心のマッサージのすすめ
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記事:藤井明子(ライティング・ゼミ日曜コース)
「肩がとても硬くこっている状態ですね」
マッサージを受けるとたいていこう言われる。マッサージを受けた後に、身体の動きが軽くなり、肩周囲が動かしやすくなった時に、ようやく、マッサージを受ける前の私が、身体がこっていたということに気が付く。身体がこっていたことに気が付いたことで、日々のセルフケアとして、毎日寝る前に短い時間でも自分で自分の体をほぐすように、簡単なストレッチをするようにしている。
休みの日に何をするか、という話題に、ジムでの筋トレや、マッサージオイルを用いたマッサージ、美容院に行く、エステに行くなどの身体のケアの答えを聞くことはある。しかし、心理カウンセリングを受けに行くという心のケアの話題は少ない。身体のケアの話題と違って、日本においては、心のケアは一般的ではなく、少しネガティブな印象を持たれる方もいるようである。
日本での20~60代男女1000人を対象にした市場調査によると、心理カウンセリングの利用をしたことがある人はわずか6%と少数のようである。また、心理カウンセリングをあまり利用したくない、または全く利用したくないという人は全体の67%と多くいるようである。私も子育てを通してセルフカウンセリングを学んだものの、学んだことを周囲の人に言うことに始めは抵抗があった一人である。
海外では、重要なビジネスの商談の前、人生の決断をする前に、心理カウンセラーにカウンセリングを受けることはめずらしくなく、企業の経営者には専属のカウンセラーがいると聞いたことがある。日本の心理カウンセリングのイメージよりも、敷居は低いようである。
私は数年前、親戚も知り合いもいない地方で娘を育てながらと仕事をしていた。しばらくして、長男を出産した。長男の頭のてっぺんに二か所ほど左右対称に頭血腫ができてしまい、私の出産の仕方が下手なせいだと、自分を責める夜を数日過ごした。産後しばらくは、母が手伝いに来てくれた。しかし、地方での子育ては、私一人が取り残されたようで、地域の人にどうみられるかが不安で、頼ることもできなかった。その数年後に次男を出産した。3人目の出産とはいえ、少し不安があったのに、余裕のあるふりをして、モニターを見ながら冷静なふりを装っての出産だった。3人の子育ての生活が始まった。産前4週まで仕事をし、産後8週で仕事に復帰した私は、ファミリサポートを利用して、地域でのサポートを受けられるようになっていた。ばれたくはなかったのだけれど、ファミリサポーターに私の身分がばれてしまい。小児科医のくせにちゃんと子育てができていないと思われていそうで不安だった。地方での子育ても少しずつ慣れてきた時に、主人の転勤が決まった。地方での生活をこんなに頑張っているのに、我慢しているのに、なんでまた新たな場所に行かなくてはならないのだろう、我慢をしなくちゃいけないのだろう、と心が悲鳴をあげていた。心が悲鳴を上げると、イライラして、孤独で仕方がない感じがした。
そんな時に、ある心理カウンセラーがテレビで「海外ではカウンセラーに話をきいてもらうのはよくあることで、心のメンテナンスをするのは当たり前のこと」と言っているのを耳にした。
心のメンテナンスを受けることは、変わっている事ではないのだと、カウンセリングを受けてみることにした。初対面のカウンセラーだけれど、お金を払っているから秘密も守ってくれるという安心感もあり、1時間ほど心のモヤモヤした思いを話すことができた。誰も私に頑張りを強要しているわけではないのに、私が私自身に勝手に我慢や頑張りを強要していることに気が付くことができた。ずっと自分が自分のことを知っていると思っていたのに、近すぎて自分のことが見えない状態だったのだ。カウンセラーに話すことで、自分の周りにかぶせていた重たい鎧が解けていくように、心が軽くなった。そして、自分のこれまでの心の偏りから負った傷を癒そうと、カウンセリングを学ぶことになった。
心理カウンセリングは心のマッサージである。心理カウンセラーなどの第3者に話すことで、自分の心のこり、心の偏りに気づくことができる。その心の偏りや思考の癖に気づくことができれば、日々その癖をほぐすように、心のストレッチをしていけばよいのだ。始めは
自分自身でストレッチを行うのは難しいかもしれない。病院やクリニックでなくても、心理学系の学部がある大学付属の心理相談室や、公認心理士や臨床心理士が開いているカウンセリングルームでもカウンセリングを受けることができる。休みの日に、筋トレや美容室やエステで身体を整えるように、心のマッサージとしてのカウンセリングで、心のコリをほぐすことをお勧めたい。
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