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初めてのタクシー相乗りで100キロ以上移動して30000円使った話


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:小畑 泉彦(ライティング・ゼミ6月コース)

「北海道は災害が少ないですからね。住むなら北海道が一番ですよ」
2018年9月5日。新千歳空港から私と妻を乗せたタクシーの運転手は笑いながらそう語った。夏休みを取って久しぶりの帰省だ。

運転手の言うとおり北海道は災害が比較的少ない地域だ。立地条件を活かしてデータセンターを設置する企業もある。もちろん災害はゼロではなく(この年は台風被害もあった)、寒さ厳しい冬を毎年乗り越える必要はあるが、雄大な自然に魅せられて移り住む人は多い。

交通機関を乗り継ぎ旭川の実家に帰った私たちは久しぶりに親との食事を楽しみ、旅の疲れもあり早々に床に就いた。やはり地元は落ち着くなあ……。

日付が変わり、眠りが深まる午前3時7分。それは起こった。

就寝中だった私は全身に大きな揺れを感じた。地震だ。結構でかいな。旭川でこれだけ揺れるのは珍しい。熟睡していた妻もこの事態で目を覚ましていた。

後に「平成30年北海道胆振東部地震」と命名されるこの地震、東京で地震をよく経験している私も、北海道でこの規模のものが発生するとは思わなかった。災害が少ないと言っていたタクシー運転手の言葉がまるで伏線だったかのようだ。マンガなどで「俺、この戦いが終わったら結婚するんだ……」と言ったキャラにはフラグが立つものなのだ。

地震の影響で北海道の多くの地域が停電し、鉄道やバスは運休となった。突然のことに不安もあったが、それ以上に「どうやって東京に帰ろう」という思いが私の頭の中を占めていた。2日後に新千歳空港から羽田行きの飛行機を予約しており、東京で外せない大事な用事もあった。交通機関は明後日までに復旧するのだろうか。なんとしても帰りたい私は「絶対東京に帰るマン」になっていた。

ネットで調べたところ、新千歳空港からの便を変更して旭川空港から帰る人や、小樽から船で新潟を経由して帰ろうとしている猛者も見かけた。私以外にも絶対帰るマンが多数いるようだ。私も旭川空港から帰ろうかと思ったが全便キャンセル待ちになっており、乗れる保証はない。翌日には新千歳空港の運航も復旧するらしいとの情報もあったので、やはり当初予約していた便で帰ろうと決意を固めた。私はこの北海道脱出計画を「北の国から 2018脱出」と名付けた。倉本聰氏の許可は得ていないので心の中でそう呼ぶだけに留めたが。

とはいえ鉄道やバスが動いていないのにどうやって約150キロの距離を移動すればいいのだろうか。私は考えられる選択肢を思い浮かべた。レンタカー? いや私は筋金入りのペーパードライバーだ。この状況での運転は怖すぎる。ヒッチハイク? いや停電で信号が消えている危険な道路で拾ってくれるドライバーは少ないだろう。私なら乗せたくない。

それならタクシーはどうか。もちろん料金は高額になるが、相乗りを募るアプリがあった気がする。複数人でワリカンなら負担も抑えられる。さっそくそのアプリをダウンロードして会員登録をした。あとは旭川から札幌方面に行く相手を見つけるだけ。便利な世の中になったものだ。同乗者募集の検索画面で実家のエリア情報を入力した次の瞬間、信じられないメッセージが眼前に飛び込んできた。

「この地域には対応していません」

私は悶絶しそうになった。今ではこの手のアプリは珍しくないが、当時はリリースされたばかりで一部の地域でしか使えなかったのだ。しかし落ち込んではいられない。私は絶対東京に帰るマンだ。思い切ってTwitterで相乗りを募ってみることにした。怪しいヤツと思われないよう言葉を選びながら「旭川から札幌方面へ相乗りしませんか。料金は応相談。DMください」といった内容の投稿をした。検索されやすいようにハッシュタグも盛りまくった。イチかバチか。志を同じくする者の目に留まってくれるといいが……

「はじめまして。僕も旭川から札幌へ行きたいです」

来た!! 札幌に行きたいという若者Y君から連絡を受けた私はダイレクトメッセージでやりとりをし、相乗りの約束を取り付けた。さらに幸運なことに、手配したタクシーの運転手は元長距離トラックのドライバーで150キロ程度の道のりは楽勝だという。道が開けてきた。

相乗りを決意してから数時間後、私と妻そしてY君の3人を乗せたタクシーは札幌圏内に到達していた。市内は信号が消えているのにかなりの交通量だ。やはりプロの運転に任せてよかった。Y君とは事前交渉していた10000円を受け取って札幌で別れた。彼がいなければこの計画は実行できなかっただろう。最終的に千歳市内までの料金は遠距離割引が適用されて29930円だった(遠距離割引制度は地域によって異なるらしい)。

その後、新千歳空港から飛行機に搭乗した私たちは、東京で予定どおり用事を済ませることができた。これにて絶対東京に帰るマンの任務完了、我ながらすごい執念だったと思う。

トラブルに直面したときは選択肢を十分に洗い出してみること、そして思い切って発信してみることが大切であると今回学んだ。意外と助けになるのは身近な人ではなく、アカの他人だったりするものだ。もしあなたが何か困ったときは勇気を出して発信してみてほしい。その時あなたに声をかけるのは、もしかしたら私かもしれない(相乗りの場合は金額応相談)。

***

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