毎週5,000字を書く意味は、温室を出た時に初めてわかる《週刊READING LIFE Vol.188 「継続」のススメ》
*この記事は、「ライティング・ゼミ」の上級コース「ライターズ倶楽部」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
2022/10/03/公開
記事:河瀬佳代子(READING LIFE編集部公認ライター)
2019年8月開講の天狼院書店のライティング・ゼミに入って3年が経った。
あっという間に時が流れた気がしている。
初めて訪ねた東京天狼院では爽やかそうな女性の店員さんが説明をしてくれた。書いたものが合格なら掲載、不合格ならボツというスッキリ明朗会計なシステムが気に入った。前々から書くことに興味があったので「やってみようかな」とつぶやいたのだけど、店員さんはそのつぶやきを逃さなかった。
「開講の前々月だと10%の早割がありますね。どうでしょう?」
なんと! そんな素敵なものがあるのかここは。うまいこと言うなあ。早割だとか、割引だとか、そういうワードにめちゃくちゃ弱い私は頭の中で素早く計算した。受講料が約4万円だったかな、そしたら4,000円OFFだ。これは結構でかいぞ。即座に決断していた。
「そしたら今日申し込んじゃいます!」
今思うに、単純に説明を聞いただけで何の予備知識もないものによく即決してカードを切ったものだ。普段の私だったら怪しい勧誘には絶対に応じないはずなのに、会ったばかりの人の言葉を信じて申し込むなんて。
そんなわけでライティング・ゼミを申し込んでしまったのが2019年6月のこと。そこから開講まで2か月の間があった。帰り際に店員さんは「開講、楽しみにしていてくださいね」と言ってくれたけど、実際開講が近づくにつれて私は不安になってきた。毎週2,000字なんて、書けるのだろうか。原稿用紙5枚だけど、みなさんどんなの書いているんだろう。そう思って既存の受講生の作品を読むと、どれもこれもなんだかわからないけど上手い。エッセイっぽいけどちゃんとオチがある。こんなの書けるわけないじゃん……。不安とともにライティング・ゼミ受講当日になった。
2ヶ月間待った分、未知のことに挑む不安をいっぱい抱えながら東京天狼院に向かった。
今だったら信じられないけど、2019年は対面での講義が普通だった。一体どんな感じなんだろう……。説明の時は店員さん1人だったけど今日はたぶん違うだろうし。恐る恐るドアを開ける。
「こんにちは! こちらへどうぞ」
意外と明るくてアットホームな雰囲気だ。中に入ると狭い店内はほぼ埋め尽くされている。この人たちみなさん受講生なんだろうな。初めての人たちに囲まれて空いている席に座った。
講義をするのはどの人だろうと思っていると「今日は福岡にいます」とモニターの中で誰かが話している。そっか、この人が三浦さんっていうのか。チラシに出ていた写真とほぼ同じ人が出てきてちょっと安心した。通信受講で各地をつないでいるのも公平でいいなと思った。
話の内容は初めて聞くことも多かった。ABCユニット? なんだろうそれは? ワークショップで作ってみましょうと言われてその場でいろいろ考えたけど今ひとつしっくりきてない。まあこんなもんかなと思いながら初日は過ぎた。
そこから1週間後、月曜日の23:59までに2,000字で何か書いて提出してくださいとのことだ。さてどうしよう。何書こう。困ったな。何が困るって「なんでもいい」って言うのが最も困るんですよ。夕飯のおかずだってそうでしょうに。どうでもいいことを考えても書きたいことが浮かんでこない。苦し紛れに、隣の家の小学生女子が変に最近私に因縁をつけて生きていることを思い出したので、それ書いちゃえと思った。隣の家の子がああですよこうですよと、うんうん途中で考えながら書いたものは見事に落ちた。
まあそうだよね、面白くないもんねと思いながら、次の週もまた2,000字書いて出すのかと思ったら再度どうしようと思うのだった。次の週に書いたのはカフェでの一コマだったけど、なんの展開もオチもない文章はやはり落ちた。
何書いても落ちそうだし、フリーテーマだから相変わらず何書いていいかわからない。だったら書きなぐってみたらどうだろう。3回目の提出はそんな気持ちで、中学の時に自分をいじめた子の話を書いた。書いているうちに当時を思い出してムカついてきた。「バカヤロー、死ね!」と思いながら書いたそれは初めての掲載となった。そうか、感情を文章に載せることが必要なのかもしれないと初めて実感した。
そこから毎週ネタを探し、夢中で書き、掲載になったり落っこったりしながらも終わってみると4ヶ月間、16回の提出ができていた。なんでも書いていいですよというのは、一見優しいようで悪魔のささやきだったなあと当時を振り返って思っている。
ライティング・ゼミが終わろうとするころに、ライターズ倶楽部の入試を受けませんかと言われた。入試かあ……と思った。もうそんなものはこの先受けるわけもないと思っていたのに。でもせっかくだから、物は試し、受けてみようと思った。しっかり受験料を取られるので無駄にしたくないという気持ちももちろんあった。
入試ではお題に沿って制限時間内に5,000字のものを書いてくださいとのことだった。半分壊れそうに動作が重かったWindows 7のノートパソコンを抱えて私は東京天狼院に向かった。今ならお電話で試験開始になって自宅で受ける人も多いのかもしれないけど、店舗でライターズ倶楽部の入試を受けるというのはこんなにも緊張するものなのかと改めて思った。
「それでは始めてください」
