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メディアグランプリ

オトコマエ兄貴がくれた人生最高の誕生日プレゼント


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記事:廣岡 麻紀子(ライティング・ライブ東京会場)
 
 
誕生日も五十ン回となりますと、もうめでたいということなどないわ、とそっぽを向きたくもなりますが、ことプレゼントとなると、いくつになっても、何であっても、心躍るものです。
心に残るお誕生日プレゼントは数あれど、一等忘れられないプレゼントと言えば、四十年以上も前に次兄からもらった『リカちゃんのスーパーマーケット』。 コレに尽きます。
当時は女の子の遊びと言えばゴム飛びかリカちゃんごっこ。 近所の友達と電信柱にゴムをくくりつけて日が暮れるまでぴょんぴょんと飛びはね、飽きてはリカチャンとワタルくん人形で着せ替えをしてみたり。 ああなつかしい。 半世紀以上も女子のこころをくすぐり続けるリカちゃん。 今ほど目まぐるしくはないにせよ、当時でも次々と出るコレクションに物欲を刺激されまくった少女時代。 お友達が持っているハウスがうらやましくて、あぁ・・スーパーマーケットがあれば! あれさえあれば! と日夜身もだえておりましたので、それがお誕生日の朝、目の前に現れたときにはうれしさのあまり気絶しそうだったことを覚えています。 当時大阪で子供たちに人気の店といえばKIDDY LAND。 そのKIDDY LANDの包みを見た時の興奮たるや。 今でもKIDDY LANDを見るとあの時の興奮っぷりを思い出し、体温が0.5度あがる感じがします。
 
しかし、八つ上といえど兄は当時中学生か高校生だったはず。それは当時のお金でどれくらいのしろものだったのか、相当におこづかいを貯めたに違いありません。 そんな裏事情までは知る由もなく、無邪気にうれしくてお友達の羨望のまなざしを浴びつつ夢中で遊んだものでした。
 
次兄は、朗らかでいつも友人の中心にいた長兄と違い、どちらかと言えば無口で今でも会っても「おぅ」と一言交わすだけなのですが本当に心根の優しい人。 彼が高校生の時、余裕がなくて自分のことはすべて後回しにして着たきり雀だった母に「お母ちゃん、服、それしかないんか?」と聞いてきたそうです。 兄はよほど不憫と思ったのか、まあ今から思えば彼は近隣ではボンボン学校と言われる私立学校に通って家計を圧迫していたので単に罪悪感があったのかもしれませんが。 それでも母がずっと同じ洋服を着ていたことには気づいてさえもいなかった私よりはよほど立派。 その後冬休みにアルバイトをし終わると、母に、「これで洋服買うたらええわ」と、アルバイトでもらったお金を袋ごと渡したそうです。 オットコマエ。 母は驚いて「ええねん、お母ちゃんな、これ気に入って着てるねん。」と涙をこらえて押し返したそうですが、以来、これではアカン、と、子供たちに気を遣わせる格好をしないように気を付けてきたとのこと。 これはもうずっとずっと後になって母から何かの折に聞いたことでした。 その時にもやはりリカちゃんスーパーマーケットのことが頭に浮かんだのは言うまでもありません。
しかしそのあとの母の言葉に私の「オトコマエ兄貴説」がガラガラと音を立てて崩れることに。
「一杯のかけそば」に負けず劣らず美しい家族愛のエピソードを披露された流れで、私が、「せやねん、お兄ちゃんのあのプレゼントだけは忘れられへんわ」 と母にしみじみと感慨深げに話しますと、「ああ、あれな、えらい高かったわ」 ん? え? 兄のコツコツ貯めたおこづかいで買ったのでは? 「ふふん」と何やら裏事情を知ったものだけが醸し出す雰囲気で不敵にほくそ笑む母。 ……すべてを悟りました。 兄は母から「妹思いの優しい兄」を演じさせられたのです。 そういえば、あまりにもリカちゃんに目がくらんで忘れていましたが、心優しい兄は往々にして妹をいじめては父母にゲンコツをくらういやなやつでもあったということを。 母としてはなんとか二人を仲良くさせようと苦慮した末の作戦だったのでしょう。 お金を渡して兄にKIDDY LANDへ走らせたのか……。 まんまと何十年も騙され続けた素直で無邪気な妹。 しかも母の目論見どおりにその後しばらくは私はイケメン長兄ではなくオトコマエ次兄になついていたのですから、母が偉大なのか兄の演技が上等すぎたのか。 ただそれもリカちゃんブームが去ると同時にあっけなく崩壊しましたが。
 
まあどこの家族にもありそうな他愛ないエピソードでございました。 ともあれうわさの兄もそろそろ還暦を迎える年、ふたりの孫に囲まれすっかりまあるくなりました。 先日久方ぶりに兄の家を訪ねたところ、その孫におみやげだと何やら包みを持ち帰っており、何気に見たところ、なんとそれはなつかしい『リカちゃんハウス』でした。 ウソでしょ。 よもや半世紀近く昔の、妹へのプレゼント(偽)を覚えていたとは考えにくいのですが、いや、ひょっとするとひょっとする。 プレゼントというのはあげたほうも意外と覚えているものだったりするし。 彼の頭の中では、今でも女の子が喜ぶものイコール、リカちゃん、なのでしょうか。 女ゴコロがわかっているのか分かっていないのか、よくわかりません。 母によって暴露された猿芝居の真偽のほどをそのうちに確かめてみようかとも思ったりしますが、兄妹とはそんなものかもしれず、一杯食わされたまま、私のナンバーワンプレゼントという思いで完結するのがよさそうです。
 
 
 
 
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2022-04-27 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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