チーム天狼院

私が今の子供に妖怪ウォッチを見せるべきだと思う理由《川代ノート》


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2013 ©Vive La Palestina

近頃なぜか急激に母性本能が増しており、子供ができたらどうやって育てようかとか何を教えようかとか、そんなことを妄想してばかりいる私である。まだ結婚すらしてないのにね。
子育ては何かと大変そうだ。何を食べさせるか、どうやって教育するか、どんな学校に入れるべきか、公園デビューはいつするべきか、云々……ママ達の悩みは尽きない。なかでもよく「子供にテレビ見せるべきか否か」問題をよく見かける。

「子供の教育のためには、テレビは見せないほうがいい! 無駄なものや教育に不適切なものが子供の目に映ったら悪影響! 一流の文化に触れさせて育てた方がよろしい!」
「テレビは見せたほうがいい! 子供はテレビを見て言葉を覚える! テレビを見れば時代の流れがわかるし、友達との会話も増える! だいたいテレビ見せないで育てるとかそんな余裕ないわ!」

うん、どっちも正しく聞こえる。どっちも最もな意見に聞こえる。

そういう私自身は、「子供にはテレビを見せた方がいい」派である。私はテレビをかなり見て育ったクチだ。子供の頃からテレビが大好きだった。なんだよ、論理的理由もなく、自分がテレビが好きだから自分の子供にも見せたいって思うだけかよ、と聞かれたら「はいそうです」と答えるほかない。完全なる私情。完全なる持論。科学的根拠など何もない。ま、でも一応主張したいことはあるのでよかったら聞いてください。

我が家は「よっぽどのものじゃなければなんでもOK!」って感じのゆるい縛りの家だったので、テレビを制限されることはほぼなかった。共働きで親が家にいる時間が少なかったということもあり、私は毎日テレビばかり見て育った。

月曜日は金田一少年の事件簿を見て、名探偵コナンを見て、世界まる見えを見て、スマップスマップを寝たふりをして布団に隠れながら見て、そのあと起きていられたらあいのりも見た(スーザンが好きだった)。そしてこっそり布団から覗いていることがバレて怒られた。
火曜日は伊藤家の食卓を見て、学校へ行こう! を見ながらごはん。食後にみんなで伊藤家トランプで遊ぶ(リカコとか伊東四朗の絵が描いてあるやつ)。
水曜日はトリビアの泉を見て、水10のワンナイロックンロールとココリコミラクルタイプを見て爆笑。しばらく「らひぃよ」と「ギューン!」と「だんすぃ」(男子)が口癖だった。ゴリエのミッキーを日々練習していた。リズム感がなさすぎて泣いた。水曜日は笑う日というイメージがあったから学校から帰るのが楽しみだった。
木曜日はポケモンと黄金伝説とうたばん。中嶋ミチヨの一ヶ月一万円生活のレシピ本をまだ持ってるのは我が家くらいじゃなかろうか。
金曜日はハム太郎とドラえもんとクレヨンしんちゃんとMステと金曜ロードショー(ジブリの日はアタリ)。クレヨンしんちゃんを見させてもらえない友達も結構いたなー。しんちゃんは映画も好きだった! ヘンダーランドの大冒険に出てくるジョマとマカオとあの古川登志夫の声の雪だるまが怖すぎて、しばらくトラウマでしたね。大人になってから見たら全然怖くなかったけど。
土曜日はUSO!?ジャパンで盛り上がった。心霊写真を見たあとは布団から足を出せなかった。昼間、土曜はあんまり見るものがないのでケーブルテレビのキッズステーションとカートゥーンネットワークを行ったり来たり。
日曜日はデジモンとちびまる子ちゃんとサザエさんとカードキャプターさくら(時間かぶってるのでさくらは録画、コレクターユイとかアリスSOSもこの時間だったっけ?)と笑う犬の冒険。あの信号のゲーム好きだったわ。そしてすべてを見終わったあとに翌日が月曜日であるという現実に絶望しながら就寝。
ちなみに朝はやじうまテレビから徐々にめざましテレビに移行。親が見てない隙におはスタも見ていた。

