演劇好きな私が思うこと~それは麻薬じゃないけれど~
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記事:カワマツ アヤリ(ライティング・ゼミ10月コース)
同じ演劇を何度も見に行く私に、旦那はよくこう問う。
「一回じゃだめなの?」「内容もキャストも同じなんでしょ?」
私はこう返す。「そういう問題じゃないんだ!!!」と。
「演劇」は「星空」と似ているなぁと思う。
当たり前だが、星空を見ることができるのは、日が沈み、再び朝日が昇るまでの間の、限られた時間だけだ。
天気が悪く、星も月も見られない日もあるだろう。
しかし、条件さえ整えば、この世界のどこにいても見ることができるのが星空だ。
何より星空は、その姿で人々の心を動かす。
「癒やし」であったり、「美しい」、「感動」。時には「悲しみ」、「絶望」。
人によって、感じ方はそれぞれだと思う。
演劇も同じだ。
公演時間が決まっているから、予定を合わせないといけない。
チケットが取れたとしても、トラブルが起きてしまい急遽中止に……なんてことも、無いわけではない。
しかし、この世界では、年がら年中、様々な土地で様々な舞台が上演されている。
ちょっと試しに検索してみて欲しい。きっと、想像以上にたくさん出てくるはずだから。
演劇と言っても、様々なストーリー・ジャンルがあり、人それぞれ好みがある。
「歌やダンスから発せられるパワーに圧倒されるのが好き」と言い、ミュージカルを見る人。
「突然歌って踊りだすミュージカルはちょっと……」「純粋な芝居の方が、セリフが直接心に響く感じがして良い」と、歌やダンスの無い舞台が好きだと言う人。
また、演劇の楽しみ方も人それぞれだ。ストーリーを単純に楽しむ人、照明や舞台美術・音楽等の演出を楽しむ人、俳優の演劇を見るのが好きな人。
みんな好みは違うし、感じ方も違う。見ている場所も違う。
それは星空にも言えることではないか。
「できるだけ田舎で、澄んだ空気の中で見る星空が好き」という人。
「雲ひとつ無い空に、月や星が煌々と輝くのが良い」という人。
「朧月夜がいい。儚さと怪しさが共存していて好きだ」という人。
「季節の星座を観察するのが好きなんだ」という人。
どれも間違いではないし、正しい楽しみ方である。
さて、日々星空を楽しむ人に向かって「なんで何度も同じ空を見るの?」と聞くのは、些か野暮ではないだろうか。
心動かされる瞬間を求めて、何度でも見上げたくなるのが星空だ。
例え見慣れた星空だとしても、見る人のその日の気分・体調によって見え方・感じ方が異なる、それが星空の面白いところだと思う。
一方、演劇を見る観客もまた、いつも同じ気分・同じ調子とは限らない。すると、同じ舞台でも見え方・感じ方が異なってくる。
例えば、失恋したばかりの貴方が、切ない恋模様を描く舞台を見たら、どう思うだろうか。感情移入して悲しくなったり、自分の失恋を思い出して切なくなるかもしれない。
では、ラブコメハッピーエンドストーリーを見たらどうだろうか。
現実を忘れて楽しめるかもしれないし、逆に虚しくなったり、心のどこかで悔しい気持ちが芽生えるかもしれない。
しかし、いずれにせよ「失恋したばかり」でなければ、それほどに強い感情は抱かないはずだ。
演劇を見る人次第で、生まれる感情・受け取る感動が変わってくる。
その時・その人にしか得られない感動が、そこにあるわけだ。
「演劇」と「星空」、似ているとは思うが決定的に違う点がある。
それは、「人間が関わっているかどうか」だ。
星空は自然物だが、演劇は人間が作り出すもの。
同じ姿でずっとそこにある星空もまた美しいが、演劇の「同じことをやろうとしても、どうしても違いが生まれてしまう」こともまた美しく、愛おしい。
そんな「生まれてしまう変化」が、演劇の醍醐味と言っても過言ではない。
演劇は、数ヶ月の稽古期間を経て、舞台で上演される。
本番を見据えて稽古をするが、当たり前だが稽古場に観客はいない。
観客がいるかいないかの差は大きい。
観客の楽しげなリアクション、手拍子、拍手、または息を呑む緊張感。
それを受けて、更に良い演技・パフォーマンスをする俳優。
それを見た共演者が、更に良い演技・パフォーマンスをする。
そんな相乗効果で、日々、舞台の完成度は高まっていくのだ。
「生まれてしまう変化」の要因は、もちろん観客の有無だけではない。
役者の調子次第で、微妙に変わる台詞回しやパフォーマンス。
偶然起きるハプニング、それに難なく対応する姿。
役者が役と向き合い、その役として舞台に立ち続けた結果、生まれる演技や新たな感情。
そんな変化に気付くことができると、やはり嬉しい気持ちになるし、一層感動するものだ。
もちろん、演劇は一度だけ見ても充分に楽しめる。
演技やパフォーマンスを、同じ空間で味わうことでしか得られない感動が、そこにはある。
一方で、何度も観劇している人にしか分からない、「生まれてしまう変化」があることもまた事実だ。
好きな曲、好きな俳優、好きな脚本、好きなシーン。
数々の感動の瞬間が忘れられなくて、またその瞬間に出会いたくて、劇場に通う。
「一度知ると逃れられないのは、まるで麻薬のようかもしれない」
すっからかんの銀行残高を見つめ、そんなことを思うのだった。
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