帰宅途中で急いでいる人に、本を売る方法
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:古山有則(ライティングゼミ・10月コース)
「やばい……どうしたらいいんだ……」
駅に直結する場所で、ある商品をブース販売していました。僕はこの商品を1人でも多くの人に知ってもらい、購入してもらいたいのですが、誰も立ち止まってくれません。
「もしかして、透明人間になっちゃった……?」
なんて冗談を考えられたのは少しだけで、それ以降は「このままだとまったく売れないぞ」と危機感で一杯になっていました。
僕は販売している商品は、何か……?
それは、僕が書いた3冊の本です。
今まで3冊の書籍を書いてきたのですが、このように直接ブースに立って書籍を販売する機会ははじめてです。
「どんな感じになるのかな?」
ブース販売がスタートすると、面白いことに、誰1人として、立ち止まってくれないのです。
明らかに、見て見ぬを振りをしているのが伝わってきました。
「このままでは、まずいぞ……」
1月の冷たい風が体に当たるのに、冷や汗が出てきました。
声をかけながら頭をフル回転させて考えたのは、自分視点ではなく、相手視点で声をかけようということでした。
開始30分の僕は、
「こんばんは、よかったら、宜しくお願いします!」
「こんばんは、メンタルに関する本を書きました、手に取ってみてください」
と自分視点で、恥ずかしがりながら、小さな声を出していました。
この声がけでは、悲しいことに誰も立ち止まってくれませんでした。でも、冷静に考えてみれば、当然です。
なぜなら、僕の前を通っている人は、僕の本に興味がある人の集まりではなく、仕事や学校の帰り道で、電車を乗るために、駅を利用しているわけですから。
いきなり本を購入してもらうことは、自分目線すぎます。相手目線に立ち、まずはチラッとコチラを見てもらうことを目標にしました。
そこで浮かんだのは、こんな質問です。
「帰り道を急いでいる人が、一瞬でもコチラをチラッと見てくれるには……?」
僕であれば、「本を書いた著者ということがわかる」や「自分と関係がある」場合は、チラッと見ようと思います。
声がけを、以下に改善しました。
「こんばんは、僕が本を書きました! 土浦在住です。宜しくお願いします!」
(ブース販売は、土浦駅で行っています)
このように大きな声で伝えたところ、「僕が本を書きました」という部分で、「どんな人が本を書いたの?」と顔をコチラに向けてもらうことに成功しました。
正直なところ、今まで「僕が本を書きました」と言ったことはありませんでした。
恥ずかしさがあったのですが、僕が本を書いているのは「伝えたいことがある」からです。本を出したことで偉くなりたい、すごいと言われたいというのではなく、自己肯定感が低くて悩んでいる人に「あなたには価値があるんだよ」と伝えたいのです。勇気を振り絞りました。
また「土浦在住です」と伝えることで、通っている人たちが「地元が同じだ」と共通点を見つけて親近感をもってもらえると考えたのです。
すると、有難いことに、コチラを見るだけだけではなく、立ち止まってくれる人が増えてきました。
立ち止まっていただけるだけで嬉しいですが、書籍の購入には至りませんでした。
そこで次は、「どうしたら、購入していただけるのか?」を考えました。
直感で考えたのは、スーパーでよく見かける試食販売です。
味を知ってもらい、商品を購入することを後押しします。
試食販売を参考にしながら、立ち止まってくれた人に、
「ものすごく読みやすいので、1ページだけ読んでいただけませんか?」と伝え、本を手に取っていただき、内容を読んでもらいました。
すると、「読みやすいですよね!」や「今時代だからこそ、メンタルって大切ですよね」と反応が返ってきます。
「よし、うまくいったぞ!」
と喜んでいたら、「考えてみますね!」と言われてしまいました。
内容の良さは伝わったのに、購入をしていただけるにはどうしたらいいだろう。
大きな声を出しながら、脳みそフル回転で考えます。
「どうやったら今日、購入していただけるかな?」
もしも僕だったら、サインを書いてくれるなら、今日購入してもいいかなと思いました。
本を購入してくれる人には必ずサインを書いています。
しかし、それは本を購入した後に伝えていることで、本を購入する前には伝えていませんでした。
そういえば、数年前に本屋で著者イベントが開催されていて、その作家さんのことは知らなくても、こんな貴重な機会は他にはないから、本を購入したことがありました。
今日購入することに、限定さを加え、声がけを変えてみました。
「こんばんは、僕が本を書きました! 土浦在住です。サイン書きます!」
すると、少しずつ立ち止まってくれる人が増え、本を購入していただける人も増えました。
トータルでいうと、2時間で11冊の書籍を購入していただけました。
何もアイデアを出さず、小さな声で挨拶するだけでは、立ち止まってもらうことすらできなかったと思います。
立ち止まってもらい、さらに購入していただけるには、工夫が必要なのです。
この工夫はまだまだ改善が必要ですが、何かを知ってもらうためには、もっと相手目線で考えることを学びました。
***
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