もー本当にテレビが好きで、朝起きたらまずテレビ、学校から帰って来たらテレビつけてTBSのジャスト!(あれすごい好きだったんですよお部屋改造計画とか。大御堂先生が手がけたパンダの部屋が忘れられない。いつか私の部屋もやってもらおうと思っていたのに……。復活してくれTBS!)を見て、5時〜6時のニュースの時間帯になると天才てれびくん見ながらお絵描きして遊んで、ゴールデンタイムにごはん食べながらまたテレビ見るみたいな感じ。

しかも夏休みとかはばあちゃんちに預けられていて暇だったので、それこそ朝から晩までキッズステーションとカートゥーンネットワーク、46チャンと47チャンのエンドレスリピートでしたよ。ときどき45チャンのファミリー劇場。ファミリー劇場は特撮の割合が多いのであんまり期待はしてなかったんだけど、本当にたまにメイプル物語(シルバニアファミリー的なアニメ)とかがやってるから10回に1回本気出してくるダークホース的な立ち位置だった。

毎日ケーブルテレビの情報誌みたいなやつで、その日に何をやってるかをチェックするのが楽しみだった。ちなみにキッズステーションはらんま1/2とかマジックナイトレイアースとか山ねずみロッキーチャックとかの再放送がやってるとアタリの日。カートゥーンネットワークだとトムとジェリーとパワーパフガールズと臆病なカーレッジくんと、たまに番組と番組の間にやってるスクービードゥーの短いアニメと、タイトルわからんけどフランスのハエのアニメが好きだった。

すいませんもうわかんない人からしたらなんのこっちゃだと思うんですけど、もー本当にそれだけテレビもアニメも大好きだったんですよ。しかもめぼしいテレビがやってなかったときはばあちゃんと一緒に世界名作劇場のビデオを延々見てました。小公女セーラとか小公子セディとかあらいぐまラスカルとか若草物語とか赤毛のアンとかハイジとかフランダースの犬とか。なのでばあちゃんは私がテストでいい点取ったり大学入試合格したり就職決まったり、何かいいことがあると今でも「あのとき一緒にハイジ見たのが教育によかったのかね!?」と嬉しそうに言ってくる。ウンそうかもねばあちゃん。たしかに、私の倫理観念は世界名作劇場で培われたと言っても過言ではない。セーラとかハイジとかスターリングとかセディみたいに心の綺麗な人間になりたいとあの頃から思っているような気がする。もちろん今でもセーラは私の憧れである。

まあそういう倫理観念を幼少期に養うことができたのはよかったものの、同時に、私がオタク気質になってしまったのはこのテレビを見る習慣のせいだと言ってもいいだろう。始まりはアンパンマンやセーラームーン、以来テレビとアニメを見るのが普通の生活を送っていた私は、小学校に入学したらゲームにハマった。ポケモンもどうぶつの森もスーパーマリオもめちゃくちゃやった。ゲームキューブとゲームボーイを毎日やりすぎて、さすがに何時間もぶっ続けでやっていたときは親に止められた。漫画も大好きで、なかよしから始まり、ちゃおに移行し、そしてりぼんで種村有菜の漫画にハマってついには友達同士で「えんじぇる」という漫画雑誌を作るまでの立派なオタクに成長した。でもえんじぇるめっちゃ面白かったんだよ! 下級生にもものすごい人気があって、創刊号が盗まれる騒ぎまであった。
しかし、私はおかげで同級生から「オタク」とバカにされ、漫画が好きな自分を恥じるようになって、中学に入学するときにはオタクを卒業しよう! と決意したのである。ま、結局巡り巡って、あと時代のせいもあって今は堂々とアニメも漫画もテレビも大好きと言えるようにはなったのだが。

