をセットにして繰り返していた。
 
最初はわんわん泣いているだけだった息子も、いつしか自ら「ごめんなさい」が言えるようになっていた。よしよし、わたしの伝えたかったことがちゃんと伝わっているな。うちの子は「ごめんなさい」が言える子に育ってくれているぞ!
 
そんなことをわたしの子育ての自信に変えていた時の出来事だった。
 
3歳児クラスも終盤になり、保育園でのお昼寝が無くなった。夕方以降眠くて機嫌が悪くなるであろうことはわかっていた。できるだけスムーズに寝かせられるように、息子の地雷を踏まないように、慎重に慎重に息子への対応を考える。腫れ物を触るかのように……とはまさにこのことだ。
 
が、そんなわたしの心構えは虚しく、この時の息子はどこを踏んでも地雷だった。
 
車のドアを自分で開けたかったのにー
玄関も僕が開けたかったー
どうして先に靴を脱ぐの?
階段登るのも僕が1番じゃなきゃ嫌だ
電気つけないで!
ご飯は食べたくない
お風呂は入りたくない
手も洗いたくなく、おトイレも行きたくない、
 
この通り、何をしても何を言ってもダメ。地雷を踏むとどうなるかと言うと、甲高い声で泣き叫び発狂する。それでも最初は、お昼寝が無くなって眠くて息子もしんどいのだろう……と大目に見ていられた。けれど3日目にもなると流石にこちらも腹が立ってくる。
 
「もうどうしてそんなにわがままばっかり言うの? もうママ知らないから、好きにしなさいよ!!」
 
あー、言ってしまった。
本当はこんなことが言いたい訳ではない、眠たいからわがままを言っている。ただそれだけの3歳児に対して、セルフコントロールが出来ない31歳母はわたし。
 
そんな時、息子はこう言った。
 
「ごめんなさいママーママーごめんなさいー……」
 
そう、堪忍袋の尾が切れてプンスカしている母を見兼ねた3歳の息子が先に謝まってきたのだ。
 
ここでふと疑問におもい……
 
「ねえ、息子くん。本当にごめんなさいって思ってる?」
 
「思ってないよー、うわーーーーん涙」
 
思ってないんかーーーーい!! と思わずツッコミを入れたくなる出来事(悲劇)である。プンスカしていたのもどこかに吹っ飛んでしまい、笑いを堪えながら、
 
「思ってないのにどうしてごめんなさいって言ったの?」
 
と聞くと、
 
「だってママ怒ると怖いから、そう言う時にはごめんなさいでしょ?」
 
あー、そうだよね。何かあると「ごめんなさいは?」と言われ、「ごめんなさい」と言うことでその場の嫌な雰囲気を打破してきたんだもんね。息子は私の教えを忠実に守っていた、ただそれだけだった。
 
そう、息子は「ごめんなさい」と言う言葉を、自分の嫌な場を早く凌ぐ為のまるでファストパスかのように使いこなしていたのだ。
 
本来親として子供に教えたい「ごめんなさい」はファストパスでは決してない。「ごめんなさい」の言葉の裏側にある子供たちの感情にしっかり向き合うことが出来た時、親として本当の「ごめんなさい」を教えてあげられるのかもしれない。いや、そこを大事にすることで教えると言うより子供たちが自ら、感じ学び取って使えるようになっていくのであろう。
 
とは言え、私たち大人も、上司が怒っていて全然自分は納得できていないけどとりあえずの「ごめんなさい」の免罪符を汎用していないだろうか。その姿を見せている限り、子供たちにそれをするなと言えるのか。
 
子育てに正解は無く、「ごめんなさい」が言えないことが「悪」とも限らない。時には大人が使う表向きの「ごめんなさい」が必要な時もあるのかもしれない。
ただ、たった一言の「ごめんなさい」の裏側の感情を知ろうとすることだけでも、子供たちの未来を変えられるチャンスを私たち大人は持っているのかもしれない……
 
 
 
 
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2019-11-08 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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