学校を創ることは、埋もれた私を見つけることだった
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:秋篠奈菜絵(ライティング・ゼミ4月コース)
3年前の春、小学校の先生を辞めた。
この仕事が大好きだったし、やりがいもあった。でも私には「辞めること」しか選択肢がなかった。それは、「理想の学校をつくる」という夢ができたからだ。
きっかけは、5年半前にバセドウ病が判明し、生死を彷徨った夜だった。
「私の人生でやり残したことはないだろうか」
そう自問自答したとき、私の中に夢が生まれた。32歳だった。
それからの私は、自分でも驚くほどの行動力を発揮した。1歳足らずの息子を預け、半年間かけて全国各地の民間の学校を駆け回った。
「こんな教育方法があったのか」
「こんなに子どもたちが生き生きと学べるのか」
学習会を自ら開き、レポートで発表した。私の中で「学校をつくりたい」という気持ちがむくむくと膨れ上がっていった。しかし、同時に漠然とした不安もあった。
家を建てたばかりで子どもも小さいのに無職になっても大丈夫なのか?
「学校をつくる」なんて本当に私にできるのか?
できたとしてもそこに通う子どもたちの人生に責任を負えるのか?
こんなにやりがいのある教師の仕事を辞めて本当に後悔しないか?
挙げればキリのないほど不安はやってきた。
このひとつひとつの不安と向き合い、自問自答を繰り返し、決断するまでには丸2年かかった。
退職してからのことは完全にノープランだった。そもそも学校をどうやってつくるのかなんて全くわからない。だけど、なんだかわくわくすることが始まる予感だけは確かに感じていた。
その予感は、当たっていたのかもしれない。
退職して数日もしないうちに「学校をつくりたいと思って動き出そうとしてる若い夫婦」に出会った。20代の彼らは、とても爽やかでエネルギッシュだった。そして何より理想の学校像がお互いにぴったりと合ったのだ。
「子どもたちが自分の好きなことからわくわく学び続けられる環境をつくりたいね」
こうして私たちは3人になった。
出会って早々、夜中まで教育について語り合い、学校の名前が決まった。
「ここのね自由な学校」
「ここのね」には、「心の根っこ」「個々の音色」「今、ここ」の3つの意味を込めた。希望が胸いっぱいに広がっていた。
それから半年かけてあらゆる場所に交渉しに行き、「明治創業の元酒蔵」に出会った。ここを学校にしようと決め、まずは大掃除から始めた。私は子育てと家事の合間を縫って、彼らはアルバイトの合間を縫って毎日のようにその酒蔵に集まり、埃被った灰色の部屋の掃除をした。
壁を漆喰で塗り、廃材で床を作り、雨の中瓦礫を撤去し、水道を通し、電気を通し……気づけば半年間、私たちは無我夢中で場所作りをしていた。
ようやく整った空っぽの場所に、全国各地から寄付が届いた。たくさんの本、文房具、ボードゲーム、折り紙、印刷機……。たくさんのボランティアさんと共に場所を作り、全国からの支援で学校をつくる土台ができた。勇気を出して女性起業家のコンテストに出場し、プレゼンテーションで50万円の賞金を頂き、念願のトイレも作った。
退職してから2年が経とうとしていた。
2年間、私たちは無給で働いた。3年目は、有難いことに賃金をいただきながら働くことができている。それでも、「学校づくり」をするには、数字では測れないパワーが必要だ。勤務時間を超えて働くことはザラである。
「何でそんなに頑張れるの?」
これまで何度も誰かに聞かれたけれど、その答えがわからなかった。「楽しいからかなぁ」と曖昧に答え続けきた。
でも、最近になって思う。
その答えは、間違いじゃない。ただ、その「楽しい」には、色んな意味が含まれる。
仲間と共に居る時間は笑いも多くて本当に「楽しい」し、子どもたちと関わることも、日々の成長を間近で見れることも本当に「楽しい」。でも、私が一番「楽しい」と感じるのは、自分自身の変化に気づいたときなのかもしれない。
この3年間、学校を創りながら同時に自分自身ととことん向き合ってきた。3年前の自分を思い出すと、自分に自信がなかったことに今更ながら気づく。
自分が文章を書くことが好きなことも、当時は全く気づいていなかった。むしろ、自分の思いを書くのが恥ずかしかった。たまたま書いた文章を2人が「奈菜絵さんの文章めちゃくちゃ好きです」「もっと書いてほしい」と何度も伝え続けてくれたから、勇気を出して発信するようになった。そして、今もこうして文章を書いている。
「私なんて2人に比べて何もできない」と思っていた。人と比べては落ち込み、自分に足りないものを補うためにと頑張っていた。無意識に他者からの評価を求めていた。長年かけて培った自分を責めたり、卑下したりする癖もなかなか治らなかった。
だけど今は違う。
他の誰でも無い、「秋篠奈菜絵」という自分を大事に思えるようになった。
辛いとき、落ち込むこともたくさんあったけど、そのたびに「どんな時も私は私の一番の味方でいよう」と自分を大切にする練習をしてきた。すると不思議なことに、自然と自分を卑下することが減り、他者からの評価を求めなくなり、私が私でいることに心地よさを感じるようになってきた。
人の目を気にせず、人と比べず、自分も自分以外の人も大事に思える。
気づけば、そんな私になれていたのだった。
私が学校を創りたいと思った理由は
「一人でも多くの子どもたちが幸せに生きられるようになってほしい」と思ったからだ。
その思いでがむしゃらに走ってきた。
だけど、ふと後ろを振り返ってみると、そこには「幸せに生きられるようになった自分」がいた。
大好きな相田みつをさんの詩にこんなものがある。
「一番わかっているようで一番わからぬこの自分」
10年以上前に出会ったこの詩が、時を超えて今、私の心に響く。
仲間と対話し、自分と対話し、そしてまた新たな自分と出会えるこの日々は、とてつもなく楽しくて尊い日々だ。
これからも私が私でいられる幸せをめいっぱいに感じることで
一人でも多くの子どもたちが幸せに生きられるお手伝いをしていけたらと思う。
***
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