「大学お笑いのススメ」
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:三須あかり(ライティング・ゼミ6月コース)
もし急に明日の予定がキャンセルになり、空き時間ができたとしよう。あなたはどんなふうに時間を過ごすだろうか。
映画を見るのもいいだろう。スポーツをしてストレス発散したり、大人になって久しく訪れていないゲームセンターに行ってコインゲームに夢中になるのもいいだろう。もしくは、お気に入りの本を何冊か買って、部屋にこもって没頭するのもひとつかもしれない。そこで私は「大学生お笑い」の鑑賞を提案したい。
わたしは月に数回の頻度でお笑いライブを鑑賞しに行っている。プロアマ問わず、さまざまな会場の規模があり、特に東京大阪では日々お笑いライブが開催されている。その中でも、私は好んで大学生お笑いを見に行っている。各大学に創設されたお笑いサークルが主催するごく小規模なライブである。
大学お笑いにハマったきっかけはわたしの学生時代にさかのぼる。大学3年生の頃、学部の友人と文化祭を回っていた時のことだった。大学の規模も大きかったため、大学構内はコロナ禍の今では考えられないほどの人でごった返していた。屋台やイベントの案内よりも人の波に飲まれて疲弊していたわたしたちの目に入ったのが、少しメインストリートから外れた場所にある小劇場だった。とりあえずどこかに腰掛けて休憩したかったため、そんな催しかはほとんど気にかけず、入ってみることにした。その小劇場でやっていたのが、まさにお笑いサークルのライブだった。
わたしたちが入場したタイミングが最悪だったのを今でも覚えている。今となるとあれはネタだったのかと思えるが、扉を開けて見えたものは、1人の少年が小さな舞台上で暴れ回っており、それを数人の客が無言で見ている光景だった。
先ほどの文化祭の喧騒と相対して、静まり返っている劇場は異質なものであり、淡々とライブが進んでいく様子は、文化祭のそれよりもカオスだった。
しかしわたしは出演者たちの不動の精神に魅了され釘付けになってしまったのであった。
プロのお笑いライブではなく、大学お笑いを好む理由は未完成のお笑いから得られるものがあるからだ。
1つは、アウェイな空気感への対処法である。仮に大規模な会場のお笑いライブを訪れたとしよう。そこには、普段からテレビで目にすることのある、いわゆる「売れている」お笑い芸人が出演している。実際に世間での人気を博して、認められた上でテレビに出演しているのだから、そこには保証された面白さが存在する。
対して大学お笑いでは、初めてお客さんの前でネタを披露するメンバーも少なくない。人生で初めてステージに立ち、自分達に注目する客に対峙し、大抵の場合足の震えが止まらなくなる。ネタが途中で飛んでしまったとしても、相方にもそれをフォローするスキルはない。会場には地獄のような沈黙の空気が流れる。こんなことはしょっちゅうである。
そんなとき、私ならどうするかを考える。咄嗟に出た言葉で場を繋ぐか、ネタが飛んでしまったことをネタにするか、思い切って「先輩助けてー!」と助けを求めてみるか。自分ならどうするかを考えながら、彼らの対処を見るのが面白い。完全アウェイな空気をどう乗り切るか、対応力が試される。
2つ目は、日々成長を試みるチャレンジの姿勢だ。大規模なライブ会場では毎日決まったルーティーンでライブが開催されている。その内容は多くの場合パッケージ化されており、日々繰り返される公演の中で、出演者たちも自分達が何をすれば観客が喜ぶかを知っている。出演者たちの経験の中で編み出されたテクニックにより、観客も会場の空気に身を任せてリラックスして楽しむことができる。しかし、それは試行錯誤を重ねた結果完成されたものであり、発展途上ではない。つまりそこにチャレンジは存在しない。
大学お笑いでは、言わずもがな、毎回の舞台がチャレンジである。ネームバリューもない自分達のネタを見に来てくれた人をいかに笑わせるか考え抜き、観客の反応を見てネタの改良を重ねるはずだ。次の舞台では、今回よりもっと面白い。チャレンジを続け、回を重ねるごとに磨きがかかっていく様子が明らかである。
つまり、大学お笑いに求めるのは娯楽ではなく、彼らの姿勢から得られる気づきや学びなのである。わたしたちは社会の日々の繰り返しの中で「うまくやる」コツ掴み、無難に生きていくことができる。器用ならなおさらである。マンネリした日々に少し物足りないなと思った時には、非日常という空間で若いチャレンジャーたちに刺激を受けるのはどうだろうか。
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