猫背を直すと世界が変わる。
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか？賞を取れるのか？プロも通うのか？〜
記事：佐藤 透（ライティング・ライブ東京会場）
我が家には2人の幼稚園児がいる。年長組と年少組のともに女児である。立ち姿勢がスッとしていてときどき大人っぽく見えるときがある。とても姿勢がいいのだ！ これは他人にはどうでもいい家族の自慢だが、実は、我が家の子供たちがすごいのではなく、幼児に猫背はいないのではないかとも思う。子供は3頭身？ いや4頭身？ どれくらいかわからないが猫背であれば、身体に比して大きな頭が前にあって、きっと転んでしまうだろう。
何故、そんなことが気になるかというと、猫背は親からの遺伝であり、直すことはできないと思っていたからだ。だから、子供のときは違ってたじゃないか、と思うのかもしれない。
私の父が猫背だった。猫背の程度を示すよい物差しがあればいいのだが、そんなものないので、普通な猫背とでもいうのだろうか。病的に頭が前に下がっているわけではないが、胸を張っても背中が丸い感じの人だった。子供の頃から、後ろから見た私は父に似ているとよく言われた。背中が丸いところがそっくりだったらしい。自然と猫背は遺伝だと思い込んでいたと思う。
猫背で困ることはないと思っていた。スポーツはむしろ得意だと思っていた。足はクラスでも早い方で、運動会ではリレーの選手に選ばれたし、中学から部活でサッカーを始めたが、そこそこできていた。高校では、球技大会のバレーボールでバレー部員がいないクラスの中心選手としてバレー部員がいるクラスに勝ったり、体育の授業では、走り高跳びで背面跳びを普通にしていたのだ。
転機は、ずっと後の30歳を過ぎた頃にゴルフを始めたことだった。打ちっぱなしに毎週通って練習したが、どうしようもなかったのが飛距離が短かったことである。身長約175cmの私が同じ長さのクラブを使ったときの飛距離で他の人より短いことは、つまり、下手なことの証左以外の何ものでもないということなのだ。もちろん筋力のパワーのあるなしは関係するが、ゴルフの仕組みは、基本的には如何にして遠心力で飛ばすかというだ。身長や腕の長さは有利に働くのである。そこそこ運動系でできていたと思っていた私にとって、このことは到底受け入れられるものではなかった。
猫背をどのように直すのか、そもそも猫背って直せるのかという自分自身との格闘が始まった。まずは、背筋力をつけて背すじを伸ばし続けることをしてみたが、それでは背中の丸さが取りきれないし、そんなことを1日中続けることはできない。時間はかかったが、私の場合、猫背の原因は背中側にあるのではなく、肩の前から胸、腹筋へとつながる筋や筋肉、つまり、後ろではなく、前の方の硬直を解き、伸ばすことが鍵であることがわかった。前側が硬直して短くなっていたのだ。読者に姿勢矯正バンドなど猫背を直そうと持っている方いれば、鎖骨の上下（特に上側）を伸ばすようにしてみることをお勧めする。私の場合は、ここに気づくことで大きく前に進んだという記憶がある。さらに時間を要したが、新しい姿勢を習慣にすることができた。他人がどう見ているかわからないが、家族からは以前の猫背には見えないと言ってもらえている。猫背は直せるのだ。
猫背の丸い背中が元凶だと気付いたのは自分自身のゴルフスイングを様々研究した結果である。頭の位置や回転の中心の位置、肩、腕からゴルフクラブまでの理想的な形を考え、頭の位置を背中側に下げて、腕を無理なく振り下ろすためには丸い背中を直さないとダメだったのだ。その後、きれいなスイングができるようになり、飛距離は伸びた。長くて難しいと言われる3番アイアン、4番アイアンも使いこなしている。
だが、それだけではない。こうして手に入れた姿勢の良さには、あらゆるところに効果があった。
スッとした立ち姿勢になったことで、まずは、中学から今でもやっているサッカーで自分はもっと上手になれると思ったのである。新しい姿勢を得たのが40歳を過ぎてからのことだったにもかかわらずだ。ゴールキックの飛距離が伸び、遠目からの鋭いシュートを打つことができるようになり、フェイントで相手をかわすためのステップが軽くなったのである。その他でも、野球やソフトボールで外野に飛ばすことが子供の頃から苦手だったが、軽々と外野手を超えていく当たりも打てるようになった。
姿勢を良くすることで、文字を書くのもキーボードを打つのも疲れにくい。靴の片減りが無くなったのは、足の接地が良くなったからだろう。身体を使うあらゆることが良くなっている。ひょっとすると健康そのものにも良いのかもしれない。姿勢を馬鹿にしてはいけないのだ。
だが、猫背を直したことで、私が得た最も価値あるものは、努力すれば変えられないものはないという意識だと思う。遺伝であって直らないと思っていたものを直せたというこの経験は、そんな自信と革新的な意識を私にもたらしたのである。
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