メディアグランプリ

わんぱく坊主は成長する

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:樋口智香子(ライティング・ライブ名古屋会場)
 
 
「先生は何が好き?」はっきりとした通る声。
ぎょっとした。その声を発したのは我が息子だった。
 
小学校入学式の日。
式典が終わり各クラス分かれて教室に集まった。初めての教室、初めてのクラスメイト、初めての指定された机と椅子に、どの子もワクワクと不安で緊張している様子だった。うちのわんぱく坊主を除いては。
小学校一年生の父兄たちは教室の後の方で広がって見守っていた。これから始まる我が子の小学校生活に期待と心配で同じように緊張している。
 
入学したばかりの小学一年生を前に、その初日の教室で教壇に立った担任の先生は、ご自分の「開口一番」の前に、突然始まったスタンドプレーに驚いたに違いない。
しばらく沈黙があった。それでも先生は
「食べものならメロンとかりんごとか果物かな」
と応じてくれた。
その後もインタビューさながらの質問は続く。スタートラインで邪魔されたにも関わらず応じてくださった先生は辛抱強い。
教室がざわつき始めた。
ついに先生は「また後でね」と質問をかわしてクラス全員への話を始めた。
翌日から始まる学校生活に関する注意事項や父兄への連絡が終わって解散となった。
このタイミングを待っていた私は、早速、座席の息子に走り寄って
「聞きたいことがあったら『はい、先生』と言って、先生が名前を呼んでくれてから聞いてね」と手を挙げるジェスチャーをして諭したのだった。
 
その様子を眺めながら教室を後にして行く父兄達。
入学式といえば、担任の先生と新入生の子どもたちの初顔合わせの場面で、文字通り小学校時代の幕開けだ。そしてクラスメイトの父兄の初顔合わせの場でもあった。
 
顔見知りの父兄がニヤニヤしながら、いやニコニコかもしれないが、こちらを見ている。
 
ご近所の同級生のお母さんは、早速このエピソードをご家族に披露していた。口止めされていることを前置きして、その家のおばあ様が我が家のおばあ様に「お宅のお孫さんにびっくりしてね」と話題にしていた。
おそらくは、この調子が繰り返されると「評判になる」ということなのだろう。
 
我が家の子どもたちは、夫婦共働き家庭で日常的に祖父母に見てもらっていた。祖父母の負担を少しでも減らしたくて、送迎バスのある私立の幼稚園を選んで通っていた。
ほとんどのこどもが自宅から1㎞の公立保育園卒園だったなかで、息子の通った幼稚園出身はクラスでふたりだけだった。ほかに面識のある一年生は、ご近所の女の子ひとりで、興味のある遊びも少し違ってそれまでの接触も少なかった。
普通なら、初対面の子どもたちの中で、うちの子はちゃんと馴染んでいけるのか、と心配になるところだが、入学式の日にそんな心配は無用であることが証明された。
 
入学式の日のインタビュー事件の直前に予兆のような出来事があった。先生が教室に入る前の少しの時間、教室で息子をチェックしていると、座ったまま後ろの席の子に何やら話しかけている。決められた席にきちんと座り、これから始まる未知の世界を待っている子どもたちの中で、話しかけられているその子は、俯いてきまり悪そうにしている。息子は初対面の子に積極的にアプローチしているのだ。相手の戸惑いには関係なく。大人にある「空気を読む世界」は子どもには通用しない。
初めての世界で物怖じしない。人見知りしない。彼は逞しくてこの先楽しみでもあるが、これから幼い子どもたちによる集団生活の中で、ルールを守り、人の気持ちを大切にすることを学んでいくのだ。
 
子どもには無知で残酷な時代がある。無知は無邪気につながって、罪がないことでもあるので、純粋で汚れがないという解釈もできる。けれども「無知の知」は持ち合わせておらず、知らないことで、ルールを守れず、人の気持ちに頓着しないで傷つける残酷性も一面にあると感じる。単純に天使のままであってはいけない。
そして、子どもの世界もその世界なりに小さな社会の問題がたくさんあって、ストレスも多い。
 
私たち大人は子どもを正しく理解し、教え育てていく義務がある。
教育によって、子どもたちにはルールやマナーを守ることの意義、優しさ、良心を持つことの大切さを知って欲しい。問題を解決していく前向きな人生を歩んでいけるようになって欲しい。
たくさん抱きしめて、愛情たっぷりに見守って、あなたたち子どもの未来を応援し続けます。
そして大人も子どもと共に成長する努力を惜しまず、お手本になるよう頑張ります。
子どもの成長は大人にとっても人生の励みになる。少しの間の同じ時代を過ごして、共に成長して、価値あるものをバトンしていけたら素晴らしい。
 
 
 
 
***
 
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2022-01-05 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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