なので、子供を私みたいなオタクにしたくない、と思う親ならやっぱりテレビは見せないほうがいいのだろうと思う。日本のアニメや漫画は面白すぎるし、一度ハマるとなかなか抜け出せない。「ゲーム脳」なんて言葉も話題になった。下手したら私もニートか引きこもりになってたかもしれない。大学のときだって夜中に小公女セーラ(どんだけ好きなんだ)を改めて見始めたら止まらなくて、結局朝になっても見終わらなくて授業サボったことあるしね。本当アニメ見たさに授業サボるとか最低最悪のクズだなと自分で思いながらもどうしても続きが気になってやめられず……。なのでそういう人間になるかもしれないという可能性を断ち切りたいなら、やっぱりテレビは遮断するか、制限した方がいいのかもしれない。一流のものに囲まれて一流の文化に触れた方が一流の人になれる確率は高まるのかもしれない。

でも私が一つだけ主張したいのは、子供の頃にテレビを見ないということは、「懐かしい」という感情を他者と共有する機会をかなりの確率で失ってしまうということなのだ。
この前学校へ行こう! の復活スペシャルがあって、私の友達の間はかなり賑わっていた。未成年の主張やビーラップハイスクールや東京ラブストーリーなど十年前以上のネタを数多くやっていて、みんな「懐かしい!!」と大騒ぎしながら見ていた。もちろん私も仕事から帰るやいなやすぐにテレビをつけてワクワクしながら見た。もー本当に懐かしすぎて涙が出るくらいだった。だぜが元気そうで安心した。
みんなまるで学生時代に戻ったかのように、会う友人に「学校へ行こう! 見た?」と聞きまくり、「そうだよアホだよ〜って懐かしいよねー!」と大笑いしていた。「学校へ行こう!」って本当にすごい番組で、これツイッターで呟いてた人も結構いたけど、「学校へ行こう! 見た?」って友達と話したいがために学校に行きたくなるっていう好循環を生み出していたのだ。
ネット上も学校へ行こう! の復活でお祭り騒ぎで、放送翌日はツイッターのトレンドには学校へ行こう! のキーワードがランクインしていた。
でも学校へ行こう! を子供の頃に見ていなかった人は、当然のことながらこのお祭り騒ぎには参加できない。どうしてこんなにもみんなが大騒ぎして喜んでいるのかがわからない。
テレビや雑誌などのメディアは時代の写し鏡と言われることもあるように、そのときに流行っていたテレビ番組を知っているという感覚は、自分がその世代に所属できているという安心感を与えてくれるのだ。「懐かしい」という感情を共有することは、自分には居場所があると実感するときのほっこりした気持ちに似ている気がする。だからみんなが「懐かしい!」と思っていることを自分だけがわからないというのは、結構寂しいものなのだ。

まーどうしてここまで私が主張するのかというのもですね、実は私自身が「懐かしい」の代名詞と言ってもいい「さわやか3組」を見てなかったからなんですよ!
で、一回友達同士でさわやか3組のネタで大盛り上がりになって、みんな「あれあったよね」とか「これあったよね」とか言ってて「さんさんさん、さわやか3組〜」とか歌って超盛り上がってたんだけど、私は何のことやらさっぱりで「はて?」って感じだったんですよ! それが本当にものすごく寂しかったの。あーさわやか3組見とけばよかった……! って超後悔したの。
そんな細かいことどうでもいいじゃんと思うかもしれないけど、そういう「みんなが大好きだったもの」を自分だけが知らない、という状況って結構キツイのだ。

今だってこの記事を読んでポケモンとか笑う犬とかトリビアとかのワード見て「うわっ、なつかしー! 見てた見てた!」って思った人いるでしょ! いるよな!? なあ!? いてくれよ平成4年生まれのみんな!!(押し付けがましいわ)

みんなが見てるテレビを見ないということはつまりそういう「あるある!」とか「なつかしー!」という感情を共有できないということなのだ。いや、もちろん一流の文学や映画を見るのもいいと思うけど、本はたぶん一人で楽しむ人が多いと思うから、おそらく人間失格を見て「うわっ、なつかしー! これ子供の頃めっちゃ読んでたよね!?」という会話は生まれないわけである。本屋のブログで何言ってんだって感じだけどさー。

