それ自体は、悪い事では無い筈。問題は、使い方です《週刊READING LIFE vol,105 おためごかし》
記事:[名前]山田THX将治(天狼院ライターズ倶楽部 READING LIFE公認ライター)
『自助・公助・共助』
東日本大震災以降、災害球の台風が来たり大き目の地震(熊本地震等)が来るたびに、よく聞かれる様になった言葉だ。特に、今年に入ってからは、折からの新型肺炎ウイルスの流行に伴い、より一層‘助け合い’的論点で世の中を語る傾向が強くなって来たと感じる。
ただどこか、真面目な生徒会長が上から目線で助け合うことを推奨している感じがしてならない。何故なら、この御時勢では、自分より他人(ひと)のことを優先する発言をしておいた方が、無難と感じるからだ。
しかも、助け合いを推奨する方の多くが、俗に言う学識経験者でただでさえ何気ない発言が、斜め下に向けられている感じがするからだ。
人間誰しも、他人の役には立ちたいものだ。他人からの感謝を、欲しがるものだ。それが、自らのアイデンティティーと感じるからだ。
しかし、解ってはいるものの、なかなか行動に移すことが出来ないものだ。そこで、御勉強が出来る連中が、したり顔で助け合いを唱えるものだから、一般人の我々は、その上からの意見をさもそれが正しいかの如く聞き入れてしまう。
行動に起こすかどうかは別にして、言われた通りに思考する方が、波風は立たない。それはあくまで、自分が進んで行動することでは無く、周りの空気を読んでのことだ。
自分の意志ではない。
元々日本人は、水と安全は、お上が施してくれるもので、その中で周りの空気を乱さず、自分の意志よりも言われた通りに行動することを良しとしてきた。言い換えれば、空気を乱さなければ多少の不自由はあっても、大過無く過ごすことが出来るということだ。
そこには自らの意志は無く、有るのは他人が取り決めた周りの空気だけだ。多少、居心地は悪かろうとも、安全だけは保障されている。
御為倒し(おためごかし)とは、表面上は他人の為を装って、実は自分の利益を図ろうとするものだ。しかしこれは、辞書に書いてある文字通り机上の論旨だ。基本的には、推奨される行動ではない。発言は綺麗ごとだし自分のことしか考えていないからだ。
従って、昨今の助け合いの賛同することは、自分の意志を示さず周りの意見に従っているので、御為倒しにはあたらないと一般論的には考えられる。
しかし問題は、自分の利益とは何かということだ。助け合いに参加することは、表面的には他人の為にはなっても、自分の利益にはあたらない。しかし、空気を乱さず自分を押し殺すことにかわりは無い。
では、何の為に自分の意思を曲げるのか。それは、周りとの無駄な摩擦を避ける為、自分が傷付かずに済む為なので、決して他人の為にしていることでは無い。総て、自分の為なのだ。
ということは、こうした空気を読み自分の意思を曲げてでも周りに付き従う行為は、御為倒しの中でも最も避けるべきと私は考える。何故なら、空気を読み自分を押し殺すことに、1ミリも本音が無いからだ。
本音を隠し周りの決定に従うことは、周りとの不要な対立を避けることは出来るが、相手のことを考えて取る行動ではなく、あくまで自分の安全を考えて取る行動だからだ。
これこそが、御為倒しの典型だと私は考える。
もし本当に、他人の為を考えるのならば、自分の安全などを気にせず、例え摩擦や対立が起ころうとも、自分が正しいと思った行動をとるべきと私は思う。
当然の結果として、自分が嫌われ傷付くことも有るだろう。しかしそれは、自分の安全を放棄した当然の結果だ。そこには自分の意思が有るのだから、受け入れられる対立だろう。
これとは反対に、他人の為を考えると見せかけて、自分のことしか考えない“共助”がある。
少し前に現れた『自粛警察』や、最近では街中で見掛ける『マスク警察』がそれだ。勿論、自粛要請に従わない飲食店に問題は有る。しかし、そこへ行くか行かないかは、客側が決める問題なのだ。それを声高に、営業している店舗をなじる『自粛警察』は、どこか“ヘイトスピーチ”に似ている気がする。
何故なら、問題に本質をすり替え、相手の為を思って言っている様でして、一方的に自分の考えを押し付けているに過ぎないからだ。
『マスク警察』も同じだ。
既に、専門医療機関から、マスクの効用は自分がウイルスを吸入しないようにではなく、周りに撒き散らさない様にする為に着用するものだとの結論が出ている。しかも、人が密集しない屋外では、着用する必要が無いとの見解もある。
これまた、マスクを着用するしないは、推奨されることは有るにすれ、個人の判断に任されているものだ。強制されるものではない。
この様に、他人の為を考え世に認められていると勘違いし、正義感ぶる『自粛警察』や『マスク警察』のような行動は、御為倒しの典型という外はない。
世の空気感を勝手に使って、自分の憂さを晴らしているに過ぎないからだ。
その上もっと悪い事に、こうした行為に走るのは、決まってオッサンが多いとのおまけが付くのだった。
御為倒しは、オッサンの得意技だ。なので、ウザいことこの上ないのだ。
それでもこのところ、『自助・公助・共助』の綺麗ごとは、現在も跋扈(ばっこ)している。
本当に、他人のことだけを、他人の為だけを、人間は考えられるのだろうか。
公助は兎も角、自らを助けられない者には、誰かを助けることなんて無理な相談というものだ。
例えば、経済的に困窮している人を見かねて、自らの総てを投げうって助ける人物なんてどこにも居ないからだ。従って、ほんの一握りの人を除けば、誰も他人を助けることなんて出来ないのだから。
勿論、マザー・テレサやコルチャック先生の例を出して、自らの財産や命を差し出して、他人を助けた例は有る。
しかし、そうした聖人君主は、人を助けること自体が、いや、助けることこそ自分のアイデンティティーに為っているのではないだろうか。
彼等だって、結局は自分の為だけにしか行動してはいないのだ。
果たしてこれ等も、御為倒しに分類されるのだろうか。
どこか問題視される御為倒し。
でも、使い方次第で、本当に他人の為にだってなると、私は考える。
□ライターズプロフィール
山田THX将治( 山田 将治 (Shoji Thx Yamada))(READING LIFE編集部公認ライター)
天狼院ライターズ倶楽部所属 READING LIFE公認ライター
1959年、東京生まれ東京育ち 食品会社代表取締役
幼少の頃からの映画狂 現在までの映画観賞本数15,000余
映画解説者・淀川長治師が創設した「東京映画友の会」の事務局を40年にわたり務め続けている 自称、淀川最後の直弟子 『映画感想芸人』を名乗る
これまで、雑誌やTVに映画紹介記事を寄稿
ミドルネーム「THX」は、ジョージ・ルーカス(『スター・ウォーズ』)監督の処女作『THX-1138』からきている
本格的ライティングは、天狼院に通いだしてから学ぶ いわば、「50の手習い」
映画の他に、海外スポーツ・車・ファッションに一家言あり
現在、Web READING LIFEで、前回の東京オリンピックを伝えて好評を頂いている『2020に伝えたい1964』を連載中
加えて同Webに、本業である麺と小麦に関する薀蓄(うんちく)を落語仕立てにした『こな落語』を連載する
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