『なぜこの店では、テレビが2倍の値段でも売れるのか?』山口勉著《READING LIFE》
完全に、タイトルに惹かれて手にとったわけですが、とても勉強になりました。
のっけからこの本のコアを言ってしまえば、次の部分になるかと思います。
でんかのヤマグチという街の電器屋さんがある町田では、立て続けに家電量販店が出店してきて、一気に6店舗になりました。もちろん、小さなでんかのヤマグチは、価格では競争できるはずがありません。全国チェーンの家電量販店とヤマグチでは、スケールメリットという面において圧倒的な差があるので、勝負にならないのです。
価格で勝負しようとすれば、まるで、F1とアルトの勝負みたいなもの。戦えるはずがない。
自分だけなら何とかなりますが、40人の社員を路頭に迷わせるわけにはいかない。そこで、山口社長は考えました。
売上高が仮に3割減ると、25%の粗利では赤字になり、とても持ちません。
「いい電器屋だったけど、あれだけ量販店が出てくれば、いくらヤマグチが頑張っても無理だ。仕方がない」と、ご近所や地域の皆さんに多少は惜しまれつつも、潰れていたでしょう。
でも、粗利益が35%だったとしたら、どうでしょうか。実は売り上げが3割減っても赤字にはならず、前と同じくらいの営業利益が出せるのです。
簡単な計算をしてみましょう。
売上高10億円で粗利益率25%のとき、粗利益額は2億5000万円になります。販売及び一般管理費(販管費)が2億円だと、営業利益は5000万円です。
もし、10億円の売上高が3割減って、7億円になったとしましょう。粗利益率が25%ですと、粗利益額は1億7500万円になります。販管費が同じ2億円だと2500万円の赤字です。
でも粗利益率が35%だったら、どうでしょう。売上高7億円ですと、粗利益額は2億4500万円。販管費が同じ2億円ならば、営業利益は4500万円の黒字になります。
つまり、売上高が3割奥手も、粗利益率を25%から35%へと10ポイント増やせれば、以前の5000万円からはやや減るものの、4500万円という営業利益を確保できるわけです。
さらに、もし粗利益率が35%より1ポイント高い36%を達成できたならば、粗利益額は2億5200万円になります。販管費の2億円を差し引くと、営業利益は5200万円になりますから、以前よりかえって増えるわけです。
人は、窮地に立たされると、知恵を絞るものです。
「俺のフレンチ」や「俺のイタリアン」が、「回転率」に注目することによって、高級な料理を安価で提供できるようになったように、山口さんは、「粗利率」に注目して、この窮地を脱します。
社員の生活を守るために、家電量販店の攻勢によって売上高が3割堕ちても生き残ることができる数値のマジックを思いついた。
粗利率を確保することができれば、顧客に徹底したサービスを提供できるようになります。それこそが、まさに家電量販店が不得意な分野で、でんかのヤマグチが、大手に圧倒できる部分です。
自分の最も得意な分野を、さらに深く掘り下げることができた。
そこに鉱脈があった。
そういうことなのだろうと思います。
この1冊、とても勉強になるので、ぜひ、ご一読ください。
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