私は必死にキーボードを叩いた。とにかく休みなくパソコンのキーを叩かないことには何もかもがだめになってしまうような気がしていた。これでいいんだっけ……。途中で自分が何を書いているかわからなくなっていたけど、これを伝えたいというところだけは書いた気がした。無我夢中で書いたものはすぐに審査があって、合格ですと言われホッとした。あんなのでいいのかなあと思うことだらけだったけどとりあえず受かったからよしとしよう。
そこから1期インターバルを取って2020年3月開講のライターズ倶楽部から参加した。
今までは2,000字だったけど今度は5,000字だ。書けるかなと思ったけど、つらつらと考えていると意外と2,000字を超えることも多かった。とりあえず何か書かないことには始まらないと思い提出する。初回は見事に落ちていた。まあそんなもんですよと思いながら次も出すけど通らない。
凡庸ですとか冗長ですとか弱いですねとかそんな講評が並んだ。そうなのか。弱いのか。そう思った時に、ライティング・ゼミで初めて合格した時のことを思い出した。あの時は感情をぶつけたじゃないか。「これを伝えたい」ということをしっかり、くっきりと出せていただろうか。それを改めて考えながら、昔やっていたブログ内で遭った炎上騒ぎのことを書いた。あのネットでの大炎上は背筋が凍るくらい嫌なものだったなと思い出しながら、感情を思い切りぶつけてみたら合格した。何文字であろうがやはり自分の想いというか、感情というか、そんな得体の知れないものを書き切ることが必要なのかも知れないと認識した。
そこから2年半が過ぎた今も私はライターズ倶楽部に在籍している。この間、本当にいろいろな展開があった。
大きなことの1つは自分が出した企画が通り、連載を持たせていただけたことである。取材をするのも初めてのことだったし、それを原稿に起こしてメディアに載せる作業も初めてだった。最初は取材先もいろいろな方がいらしたので本当に戸惑うことも多かったが、壁にぶつかるたびに、その都度考えながら解決していった。
もう1つ大きなことは、ライターとして報酬をもらったことだ。
思い切って応募したライター案件が思いのほか難関で、何度も何度もやり直してようやく掲載になったことは忘れられない。
私の文章を読んで、こういう仕事があるけどどうですかと声をかけてくれた方たちがいてくれたことも本当にありがたい。報酬はそんなに高くないけどメディアの方針が好きなのでぜひ続けたいと思う案件にも出会えているのは、たぶん幸せなのかも知れない。
細々とライター案件を続けて思うことは、他流試合をしてみないことには自分の本当の実力はわからないということだ。
ライターズ倶楽部のように毎週お題が出て、なんらかの評価をいただけることはありがたいことである。でもそれはあくまでも温室の中でしかない。いただく講評だって、仕事として書くものに比べたらとてもとてもお優しく、親切なものなのだ。こちら側がお客さんということもあるのかも知れないけど、温室の中に安住しているだけではいつまで経っても実力がつかないのではないか。
そんなことを考えながら、私は外のお仕事とライターズ倶楽部とを並行して書いている。それというのも先日取材のために集まった時にご一緒した方たちの中で、取材はおろか文章をほとんど書いたことがないんですという方が非常に多いことに驚いたからだ。自己紹介の時に「毎週5,000字を書くことを3年くらい続けています」と言うとみなさん驚愕されていた。もし自分がほとんどモノを書かない生活だったらそう思うのかも知れないけど、毎週5,000字を書いている身にとっては、意外と書けるんじゃないかと思える字数ではある。
これが、継続してきたことの強みなのかもしれない。どんな形であれ継続さえしていればなんらかの力がついているし感覚だって変わっている。写真や動画と違って、文章がどういうふうに変化したかは目に見えにくいものだけど、自分の中の感覚が変化しているのならば、それは明らかに継続することによって培われてきたものだ。
自分にとって、継続してきたものといえば文章しかない。3年間よりも長くやってきたお稽古事もあったけど、それらはどれも親がすすめたり、あるいは義務的にやってきたりしたものだった。自分で選んで、続けているものということならば文章しか思いつかない。瞬く間の3年間を振り返って、どれだけ自分が成長したのかは他人が評価することだけど、5,000字の何かが書けるんだという自信だけはついた。これからも文章を書くことを通じてどんなことが待っているのか、楽しみにしながら書き続けていきたい。
□ライターズプロフィール
河瀬佳代子(かわせ かよこ)
2019年8月天狼院書店ライティング・ゼミに参加、2020年3月同ライターズ倶楽部参加。同年9月天狼院書店ライターズ倶楽部「READING LIFE編集部」公認ライター。「Web READING LIFE」にて、湘南地域を中心に神奈川県内の生産者を取材した「魂の生産者に訊く!」http://tenro-in.com/manufacturer_soul 、「『横浜中華街の中の人』がこっそり通う、とっておきの店めぐり!」 https://tenro-in.com/category/yokohana-chuka/ 連載中。
この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」の上級コース「ライターズ倶楽部」にご参加のお客様が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。
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