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弘法筆を選ばす、私は筆を選びたい


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記事:遠藤 美紀(ライティング・ゼミ2月コース)
 
 
「なんて綺麗なんだろう」
 
 
私がはじめてガラスペンを見たのは、もう5年以上前。たしか、東京駅の中にある雑貨屋さんだったと思います。
ペン先から徐々にねじったように螺旋を描き、その上にガラスの玉、そして軸があり、軸の色は何種類かあります。
 
 
ガラスでできたペンなんて、どれだけ高価なものなのだろうと、恐る恐る値段を見てみると、意外と買いやすい値段。
「どうしよう? 買ってしまおうか」
そう思ったのですが、その頃私はこれもお試しに使える程度の値段とは言え、万年筆を使い始めた頃でした。似たようなインクを使う筆記具を増やしてもなぁ、という気持ちと、もし買うのなら、自分の中の絶対にこれ! というペンを見つけたい、という気持ちがあり、とりあえず保留としたのです。
 
 
そのうち、どこかで気に入ったガラスペンが見つかったら買おう。そのくらいの気持ちでいました。
 
 
とは言っても、そのうち探すことも忘れてしまっていたのですが。
 
 
さて、その頃使い始めていた万年筆はどうなったかというと、万年筆を毎日使うわけではなかった私はインクを固まらせてしまい、ネットで調べてペン先をお湯につけたりと手入れを怠ったために余計に手間をかけることになってしまいました。
不器用なため、インクの交換の時に手を汚すこともあります。
そうなると、もうだんだん使うことが面倒になってしまい、とうとう全く使わなくなってしまいました。
 
「もう、普通のペンでいいや」
 
そう思い、どこの文房具店でも売っているペンを愛用していました。
 
それが、ここ最近になって、急にまたガラスペンのことを思い出したのです。何がきっかけだったのか、全く思い出せないのですが、その瞬間にスマホでガラスペンを検索しはじめました。
 
 
ガラスペンは、ペン先をインクに浸けると、そのペン先の何本かある溝にインクが吸い上げられ、その状態で書くことができます。
そして、何より嬉しいのは、使い終わったら、水でインクを流してティッシュや柔らかい布で水を拭き取れば良い、ということ。
これなら、ズボラな私でも万年筆のようにインクを固めてしまうこともなく、手入れも簡単にできそうです。
 
 
それからは、また購入に向けて気に入ったガラスペンを探すようになりました。そして、とうとう、これにしようというガラスペンを見つけました。
私が選んだのは軸が紫と青のグラデーションになっているもの。
 
 
付属のインクは水色でした。
 
 
深い色が好みの私としては、物足りない色味でしたが、それはいずれ気に入ったインクを買えばいいので、ひとまずは水色のインクを使って試し書きをします。
 
 
インクの瓶の蓋を開けて、ペン先をそっと浸してみます。すると、インクがペンの溝に沿ってスッと上がってきます。
そのまま、紙に横に線を一本書いてみると、思ったよりも柔らかい書き心地でした。
何本か横線を書いてみてから、今度は「こんにちは」と書いてみました。なんだか、自分の字が少しキレイになっているような気がします。
 
 
それからは友達に送る、ちょっとしたメッセージにも活躍してくれるガラスペン。インクも「山葡萄」という名前のものを買い、ますます使うことが嬉しくなっています。
少しずつ、「書く」ということが増えてきたかもしれません。
 
 
私は今、「文章を書く」ということを学んでいます。とは言っても、結局文章を書くことは、ほとんどがパソコンやスマートフォンで行っています。だから、実際に自分の手で文字を「書く」ということは、ほとんどなくなっていたのだと改めて気づきました。
 
 
それは、自分の字にあまり自信のない私にとって、何も不都合はなかったのです。ですが、書かないということは、字の上達もないということ。これでは困ってしまいます。
 
 
今回、自分の気に入ったガラスペンを見つけて、それを使うことで思ったのは、たとえあまり字がキレイではなくても、字の雰囲気を作るのはペンにもよるのだ、ということです。
 
 
気持ちの問題なのか、深みがありつつ、華やかなインクが字がそこそこ上手いような雰囲気を作ってくれるのか、はたまた本当に持ちやすさや筆圧など、ペンによって上手く書けるものがあるのか。
 
 
「弘法筆を選ばす」という言葉がありますね。技量が優れていれば、道具に左右されない、という意味です。
もちろん私はそんな技量はありません。ですので、私の場合は、「私は筆を選びたい」なのです。
 
 
今度は誰かへのメッセージや手紙だけではなく、自分の文章も「私が選んだ筆」で心地良く書いてみようと思っています。雰囲気のある文字のお陰で、もしかするといい雰囲気の文章になるかもしれない、なんて期待を少ししています。
 
 
 
 
***
 
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2023-05-17 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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