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「うぃーふぃー」と「ある本」が教えてくれた、 鈍感と繊細のギアチェンジ


*この記事は、「リーディング・ライティング講座」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:堀川哲朗(リーディング・ライティング講座)
 
 
「人間の最大の罪とは何か。
それは鈍感である」
 
プロ野球で選手としても、
指導者としても活躍された、
野村克也氏の言葉である。
 
なぜキャッチャーが構えているところに
ボールが投げられないのか。
 
失敗した原因は何か。
うまくいっている人とは何が違うのか。
 
感じる力の差がそれを分けるという。
感じなければ人は動かない。
動かなければ、成長することもないのだと。
感性の重要性を説かれている。
 
思考停止にならずに、
アンテナを貪欲に張り情報を集める。
そしてその情報に敏感に反応し、
アウトプットし続ける。
仕事で結果を出すためには、必要な素養だ。
 
だから鈍感であることが、
成長の妨げになるということだろう。
 
では逆の解釈をする。
すべてにおいて
鋭敏なアンテナを
常に張り続けること、
その繊細さがすべての人に
プラスに影響するといえるのだろうか。
 
そうは思えない。
時には、その繊細さ
が仇になることがある。
「うぃーふぃー」って何ですか
10年以上前のことだ。
私は某代理店の
携帯キャリアショップの
店員だった。
いわゆる一つの通信会社のみの
端末を扱うお店と言ったら、
皆さんもいくつか思い浮かべて
頂けるだろう。
 
いわゆる折りたたみの
ガラケーからスマートフォンへの
移行期にあたる時代。
 
まだアプリなんて言葉も
ピンと来る人が少なかった。
 
使い方など含めての様々な
顧客へのフォローが必要で、
一人あたりの手続きの時間は長期化した。
おそらく来店客数も今の比ではないだろう。
 
そんな中でオプションも含め、
SDカードやケースといった
付属品販売のセールストークも
自分なりに編み出し、
営業成績は好調だった。
 
そんなとき、70歳前後の男性が
私のカウンターに現れた。
2ヶ月前に大手家電量販店で、
スマホへの機種変更をしたのだという。
彼は携帯会社から郵送されてきた
請求明細書を
握りしめ、私に冒頭のセリフを述べた。
 
「うぃーふぃー」とはなにか。
察しのいい読者ならお気づきであろう。
 
そう、「Wi-Fi」のことである。
当時はその言葉はまだ一般的に
は認知されていなかった。
 
そして私が驚いたのは、
その明細書の中身である。
ことごとくオプションや
付帯の契約が無料特典を経過し、
課金されている中身だった。
 
「うぃーふぃー」もそのひとつだった。
その中身は、本来請求されるべき
携帯に利用料をはるかにしのぐものだった。
 
私はすぐに案内した販売店に
の営業手法の魂胆に感づいた。
 
十分なサービスの説明もせずに
事態が発生したのは明らかだった。
 
私は、その困惑した、しわだらけの
老人の困り果てた表情に
「繊細」に反応した。
 
普段から、自分が担当した
顧客にはオプションや
付帯サービスを丁寧に説明、
提案し契約頂いていた。
 
それが当たり前だと思っていた。
ところが、どうやら市場レベル
では違ったことを、まざまざと
見せつけられた。
その後、別の家電量販店で
同様の契約をした事例を
職場で何度も目にすることになる。
 
ビジネスの目線でいえば、
目の前にいる人は
契約書にサインをしている。
問題はないということになるのだろう。
 
そんな現実がまかりとおるのが
ショックだった。
 
「自分がいいと思える商品
だから、お客様にも使ってほしい。
だから自信を持って提案する」
 
自分なりの「納得感」を
大事にすることが働く上で重要だ。
そう思ってきた。
 
その一方で
「仕事だから」と割り切って
顧客目線を忘れ、言われたことを
そのままやってしまう。その後を考えずに。
これこそ鈍感であることの弊害だろうか。
私もこの老人の対応も
淡々とクレーム対応として、
鈍感なまま対応する手もあったのだろう。
 
無理だった。
心の奥底で繊細さが反応した。
 
ありえない。
どうしてこんなことが通用するのか。
自分は何のためにこの仕事をしているんだ。
まだ若かったこともあり、
なかなか気持ちの切り替えもできない。
神経をどんどんすり減らす。
鈍感のギアをまったく切り替えよう
としない上司・同僚には
あまり理解を得られなかった。
 
「うちの店がやっていること
じゃないから、気にしなくていいよ」
 
「それ、契約書をちゃんと
見てない客のほうが悪いでしょ」
 
そんなことを言われて、
これ以上この職場にいることは
難しいと判断した。
 
言わんとしようと
していることは理解できたが、
自分の納得感を大事にしないと、
ダメになる気がした。
 
ここから得られた教訓は、
仕事のどこに意義を見出すかは、
人それぞれであるということ。
これにすべてに反応してしまうと、
疲れ切ってしまう。
 
自分の感じ方と、他人の
感じ方は違うと認識し、
鈍感と繊細のギアチェンジを
していくこと。
当時の私はまだその重要性を
認識できていなかった。
 
メンタルを安定させる上で、
必要なスキルである。
とはいっても、このことを
認識できたのはつい最近のことである。
 
「気がつき過ぎて疲れる」が
驚くほどなくなる「繊細さん」の本
(飛鳥新社 武田友紀)
という本を読んでからだ。
 
この本は「うぃーふぃー」に
まつわるエピソードを10年以上の
時を越えて、意味づけしてくれた。
 
そんな発見もあるのが
読書の醍醐味である。
10年前の自分に本当に読ませたかった。
自分が「これはいい仕事」だと
納得できるものを、遠回りせずに
追いかけることができただろう。
でも今からでも遅くはない。
 
鈍感と繊細、自分と
その周囲はどちらのギアで
動いているのか。
 
そのギアは違うことは、
みんなそれぞれ違う車に乗っているの
と同じように違っているのだ。
 
そこは、いい・悪いの問題ではない。
 
このことを知っているだけで、
自分自身のメンタルや人間関係は
大幅に安定する。
 
自分はこうしたい、
こうありたいという気持ちを
大事にして前に進んでいこう。
 
 
 
 
***

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2021-02-25 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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