メディアグランプリ

僕が魅了された素敵なBARを、今度は自分の手で作りたい


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:那須信寛(ライティング・ゼミNEO)
 
 
目を開けると、きれいな星空が広がっていた。少し遠くから虫の鳴き声が聞こえてくる。鈴虫だろうか、綺麗な音色に癒される。心地よい風が頬をなでる。爽やかな秋の風だ。もうすっかり夏の気配は落ち着き、季節が秋から冬に移り変わろうとしているのを感じる。僕はそのとき、公園で、一人夜空を見上げながら思った。
 
「ここはどこだろう? そして、僕の服はどこにいったのだろう?」
 
僕は上半身裸で、公園の滑り台の下の方にハマるように寝ていたのだ。時間を見ようと、腕時計を覗くと、その腕時計はぶっ壊れていた。弟から借りた物なのに。たしか「めっちゃ高いから、失くすなよ!」って言われていた気がする。どうしよう。そして、頭が痛い。あとなんか、腕を動すと肩も痛い。一体僕の身に何が起こったのだろう?
 
 
僕は、堂々と言うのが少し恥ずかしいが、めっちゃ寂しがり屋だ。常に誰かと一緒にいたい。でも、そんな僕が、誰とも会いたくないと思っていた時期がある。それが、教員採用試験の浪人をしていたときだ。僕は2年連続で試験に落ちて、少し自暴自棄になっていた。周りの友達がみんな就職していて、一緒に飲んでいても仕事の愚痴になったりするとその愚痴が心底羨ましくて、愚痴を言えない自分が情けなくて、次第に友人と距離を置くようになった。そして、家に引きこもった。
 
9月の中旬、3回目の合格発表があった。そこでなんとか合格を果たし、次の4月から、正規教師として働けることになった。一週間くらいはその喜びの余韻にひたっていたが、だんだんと誰かと遊びたくなってきた。しかし、ほとんどの友達とは僕から一方的に一年くらい連絡を絶っていたので、なんとなく声がかけづらかった。そんなとき、僕が住んでいた家の近くで偶然、小学校のときの友達と会った。話の流れで、ようやく教員採用試験に合格した話をすると、お祝いに飲みに行こうという話になった。駅前の居酒屋で、飲みながら昔話や最近の話をした。久々に友達と話しながら飲む酒は最高だった。そろそろ帰ろうという流れになったときに、友人が
「もう一軒いかない?」と誘ってきた。
僕はあまり、お酒に強くはないが、酔うとテンションが上がって何でもOKしてしまうところがある。
「よっしゃー 行こう!」
そして、友人が連れて行ってくれた場所が、ボロい建物の驚くほど狭いお店だった。カウンター6席ほどしかない、トイレに行くために後ろを通るときも、椅子をずらしてもらわないと通れない。そんなBARだった。爽やかな感じの良いお兄さんが店長で、ゆったりくつろいで、話をした。最初は僕と友人の2人しかいなかったが、新しいお客さんが入ってくると、店長が紹介してくれてすぐに仲良くなれた。居心地が良すぎて、長居をしてしまったが、ここは地元である。終電を気にしなくていい。正確には覚えていないが、夜中の3時ころまで飲んで、家に帰った。
 
それ以来、そのBARにちょくちょく通うようになった。最初は、店長と話すのが楽しくて通っていたが、だんだんと常連さんと仲良くなり、友達が増えていった。夜中まで飲んでいると、近くでBARをやっている人と知り合うようになった。
「今度、うちの店も来てよ!」
「絶対行きます、いやむしろ明日行きます!」
そうやって行く店が増えていった。いろんな人と仲良くなった。
「俺、先生ってやつ嫌いなんだよ」という人とも朝方まで激論を交わしたら、逆に仲良くなって、そのまま綺麗なお姉さんがいる店に連れて行ってくれたりした。ただ、僕はそこでのお姉さんの営業トークよりも、BARで触れ合う人たちとのコミュニケーションの方が好きだった。
 
