メディアグランプリ

三浦さんへ


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:うらん(ライティング・ゼミ)

 

 

天狼院書店をご存知の方でしたら、その多くが、「三浦さん」といえば誰を指すのかお分かりのことと思います。

そうでない方のために。

三浦さんというのは、三浦友和でも、三浦知良でもなく、天狼院書店の店主、三浦崇典さんのことです。

 

 

私は、10月からこの書店のライティング・ゼミに参加しています。

ライティングの極意を教えてくれるというこのゼミは、文章が上手くなりたいという思いをずっと抱いていた私にうってつけのものでした。

受講料の4万円という金額は、私にとっては高額です。ためらいはありました。でも、他のどんなものを削ってでもこれをやらなければ、という強い思いが湧いたのです。

 

毎回の講義は、とても面白く興味深いものでした。これまで5回受けてきましたが、どれも興奮するものばかりです。

読んでもらえる文章を書く秘訣や技法を、惜しみなく与えてくれました。

 

宿題ではないのですが、週にいちど、自分の書いた記事を提出すると、店主のOKが出れば天狼院書店のHPに掲載されます。

これがまた苦しいものでした。

講義で教わったことを念頭に置いて、書いてはみるのです。ところが、なかなか筆が進まない。

どうやったら上手く書けるか、どう書いたら読まれる文章になるか、そんなことばかりを意識して書いていました。

こうやって、あの技法を使って、この辺であのやり方を取り入れて……。

そうやって文章を紡いでいても、いっこうに進みません。

何とか形を整えることができても、そうやって無理やり生み出した作品は、何も語っていないような気もどこかでしていました。

たとえそれが、三浦さんのOKが出たとしても、です。

 

自分の書いたものが他の方々の書いた記事と並ぶと、自分の文章の稚拙さがよく分かり、それはそれで、へこみました。

特に、プロフェッショナル・ゼミの方々の書くものは、まさしくプロフェッショナルです。

もう私なんかお呼びじゃない。レベルが違う。そう感じました。

まるで、都会の大人のパーティーにうっかり紛れ込んでしまった田舎の人間のような心持です。

ですから、自分の書いたものにOKが出なかったときの落ち込みようったら!

こういうときこそ自分の文章の弱点を知るいいチャンス、などと決して思えません。

ああ。やはり私はライティングのセンスがないのだ。どう頑張ったところで知れている。このままパッとせずに終わるのだ。

そうやって、いじける一方です。なげやりになってきます。

そして、天狼院書店が次々と新規のライティング・ゼミを開講していくのを、あまり良い気持ちで受け取れなくなりました。

一人ひとりの受講生に注ぐ三浦さんのエネルギーが、希薄になるように思えたからです。

これも商売だからな。仕方がないか。そう自分に言い聞かせ、無理やり納得していたようなところがあります。

いま思えば、この頃の私は自分の力量不足や欠点を直視するのがいやで、いじけたり、うがった目で天狼院書店を見たりして、自分の目を問題から逸らしていたのです。

 

 

じつは、これを書く前に、他に書こうと思っていたテーマがありました。既に構想も練ってあったのです。

でも、三浦さんのあの日のあの文を読んだとき、もうそんなテーマで書いている場合じゃない、それよりも三浦さんに伝えたいことがある、何が何でも伝えなければ、そういう思いがふつふつと湧いて、これを書き始めました。

 

その文というのは、三浦さんがFacebookに寄せたものです。

それは、みんなの記事をチェックしているうちに、いつの間にか福岡天狼院のこたつでうたた寝をしてしまい、気が付いたら朝の9時だった、という内容でした。

そして、次のように書いてあったのです。

 

≪こうして、時間を見つけて、お客様から投稿された記事を毎週読んでいる。

今では、それが週に20万字を超えてしまっている。

読むのに時間を費やしているときに、どうしても思うことがある。

どうして、人のことをこんなに真剣にやっているんだろうと。

たしかにお金をいただいていることだが、それ以上に、時間は貴重だ。

 

その時間を、本来なら、自分の名前で出す本を書く時間に当てたほうがいいに決まっている。正直言って、お金的にもブランディング的にも、自分に時間を費やしたほうがいいだろう、客観的に見れば。

けれども、違うのだ。

目先の銀行口座の話はどうでもいい。

僕がこうして毎週20万字読んでいるのは、未来に対する投資だ。

僕一人で生み出せるコンテンツは限りがある。僕一人の時間は限られているからだ。

けれども、僕が足掻く中で手にして来た様々な法則やコツを、正確に伝えることができたなら、おそらく、僕一人で成し遂げるはずだったことよりも、はるかに大きなことを、多くの人が成し遂げてくれるだろう。

僕の才能など、大したことがないのである。

けれども、今は眠るあまたの才能を目覚めさせることができたら、未来は面白くなるかもしれない。≫

 

