『カンブリア宮殿』「泥棒のおかげで成功できた」2000億企業アルペン/水野泰三《READING LIFE EXTRA》
社長の水野泰三氏が起業したのは、23際のときでした。
親に開業資金300万円を借りて、15坪の小さなスキー店から始まりました。
ところが、起業して2年ほど経ったある日、水野氏の店に泥棒が入ります。
被害総額実に300万円。
小さな店にとっては、致命的とも言えるダメージでした。
このままでは潰れると思って、水野社長がやったのが、売れる値段まで徹底的に下げてやる安売りでした。
「「安さ」が最大のサービスであると実をもって知った」と水野社長は言います。
しかし、過激な安売りに、周囲のライバル店が反発し、メーカーも反発します。それで、商品が入らなくなります。
それに対して水野社長はこう対抗します。
「商品がないなら、自分で作ってやる」
韓国の工場と組んで、自社ブランドを作ることにしたのです。
ただし、韓国サイドが出した条件が、最低ロット2000着という数字。
作ったはいいものの、それほどの商品を売る店が確保出来ません。
そこで水野社長が考えたのが、シーズンオフで使っていない球場を使って売ることでした。
これが、大当たり。3ヶ月で12億円売り上げることになります。
お金をリュックサックいっぱいに詰め込んで、腹に抱えて、その上からジャケットを着て、社員たちと寿司を食いに行き、大いに飲み、翌朝、そのまま銀行にお金を預けに行くという生活でした。
この方式で、一気に市場を席巻して行きました。
面白いのが、基本的に「仕方なく」やったことが、結果につながっていることです。
泥棒が入ったから、「仕方なく」大安売りをし、
↓
安売りをしすぎて、メーカーが商品を入れてくれなくなったから「仕方なく」自社商品を開発し、
↓
自社商品を作りすぎて、売る場所がなかったから「仕方なく」考えて球場で売るようになり、それが大ヒットすることになります。
つまり、そもそも、泥棒が入らなかったら、今のような成功がなかったかも知れません。
まさに、「人間万事塞翁が馬」です。
決して戦略でやってきたわけではなく、「仕方なく」、そしてお客様が求めることに応じてやってきたことが、いわば、自然体でやってきたことが、業界トップへと業績を引き上げることになりました。
そのように「自然体」であったからこそ、ピーク時の3分の1にまで本業のスキー市場が減った今でも、その当時の二倍の売上を記録しているのだろうと思います。スキーが売れなくなったので、「仕方なく」別のものを売っていく。そうして、売上のバランスを変えながら、40年間黒字を続けてきている。
実に、不思議な会社です。
そして、この水野社長の生来の素直さこそが、アルペンの強さなのだろうと思います。
《メモ》
23歳のとき、親に300万円借りて、15坪で起業。
今では2000億円の業界トップ企業。
二年後、200万円分の商品を盗まれてしまう。
仕方なく、安売り。
大手メーカーが商品を入れてくれなかったので、韓国の企業と組んで自社商品を作ることに。
大量に作ってしまって、店がなかったので、難波球場で安売りセール。
これが当たる。
考えて作ったのではなくて、しょうがなくて。
追い詰められたから。泥棒のお陰で成功できた。
新作スキー板のテスト。水の社長自らが試す。
ゴルフしているときに、目の前の山を見て、スキー場にいいと直感して、山を買い、スキー場を作った。そもそも商品開発用に作った。
ゴルフ場も持っている。
1978年いち早く中国へ。UNIQLOの本格進出より早い。
研究開発は国内で行なっている。