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男のロマンと女のロマンと……


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:ロビンソン安代(ライティング・ゼミ6月コース)

男のロマン。ポピュラーな表現だ。では女のロマンって……?

「男にはさー、ロマンが必要なんだよ」

私は大学時代、競技ダンス部に所属していた。
男女ペアになってフロアでダンスを踊り、審査員が良いと思うペアにポイントを付与。
その数によって勝ち進んでいくというダンスの部活だ。強豪校だった。
この発言は、2つ年上で、主将でもある男性の先輩が、試合後の打ち上げの
席で発した言葉だった。

周りにいた男子部員たちは皆、大きくうなずいていた。「わかります!」 と言わんばかりに。

でも私は女子校育ちだったからか、先輩がちょっと何を言っているか、わからなかった。
〇なぜ、「男には」 ロマンが必要なの?
〇「女には」 ロマンは必要ないの?
〇女には必要がないのなら、その理由は何なの?

けれど、体育会系の部活では先輩は絶対だ。さらに、今から20年以上も前の事だ。
年下の女性が年上の男性の発言に食いつくみたいな態度は、何となくしない方が無難な
雰囲気の、時代であり、部活であり、私たちの関係性だった。

だから、
本当はその場で先輩に質問をしようかと迷ったけれど、
みんな酔っていて、多少の無礼講は大丈夫そうな感じもあったけれど、
なるほど~! みたいにうなずくだけにしておいた。
「男のロマン」 に対して、突っ込んだ質問をするのは、野暮な気もした。

男にはロマンが必要……
その後私は後悔することになる。時間が絶てば絶つほど、あの質問はしにくくなり、
私は気になって気になって仕方がなかったからだ。
でもやっぱり優勝経験もある「偉大な」 主将に対し、あれらの質問をすることはできず、
自分の中で悶々と考えをめぐらせる日々が続いた。

結局、
男女ペアで踊る競技ダンスの特性上、普段から

「リーダー(男性ダンサーをこう呼ぶ)はこうあるべし」
「パートナー(女性ダンサーをこう呼ぶ)はこうあるべし」

という発言が毎日飛び交う部活だったので、先輩もついそんな風な表現を使ったのだろう、
ということにし、私の中では一旦解決済みにした。

ただ、その後の年月で、「男のロマン」 は一般名詞として使用されているようだと
感じることがちょくちょくあった。
車は男のロマン。バイクは男のロマン……。女のロマンという言葉を耳にすることはなく、
「ロマンがある」 という表現をするのは決まって男性だった気がする。

そもそも「ロマン」 とは、理想や夢に代表されるような熱くロマンチックな、壮大な
スケールの情動をもたらす何かなはず、少なくとも私の理解では。
それなら私だって持っていた。私はあらゆるダンスにロマンを感じていたし、
読書にもロマンを感じていた。若いころは自分の人生にだってロマンを感じていたものだ。

世間でいう「男性のロマン」 はそれとは違うの?

時々疼くものの、いつの間にか、記憶の奥に葬り去られたかすかな疑問。
先日それが久しぶりに、急に、私の記憶から引きずり出された。
そのきっかけは「お化粧」 だった。

私の顔や肌は、昨年あたりから急激に変化し、化粧がうまくいかない日が増えた。
悩んだ私は、最近youtubeでメイクアップ動画をよく見る。
メイクをする前とした後では、全く別人のようになるユーチューバーさん達がいて、
びっくりするやら感心するやら。時間があるときに、お勧めされていた物や方法を
自分の顔で実践してみたりもする。
ある日の事、化粧をしていて、はっと思ったのだ。

「これは女のロマンでは?!」

なぜって?

まず、ぞくぞくわくわくを抱かせる点。
自分の顔の気になるところ、例えばシミ・しわ、血色の悪さ……を補正するだけで
不思議なほど高揚感と幸福感を得る。例えて言うなら、恋する乙女のような感じか。
目が驚きと喜びで輝く。20代の化粧時には感じえなかった喜びだ。

次に、理想に向けたトライ&エラーの面白さ。
顔の色味、眉の形、目や顔全体の大きさ。これらはほんの1ミリの線の違い、
ほんのかすかな色味の違いで、印象ががらりと変わったりして奥が深い。
またそれを可能にする製品が、日本のみならず色んな国から無数に出されていて、
探求心がかき立てられる。

さらに、製品には良い香りが付いているものもあって、派生的に複雑な嗜好の世界も広がる。
深いだけでなく広がりもあるのだ。

最後に、化粧を施して、完成した自分の顔を鏡で見た時の心の動きである。

なんと表現したら良いだろう。
自分の理想に近づいた自分、プライドがある自分。
今日一日がとても幸せに過ごせそうな自分。自分の好きな、素敵だなと感じられる自分。
もしかしたら今までできなかったことが、全てできてしまうかもしれないという
カラフルな夢や希望を抱かせてくれるような、プリンセスな自分……

そんなが鏡の中で魅力的に(あくまで個人の感想)私を見つめ返しているのだ。
この時間が永遠に続いてほしい。ずっとこれを味わっていたい! 心の奥の方で、
なんとも言えないそうしたじんわり壮大な動きが、広がる。

もちろん傍から見たらイタイ人だろう。
でも、たいていロマンを見出している人はそんなものだ。

これをロマンと言わずしてなんと言う?
私は確信した。そう、「女にも」 ロマンはある。

そしてあの時の先輩に言いたい。
「女にもロマンは必要だと思います」 と。

というより、男とか女とか、もはや関係無くないか? 時代は変わったのだ。
「誰にでも」 そして「何にでも」 ロマンは存在しうるし、
もっと言えば、それが何であったって良いとも思う。
つまり、男性でもお化粧にロマンを感じたって良いし、
女性が車やバイクにロマンを感じても全然良いじゃない? と思う。

古い壁は取っ払って、それぞれがそれぞれの心の赴くままに、
各自のロマンを自由に追っかけたり求めたりしたら良いのだ。

男も女も、老いも若きもみんな、人生にロマンを持ったら良い。
ロマンがあると人生はより豊かに、より人間味が増す気がする。

技術も発達して機械にあふれた現代、これからはロボットとも共存する世界も
やってくるという。
せめて私たち生身の人間は、今までよりも意識して、
より人間臭く、熱く、時にうざったく自由に生きていきたいものだ。

いくつになっても、ロマンを抱いて。

***

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2022-07-27 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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