これを読んだ瞬間、私は大砲のようなものでズドーン! と撃たれたような大きな衝撃を受けたのです。大袈裟な表現かもしれませんが、感動で胸がうち震えました。

 

三浦さんは、こんなに私たちに期待してくれている。自身のためにやっているのではなく、私たちに力を託そうとしてくれている。

そのことに、私は大いに心を打たれたのです。

 

三浦さんのこの期待に応えるためにも、私たちは書かなければいけない。三浦さんが注いでくれているこの労力を、一滴たりとも無駄にしてはだめだ。そう強く思いました。

 

私は、自分の力量不足を棚に上げて、いじけたり、うがった見方をしたことを申し訳なく思います。自分の心の狭さが恥ずかしい。

 

感動と反省と同時に、あることが胸にストンと落ちるのも感じました。突然「合点がいった!」のです。アハ体験というのでしょうか。三浦さんの文章には、そのことについて何も触れていないにも関わらず。

 

それは、読んでもらえる文章を書く技法というのは、「何か伝えたいことがあるときに、そのことを伝えるために」読んでもらえる文章を書く、ということ。つまり、ライティングの極意が生きるのは、何か伝えたいことがあるというのが前提なのでした。

 

そんなの当たり前のことだと思うかもしれません。

ただ、私はそれまで大きな勘違いをしていたのです。文章を書く技法を学べば、うまい文章が書けるのだと思っていました。

ですから、そうやって無理やり生み出したものが、何も語っていないと感じたのは当然です。

どんなに顔立ちが整いスタイルが抜群でも、中味が空っぽな人には何の魅力も感じません。

それと同じように、伝えるべき内容のない文章は、どんなに上手く書かれていても、人の心を動かさないのだと知ったのです。

そのことに気付くのに、二か月半かかりました。

でも、それは私には必要な二か月半でした。5回の講義をいっぺんに聞いたとしても、このことは悟れなかったと思います。実際に、書いて、書いて、書いてたどった道程で、初めて得とくできたのです。

 

三浦さんは講義のなかで、人は読んだものに感動すると行動に移す、と言いました。

ああ。今こうして私がこの文を書き始めたのがそれだ。そう感じています。

 

三浦さんのあの文を読んで、突然すべてのことが腑に落ちると、今度は今まで見えていなかったものが、急に新たな顔をして浮かび上がってくるようになりました。

たとえば、三浦さんは受講生の記事を不採用にするとき、その記事の問題点や欠点を指摘して、それだけで終わりにはしません。必ず、「またチャレンジしてくださいね」といった言葉を添えています。

不出来なものをバッサリ切り捨てるのではなく、救いの手を差し伸べている。できたら全員をなんとかモノにしてやりたい。そういう気落ちが根底にあるのを感じるのです。

三浦バズーカを浴びる前には全く気付かなかったことです。ペケだった~と落ち込むだけでした。

 

こうしてこの記事を書きながら、不思議なことを同時体験しているのに気付いて、驚いています。

書きたいことがあると、筆が進むのです。

三浦さんに伝えたい、そういう気持ちがあって、今これを書いています。すると、自分の思いを伝えるために、自分のなかを掘り下げて、掘り下げて、言葉を探しているのです。

何をどう書こうなどということは考えず、三浦さんに届く言葉を自分のなかから掘り出そうとしているのです。

すると、どんどん筆が進む。

中味が薄っぺらなときは、書くという作業があんなに捗らなかったのに。

 

 

『走れメロス』で、メロスは帰還するのを諦めそうになっていたところを、再び立ち上がり、走り出しました。

それは、自分の名誉のためではありません。友人のセリヌンティウスに信じられていたからです。友人に信頼されていると感じていたから、その信頼に報いるために、再び走り出したのです。

 

私も同じです。

いったんは、なげやりになってその場にしゃがんでいました。でも、こうして再び走り出したのです。

それは、途中で放り出したら格好が悪いからとか、受講期間を終えたときに後味が悪くならないようにとか、そういう理由からではありません。

三浦さんの期待に応えるためなのです。三浦さんが私たちに注いてくれている労力を、無駄にしないためなのです。

 

悪魔の囁きで、いじけたり、うがった見方をしてしまいました。

三浦さん、わたしを殴れ。

ウソです。平手打ちはシミになるのでご勘弁願います。

 

メロスは、セリヌンティウスの信頼に報いるためだけに走り出したのではありません。

「もっと恐ろしく大きいものの為に走って」います。

 

私も、人智を超えるような何か「大きいもの」に信じられているのだとしたら、私にとってのそれは「文章の神様」なのかもしれません。

*** この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。 「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、WEB天狼院編集部のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。

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2016-12-14 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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