メディアグランプリ

プリン、愛すべきすっぴんの姫君


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:HOKU(ライティング・ゼミ4月コース)
 
 
愛しはじめて4年。マップには、首都圏を中心に今では100個以上のピンが立っている。
 
何の話か?これは、プリンの話だ。
プリンを好きだと初めて気がついてから4年の月日が経った。Google Mapは「プリン」を指すピンで埋め尽くされている。
私とプリンの出会い、そしてめくるめくふたりの愛の物語に、今から少しだけお付き合いいただけないだろうか。
 
大学2年のある朝、母に言われた一言が私たちの愛の第一歩だった。
「あんた、いい加減ダイエットしたら?」
 
私は当時成人式の前撮りを控えていたのだが、そんなことは関係ないとラーメン、ハンバーガー、トンカツ、焼肉と、暴虐の限りを尽くしいろいろなものを食べ歩いていた。甘いものも好きで、友人たちとパンケーキ、かき氷、パフェ、果てはケーキの食べ放題、映えるものから映えないものまでなんでも食べるスイーツ怪人としてクラスに君臨していた。
 
まぁでも、確かに満足するまで食べたな。私はそう思った。こんだけ食べたら、しばらくダイエットしても全然おつりが来るかもしれない。
 
甘いものを我慢するよりは、唐揚げを我慢する方が辛い、と短絡的に考え、前撮りまでの1ヶ月間「スイーツ断ちダイエット」をすることにした。この時の私は、まだ「1ヶ月なんて余裕でしょ」とたかを括っていた。
 
余裕、などではなかった。人生初のダイエット。毎日毎日、コンビニと学食と購買で「甘いもの」の嵐に襲われた。1週間で音をあげた。私は甘いものをしょっぱいものと同じくらい愛していた。
 
ダイエットは続けたい。でも、甘いものは食べたい。
 
私が至った結論は「1週間に一個だけ、甘いものを食べていい」というルールを作ることだった。そう、スイーツよりも甘ったれだとダイエット評論家の人には言われるだろう。私の意志はババロアよりも柔らかかった。
 
次に食べるスイーツを何にしよう。今度はこの問題が私の頭の9割を常に占めるようになった。なるべく甘く、なるべくお腹にたまり、なるべく安いおやつがいい。まんじゅうかようかんが良いのではないか、という結論に至る。
 
「まんじゅうを買うぞ」と飢えたハイエナのような気持ちで向かった先の購買で、燦然と輝いていたのはまんじゅうでもようかんでもどら焼きでもなかった。つるつるとしたなめらかな肌、たまごをたっぷりとふくんだ柔らかい黄色、底に敷き詰められた茶色のカラメル。全てが、思わずひれ伏してしまいそうな輝きを放っていた。まんじゅうなんて目じゃなかった。私はプリンを買った。
 
プリンは、おなかにもたまらないし、そのくせ栄養価もカロリーも高いし、和菓子ほど安くもない。コスパなんてかけらもよくない。なのに。それなのに。悔しいかな、購買に行って甘いものを買う、週に1回のこの娯楽で、私はプリンを買ってしまうのだった。じきにいやでも気付かされた。私は、プリンが、大好きなのだと。
 
それから、プリンの沼に落ちるのは一瞬だった。突き詰めることに腐心した。毎週、必ずいろいろなプリンを調べては食べに行った。「プリン」で検索をかけてまとめられた記事から食べに行くこともあれば、その場でプリンを見つけて頼むこともあった。会うたびに姿を変え、プリンは私を惑わした。時には生クリームやアイスでシンプルに着飾り、プリンアラモードとしてドレスを身に纏うこともあった。そのどれもが、うらやましいほどによく似合っていた。悔しい。
 
いろいろなプリンを食べ歩く中で、プリンにはいくつかの種類があることを発見した。ここまで来たら、プリンヲタクのプリン講座に付き合ってもらおう。
 
一つは「とろなまプリン」。ほとんど液体のような、容器がないと自立もできない、不安定なプリン。焼肉の後に出会うと嬉しい。
もう一つは、「かためレトロプリン」。最近流行りに乗っていたプリンだ。純喫茶でよく出会う、歯切れの良い、ほとんどケーキのような重量級プリン。そのままでも、飾り付けても存在感を放つ。
そして「とろけるプリン」。彼らは自立しているものの、揺らすとふるふると揺れる。口に入れるととろける。これはこれで人気の根強いプリンだ。
最後の一つは「ねっとりプリン」。数は少ないが、こだわりの店主が作っていることの多いプリンだ。彼らはしっかりと自立している。しかしスプーンを通せばやわらかく、口に入れればねっとりと まとわりつく。
 
どんなプリンにも、このように個性的なキャラクターがある。でも、やっぱり私は購買で買ったあのプリンが忘れられない。今食べているプリンも結局は思い出の追体験に過ぎないのかもしれない。
 
それでも、苦しい時、私が手を伸ばしたのはプリンだった。一番光り輝いていた、あれはどんな飾り付けもされていない「すっぴんの」プリンだった。かわいらしく、美しく、コスパが悪いのに心惹かれてしまう、プリンは私の姫君だ。でも、ドレスなんか着ないで、すっぴんで私の隣にいてほしい。ありのままのプリンを、これからも愛して生きていくのだ。
 
ダイエットの結果については聞かない約束だ。
 
 
 
 
***
 
この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

お問い合わせ


■メールでのお問い合わせ:お問い合せフォーム

■各店舗へのお問い合わせ
*天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。


■天狼院書店「東京天狼院」

〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F
TEL:03-6914-3618/FAX:03-6914-0168
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00
*定休日:木曜日(イベント時臨時営業)


■天狼院書店「福岡天狼院」

〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階
TEL:092-518-7435/FAX:092-518-4149
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00


■天狼院書店「京都天狼院」

〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5
TEL:075-708-3930/FAX:075-708-3931
営業時間:10:00〜22:00


■天狼院書店「Esola池袋店 STYLE for Biz」

〒171-0021 東京都豊島区西池袋1-12-1 Esola池袋2F
営業時間:10:30〜21:30
TEL:03-6914-0167/FAX:03-6914-0168


■天狼院書店「プレイアトレ土浦店」

〒300-0035 茨城県土浦市有明町1-30 プレイアトレ土浦2F
営業時間:9:00~22:00
TEL:029-897-3325



関連記事