水族館へ行こう
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:小泉琴子(ライティング・ゼミ日曜コース)
「なぜ魚をみて、わくわくしたり癒されるのだろう」
「スーパーに並べてある魚と生きている魚とどう違うんだろう」
私は全く意味がわからなかった。
冷めた気持ちで傍観者として、魚をみて喜ぶ人々を眺めていた。
観光名所として有名で、他に行くところもなかったことから私は水族館に来ていた。
ただ水槽の魚を眺めても、私には良さがさっぱりわからなかった。
魚屋で魚を見る時はなんも思わないのに、なんでこんなに人々が喜んでいるんだろう、と不思議に思っていた。
お客さんの中には、めちゃくちゃ詳しい人がいて、友人に魚の生態について自慢げに解説する会話が聞こえてくる。
子どもは好奇心を刺激されて、水槽を張り付くように見ている。
「海からこんな狭い水槽に連れてこられてこの魚たちは幸せなんだろうか」
いつの頃からか水族館や動物園など、人間と同じ命のはずなのに檻に閉じ込めて鑑賞する文化がよく理解できなくなっていた。
さらにはその地方は海鮮が有名で、水族館の中のフードコートでは寿司や海鮮丼が売っている。
魚を見た後に海鮮を何も感じずに食べられる人たちが本当理解できない。
……こんなことを考えながら、一人浮世離れしているなと思いながら歩いていると、見つけたのである。
これによって、私はこの水族館が日本一とまで思うようになった。
帰る頃には、新しい知識を得たことが嬉しくて、魚を見た後に海鮮丼を食べる人々のことなんて気にならなくなっていた。
それはグレートバリアリーフの水槽のコーナーにあった。
メインはファインディングニモの映画で有名となったカクレクマノミや色とりどりの魚たちである。
周りを見渡しても、みんなニモたちに夢中でそれを興味深く見ているのは私くらいだった。
そこの壁に小さくそのドキュメンタリービデオはあった。
それは、サンゴの生態のビデオとその解説だった。
米軍基地の関係で沖縄のサンゴ礁が失われつつあるらしいことや、四国の周りや他の日本の海でもサンゴの化石化が問題になっていることや、中国人が日本のサンゴを買い付けていることなどサンゴが人間の活動によって危機に瀕している話はかねがね耳にしていた。
とりわけサンゴに興味があったとは思っていないが、こういったニュースを覚えているということは何かしらの関心はあったのかもしれない。
私は全く知らなかった。サンゴは動物であるということを。
水族館の解説によると、サンゴはイソギンチャクと同じような種類で分類としては動物になるという。
これまでわかめなどと同じような植物の一種かと思っていた私はびっくりである。
さらに、サンゴは子どもの頃は移動できるらしいのだ。
その生態ビデオには、サンゴがタラコのような形で海の土の中を進む様子が映されていた。一度決めると一生場所を変えることはできないため、慎重に一番よい土地を探すそうなのだ。その姿は昆虫のようだった。
また、サンゴは4月~6月の満月の日に一斉に産卵するらしい。
そこから手のひらの大きさになるまでに、早い種でも5年はかかると紹介されていた。
それは、1m×1mあるかないかの本当に小さいスペースだった。
私はそれでサンゴに魅了されてしまったのである。
その水族館は、カワウソ、アザラシ、オットセイ、ペンギンなどの有名な生き物はもちろん、豪華なイルカのショーを行ったり、かなり大型の多種多様な魚がいる水族館だった。
その中で小さなサンゴの展示をきちんと見る人など1%にも満たないに違いない。
その小さな展示のおかげで私は水族館は、魚を見る以外にも新たな知識を得ることができる場所だということが分かった。
サンゴについてなんて、自主的に調べる機会もそうそうない。
それは、仕事で新たな気づきを得た1日のようだった。
普段はストレスフルで大変な思いをしているが、たまに自分が興味のある出来事があったり、やりがいを感じたりする。そのために日々大変な思いをするのである。
ただの癒しではなく、社会の見え方が変わり、何かアクションに取り組む人々が増え、環境保護活動が進むのなら動植物を檻に入れて鑑賞するのも必要な犠牲なのかもしれない、などと考えるようになった。
今回のコロナウイルスの出現のように、私たちを取り巻く生物は刻一刻と変化している。絶滅危惧種も年々増えてきていて、多様性が失われつつある。一見何の関連もないように見えても、それぞれの種は関連しており、その影響は人間にも及ぶ。
色々な生き物がいるということに気づくこと、新たな気づきを得て社会の見え方がほんの少しでも変わること、そんなことがたった1日でできるなんてすごいではないか。水族館バンザイ!
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