今だって妖怪ウォッチがめちゃくちゃ流行ってて、私も正直「妖怪ってなんだよ! 絶対ポケモンの方がいいだろ! ピカチュウの方がかわいいだろ!」って思うけど、もし私に今子供がいたとして、子供に「妖怪ウォッチよりポケモンの方が面白いわよ、ママとポケモン見ようね〜」と無理やり妖怪ウォッチ見せないようにしたとしたら、たぶん私の子供は今の平成20年世代が大人になってからするであろう「子供の頃妖怪ウォッチって超流行ったよね〜」「コマさん超かわいかったよね!」って会話にのることができないわけですよ! それって超悲しくない?「俺……子供の頃ポケモン派だったから見てねーわ」ってなるわけですよ! 私の世代で言うデジモンクラスタと同じ気持ちを味わうことになるわけですよ!(デジモンに失礼や)
そんで、もし十年後とかにまたポケモンでも妖怪ウォッチでもない新たなモンスター育成系RPGがブームになったときに「こんなんより絶対妖怪ウォッチの方がおもしれーよな!」ってみんなで言うことができないって結構寂しいんじゃないかなーと思うの。だいたい今、私が「ポケモンのが断然面白いし!」って思えてるのだって、子供の頃に毎週ポケモンを見ることを親に許してもらえたから抱ける感情だからして……ってどんどん話が長くなるからこの辺でやめとくけど。

つまり、まあ、何が言いたいかというとですね、「流行りに乗っからない」ってすごくかっこいい言葉のように聞こえるけれど、案外、のちのち寂しい思いをするかもしれないという可能性があるということも覚えておいた方がいい、ということなのだ。
もちろん流行っているものやテレビでやっているものが全部いいというわけじゃないし、一流のものなんかよりみんなが好きなものの方がいい、というわけでもない。ただ「流行ってるからこう」とか「下品だからこう」とか「一流だからこう」とか「上質だからこう」とか、そういう区分けをするのはあんまりよろしくないんじゃないかと最近感じるのだ。
漫画やゲームは下品だからダメ、とか名作の文学を読めば一流になれる、とか、どこにも確証はないわけであって。一流とか名作とか言われているものに触れているからって自分が一流になれる保証はどこにもないわけじゃないですか。可能性は高まるかもしれないけど。おしゃれなものに触れていたからって自分がおしゃれになれる保証もないわけだし。なんつーか、こう、超大雑把に言うとチェスはいいけど将棋はダメみたいな、ぼんやりした「おしゃれ」とか「一流」のイメージにとらわれたくないなあと、最近よく思うのだ。

だからね、最初に書いた通り、完全なる私情であり持論であり、はっきりした科学的根拠もないんですけど。
私は子供の頃、ありとあらゆる流行りのテレビを見させてもらって、親にすごく感謝しておるわけです。「なつかしー!!」って大騒ぎするのってとっても楽しいしね。

なので、もし私に子供ができて、妖怪ウォッチに夢中になっていたら「ウヒャー!! コマさんかわいいー!! すげー!! えっこのじんめん犬って何? キモーイ!」などと言って一緒に盛り上がりつつ、「ジバニャンってニャースに似てない?」(猫であること以外何も似てないわ)などと、徐々にポケモンを普及させ、ポケモンもデジモンも大好きだった子供時代の私のように、妖怪ウォッチもポケモンも好きな子供に育てようと思うのであります。本人が嫌って言ったら別にそれでもいいけど。
ま、実際に子供できたら「テレビなんかつまらん! 本を読め本を!」と書店員らしくうるさく言うのかもしれませんが。

とにかく、まあ、テレビっていいよね! アニメっていいよね! 本ももちろんいいよね! 映画も! クラシックはわからんけどそろそろつっこんでみたいなー。
そんな、何のしがらみもハードルもない、何にでも興味が持てる雑食な人間になりたいなーと、日々思うのであります。

 

 

はー、すっきりした。めっちゃ主張したわ。
未成年じゃないけど思いっきり主張したわ。(な〜に〜?)

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