 
いや、ちょっとカッコつけ過ぎたかもしれない。綺麗なお姉さんも好きです。ごめんなさい。
 
 
そうやって、楽しいBAR通いをしているときに、ふと一番最初に行くようになったBARの店長に誕生日を聞かれた。
「10月19日です」
「もうすぐじゃん! 誕生会やろう!」
「まじっすか! ありがとうございます!」
 
誕生日は平日だったので数日後の土曜日に僕の誕生日会をやってもらった。
 
その日はオープンの夜8時からずっとその店にいた。最初は僕と店長の2人しかいなかったが、徐々にこれまでBARで出会った人たちがお祝いをしに来てくれた。お祝いの言葉と共にプレゼントもくれた。そして、なぜかテキーラもおごってくれた。そのBARは謎のルールでお通しを、ナッツかテキーラかで選べるのだ。何その二択?
そして、お祝いに来てくれた人たちが、みんなお通しのテキーラを僕にプレゼントしてくれたのだ。お通しなので、ショットグラスにちょこっと入っているだけだが、アルコール度数50%のお酒を何杯も飲んでしまった。中には初対面なのに、「初めまして、おめでとうございます、那須君にテキーラを」という意味不明なことを口走る人も現れた。時刻は深夜2時を回っていた。僕が飲んだテキーラの数は15杯を越えていた。
そして僕は、「ちょっと夜風に当たってきます」
そう言って店を出て行った。そして、戻ってこなかった。
 
ここからは、後日聞いた話だ。なぜなら、僕は気付いたときには上半身裸で、公園の滑り台にハマって寝ていたのだ。
 
 
店を出た僕は、フラフラと千鳥足で、歩きながら、道の電信柱を見つけては抱きついていたらしい。僕に会いに来てくれた人が「那須君!」と呼びかけると、振り向いて、両手を広げて片足立ちをするという決めポーズ? をしてから、後ろ向きで手を振って去っていったらしい。帰ったのだと思ったら、店の中にカバンがまだある。店長もそのときBARにいた人たちも心配して探してくれていた。
 
僕は起き上がって、自分の服を探していた。すると近くの鉄棒にシャツとTシャツがきれいにかかっていた。ハンガーだと思ったのかな?
 
服を着ていると遠くから声が聞こえた。
「那須?」
「ああ」
「おお! 那須がいたぞー!」
続々と探してくれた人たちが、集まってくれた。
「良かった~」
そうやって喜んでくれる仲間に巡りあえたことは心からありがたいと思った。でも、よく考えると、この人たちに飲まされたんだよね?
 
もう一度、お店に戻って、お水をもらった。
店長が「まだ、テキーラ17杯残ってるけど、つらそうだからまた今度来たときで良いよ」
なんて優しい人なんだろう。寿命がちょっとだけ延びた。
 
それから少しして、酔いも落ち着いてから家に帰った。これで、僕の人生で一番ハチャメチャな誕生日は終わりを迎えた。
 
そんなハチャメチャな誕生日だったが、その時の仲間たちとはその後2年くらい仲良くしていた。
 
職場が変わり引っ越しをしてからあまり通わなくなったが、たまに行くと温かく迎えてくれる、今でも僕の大切な場所だ。もう、あんな無茶な飲み方はしないけど。
 
 
あれから10年、僕は、一生続ける予定だった正規教師を退職することになった。退職を決めたとき、自分が一番やりたいと真っ先に思い浮かんだのがBARだった。今度は自分があんな空間を作ってみたいと思った。そんな僕の願いを聞き届けてくれる人が二人も現れ、僕は来月から2つのBARで働くことになった。僕が魅了されたBARという空間を、来てくれた人に堪能してもらいたいと思っている。
 
あ、そうそう、一つだけ残念なお知らせがあります。僕が働くことになる2つのBARにはテキーラのお取り扱いがございません。ご了承ください。
 
 
 
 
***
 
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2022-04-27 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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