だから高校野球って嫌い!
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:中尾静恵(ライティング・ライブ大阪会場)
今年は、梅雨が短かったせいもあり、夏がとても長い。
確か6月の終わりごろから、最高気温が35度を越える猛暑日が続いていたような。体感的にはもう十分夏を感じたと思っていて、そろそろ涼しくなってくるんだろな~などと油断していたら、実はまだ7月だったり。「え、まだ夏終わらんの?」 と、現実に途方に暮れ、暑さとの長期戦にうなだれる日々。
そんな過酷な夏の真っ最中なのに、その日は決まってやって来る。高校生が、熱い戦いを繰り広げる、全国高校野球選手権大会。いわゆるところの、「夏の甲子園」 。
試合開始のサイレンの音が聞こえると、ああ、今年も夏がやってきた、と実感するのであるが、何が困るって、毎年、目が離せなくなるのだ。
6月頃から、全国各地で予選が始まるが、各都道府県の決勝戦の結果がニュースで流れてくるようになってやっと、「そろそろ甲子園か~」 と気付く程度であって、実はファンと公言できるほどの熱狂ぶりではない(笑)
でも、日に日に代表校が決まっていくにつれて、「おっ! ○○高校出るんや!」 などと、ワクワクしている。全国の代表が出そろうと、組み合わせ抽選の結果が気になって仕方がない。ネットで抽選結果を調べて、日程と組み合わせ内容を確認する。「おお~」 などと一人で一喜一憂しながら、自分の予定と照らし合わせていく。この日は、行けたら観に行こうとか、この日は一日テレビ観戦dayだな、とか。
テレビやネットでも、だんだん高校野球を取り上げる時間が増えてくると、それも全部見てみたくなる。完全に、メディアに踊らされているうちの一人だ。
野球が好きな父親の影響で、子供のころから野球が好きだった。テレビのチャンネルはいつも、プロ野球中継だったし、春と夏に甲子園で高校野球の大会があるときは、朝から夕方まで、一日中高校野球だった。なんなら高校野球は、父親と一緒に観戦に行き、それこそ一日中甲子園で過ごしたりもした。そんな子供時代だったものだから、大人になっても、高校野球だけはずっと観ていても飽きることがない。
しかし、ご多分に漏れず、8月に入っても、とにかく暑い。暑すぎる。ニュースでも、危険な暑さなので外出は控えて、家ではクーラーをつけて過ごすようにと、注意喚起しているほどだ。
そんな酷暑の日中に、炎天下の中、しかもほとんど屋根がない甲子園球場で野球をするなんて、想像するだけで吐きそうになる。いくら日々練習を積み重ねてきた、若い高校生とはいえ、一つ間違えば危険であることには間違いはない。しかも、コロナ対策で、ベンチにいるときは、みんなマスクをしている。うぇ~。
実際、毎年暑さに対することは、議論されてはいる。屋根のあるドーム球場でするとか、真夏の時期を避けるとか、朝夕の二部制にするとか、などなど。いろんなところで、解説者だの、コメンテーターだの、という人たちが、あれやこれやと言っているのを耳にする。確かに、子供たちを守りたい、守らなければならない大人の事情もわからなくはないが、選手をはじめとした現場の声をもっと聞いたらいいのにと、いつも残念に思う。正直なところ、選手たちはどう思っているのか。どうしたいのか。なぜそうしたいのか。本当は、それが一番大事だと思う。
そんな夏の甲子園。それでも、高校球児が憧れ続け、観る人を惹きつけ続けるものは、いったい何なんだろうか。
照りつける太陽に光る、黒く焼けた肌。ほとばしる汗と泥んこのユニフォーム。悔し涙や、歓喜の笑顔。礼儀正しい姿勢、一瞬一瞬の真剣な眼差し。ブラスバンドと地元の人たちの応援。そして、青い空に白い雲、甲子園の黒い土と緑の芝生。
それらすべてが、キラキラ輝いて見える。泥んこのユニフォームでさえもだ。まるで、アイドルタレントのように、キラキラしている。
もちろん、野球以外にも部活動はあるわけだし、高校生活でしか経験できないことはたくさんある。でも、なぜか高校野球には、特別な雰囲気がある。歴史や伝統といったところも、大きな要素だとは思う。でもきっと、他にはない、とびっきりの素材が、いくつも散りばめられているから、そこに人々は心奪われるのだと思う。
結局、暑すぎて、現地観戦することはなかったが、今年もいい夏だった。決勝戦が終わると、ああ、今年も夏が終わるなぁと、途端に夏の終わりを感じる。
決勝戦を観終わったあと、余韻に浸りながら、なんとなく優勝校監督のインタビューを観ていた。その監督が言った言葉が忘れられない。
「青春は密なので。」
今の高校生たちは、私たち大人が過ごした高校生活とは全く違う。入学した時から、ずっと我慢の高校生活。それでも、諦めずに、前を向いて頑張り続けてきた。そんな全国の高校生に、拍手をしてあげてください。
そんな内容だった。
ハッと気づかされ、心を奪われる名スピーチだった。
こんなことがあるから、高校野球を観ずにはいられないのだ。
高校野球のために、時間も電気も使い、さらに気持ちまで持って行かれてしまう。だから、高校野球って、ほんとに大好きだけど、ほんとに嫌いだ!
***
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