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拝啓 盗撮魔様


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:イトウユリ (ライティング・ゼミ5月開講通信限定コース)
 
 
拝啓
 
残暑の候、いかがお過ごしでしょうか。
 
先ず、突然にお手紙を差し上げるご無礼をお許しください。私は先日、貴方によって盗撮をされかかった者です。
 
「そんなことを言われても、相手はいっぱいいる」ではいけないので、もう少し詳しく述べさせてください。
 
私はある施設の公衆トイレの個室で用を足し、たまたま貴方のスマートホンがスーとドアの隙間から入ってくることに気が付きました。そして咄嗟に大声を出し、ドアを叩いてしまいました。貴方は驚いたのか、スマホを引き抜き走っていったその足音だけを残しました。
 
思い出していただけましたでしょうか。
 
コロナ騒動の真っ只中だからか、私は貴方を追いかける前に何故か手を洗ってから急いでトイレを出たが、時すでに遅し。もうそこには貴方はいませんでした。
 
仕方がないので、施設の方に事情を説明し、警察官にも来ていただき、説明と現場検証と防犯カメラの確認をしたら、貴方が映っていたので、一安心致しました。これでもしかしたら、あなたが見つかるのかもしれません。もう二度と会いたくないんですけどね。
 
ところで、先日こんなニュースを読みました。
 
ブラジルに住むある女性(仮にAさんとします)が最近のコロナウイルス騒動で大変ストレスを抱えていた。その彼女が見出したストレス発散は、海辺でお友達と共にヨガをすることであった。ヨガをしていたところ、知らない男性に盗撮された。その男性はイヤらしいことを言いながら盗撮し、インターネットに投稿したのでした。
 
Aさんはその事実を知り、大変なショックを受けた。彼女は自分のSNSに一部始終を投稿し、泣きながらもう二度とヨガをすることができないと言っていた。Aさんの中には、ヨガ=盗撮というものが刻み込まれたのです。そして、弁護士であるAさんは犯人を突き止めたので、訴えたとのことでした。
 
犯人を突き止めながらも、Aさんはこの一つの出来事によって心の平和が奪われ、大変なトラウマを植え付けられました。立ち直れることを願うばっかりですが、どうなんでしょうか。それだけ、盗撮は罪深い行いだと思いませんか。
 
貴方を含めた多くの性犯罪者のことを知りたくて、斉藤章佳著の『男が痴漢になる理由』という本を手に取ってみました。
 
その本には、痴漢や盗撮等の性犯罪は一種の依存症だと書いてありました。そして、著者のクリニックでは「性嗜好障害」と診断をするとのことです。その定義は以下の通りです。
 
「リスクを承知しているのに、自身の性的欲求や衝動をコントロールできない。または精神的、身体的、社会的な破綻をきたしているにもかかわらず、それがやめられない状態」
 
リスクとは逮捕されたり、家庭崩壊をおこしたり、学校や会社にいられないことです。貴方はそのリスクについて考えたことがあるのでしょうか。それとも、そんなリスクを冒してでも、その一瞬の気持ちよさに、それだけの価値があるのでしょうか。
 
正直、私にはその気持ちがわかりません。そして、貴方がこの行為を続けてしまうことでいつか後戻りができなくなることを心配しております。
 
中には、「病気だからやっても仕方がないのではないか」と開き直る方もいるとのことです。しかし、想像してください。貴方の大切な人や貴方自身(性被害者は女性に限らないことはご存じでしたか?)が、痴漢をされたり、盗撮に遭ったりしたらどんな気持ちがしますか。貴方は加害者にどんな気持ちを抱きますか。「病気だから仕方がないよね」と思えますか。
 
意外なことに、貴方を含めた性嗜好障害者の多くは学生時代に初めて犯罪をおこしているとも書いてありました。モテない、性欲の強い男性だという事実もないそうです。どこにでもいる、「普通」の男性が多いとのことです。
 
そして、この著者のクリニックでは治療も可能と書いてありました。ということは、貴方も盗撮を止められるチャンスがあるということです。
 
先から色々と書いてしまったことをどうか許していただきたいです。私はただ、私やブラジルに住むAさんのような被害者をこれ以上増やしたくないことと、貴方がどうか、不幸な結末を迎えないことを願うばかりです。
 
今夜、貴方の行為について考えてください。自分の立場ではなく、私やAさんの立場に立ってみてください。書籍が気になるようであれば、ご一読ください。
多くの人は安心して生活をしたいと考えております。
 
どうぞよろしくお願いいたします。
 
敬具
令和2年8月24日
あの時の女性
盗撮魔様
 
 
 
 
***
 
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2020-08-29 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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