チーム天狼院

【世にも恐ろしい女子ヒエラルキー・コラム】一センチのほくろ② 


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【コラム】1センチのほくろ①《川代ノート》

大学は、未知の世界だった。

人がたくさんいて、私のこれまで知らなかったことをたくさん教えてくれた。毎日新しいことばかりで、刺激がたくさんあって、面白かった。私は毎日勉強して、どんどん知識を吸収していった。授業は大変だったが、なんとか毎回いい成績を収めた。いくつかのサークルに所属し、それぞれで幹部を努めていた。サークルの運営に関わる中で、私は自分が人のために働くことに喜びを感じるタイプなのだと気がついた。大いに勉強し、大いにキャンパスライフを楽しんだ私は、その後大手企業に就職した。こうして私のキャリアウーマンとしての人生が、幕を開けたのである。

という入学前に抱いてた妄想は、はじめに授業を受けた瞬間にすべて崩れ去った。授業についていけない。知識がない。何より、みんなの頭があまりによすぎる。
せっかく自分の努力でどうにでもなる世界に入ったと思ったのに、全然そんなことはなく、むしろますますコンプレックスに苛まれる羽目になった。周りの人が優秀すぎる。自分とは違いすぎる。あ、また見つかった。ほら、またあった。日めくりカレンダーみたいに、自分のコンプレックスを一つ一つ数える毎日。
授業に行くのも面倒だし、サークルに行くのも面倒だった。何もするにも億劫だった。ぼんやりしたまま大学三年になって、就活がやってきた。あっという間に。
私、何がしたいんだろう。

やりたいことを見つけるために大学に入ったはずだった。大学に入れば「自分にはこれがある」と胸を張って言えるものが見つかるはずだった。幸せになれるはずだった。だってそのために死に物狂いで勉強して、受験したんだ。

なのに、まさか、こんなに早く、自分の道を決めなきゃならない日が来るなんて。

いつかやるんだろう、いつか頑張らなきゃいけないんだろう、でもまだだ。今じゃない。将来のことなんて、今決めなくても、その時がくるまでに決めればいい。焦ることはない。そう思っていたはずなのに、その「いつか」は案外、想像よりもずっと早く、やってきた。

子供の頃は、将来やりたいことや、自分がどうなりたいかなんて、大人になったら勝手に決められるものだと思っていた。お花屋さんになりたい。ケーキ屋さんになりたい。アイドルになりたい。絵描きさんになりたい。作家になりたい。夢なんて無限大に思いつくことができた。こんなにたくさんやりたいことがあるなかで、何かひとつに絞れるだろうかと心配なくらいだった。いつか大人になったら、今あるたくさんの選択肢や、夢のなかで、これだ、というものを決められるんだろうと。

でもいざ、その「いつか」がやってくると、私は結局、やりたいことが何も思いつかなかった。何をやりたいんだろう。何をやればいいんだろう。あれほどたくさんあった「やりたい」という願望は、知らないうちに消え失せて、気が付いたら、「やりたくない」ことばかりを毎日、飽きもせずに数えていた。

就活やりたくない。
仕事したくない。
社会に出たくない。

現状に満足しているわけじゃないのに、その状況を打破する努力はしたくなくて、ただ、やりたくない理由ばかり数えて、気が付いたら将来自分が何をやりたいのか、まったくわからないまま、就活をするはめになった。
年を重ねるにつれ徐々に、できないことが減っていき、できることが増えて行く。知識が増えて行く。いろんな情報を手にし、そして、それを自分で使用できるようになる。でもそれと反比例するように、どんどん、やりたいことが減っていく。子供のころに夢見ていたことなんて、所詮、夢にすぎない。ケーキ屋さんになりたいだの、絵描きになりたいだのといえば、まわりから「イタいやつ」扱いされるだろうことが、わかりきっていたからだ。
現実見ろよ。ちゃんと就職して、安定した収入を得るのが、一番幸せだろ。いい歳して、夢ばっかり語ってるやつって、本当イタいよな。
見えない誰かの批判する声が、想像の中で、私に語りかけてくる。
そういうことをぐるぐると考えていると、私は結局、自分のやりたいことなんて、何も浮かばないのだった。ただ、幸せになりたいということだけが、わかっていた。でも何が自分にとっての幸せなのかも、どうなったら自分が満足するのかも、わからなかった。
私は何のために就活をしているんだろう。何のために働くんだろう。何のために、会社を選ぼうとしているんだろう。
昔は、「やりたい」と思うことに、具体的で、明確で、出会ったばかりの他人を納得させられるような理由なんかなかった。ただ、好きだから、がんばりたい。それだけだった。

いったい、いつから。

いつから私は、理由がないと、頑張れなくなってしまったのだろう。いつから、努力をすることに毎回、理由を必要とするようになったのだろう。がんばらなければならない理由ばかり、一生懸命探そうとしていたのだろう。

もう嫌だ。こんな自分嫌だ。変わりたい。違う人間になりたい。でも変わる方法がわからない。自分の嫌いなところしか、わからない。

こんなことのために、頑張ってきたんじゃないのに。

はじまりは、小さな、たかが一センチの黒いほくろだったのに、コンプレックスは日に日に、増え続けた。

(1センチのほくろ③に続く)

 

つづき(見た目も仕事も自信がないと、人格で勝とうとしてしまうから、めんどくさい)は、12月8日夜9時公開!

前回【世にも恐ろしい女子ヒエラルキー②キャリア編】「デキる女」ってなんでみんな前髪立ち上げてるの?《女子とプライド・川代ノート》

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