案ずるよりも頼るが易し
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:かたぎりひとみ(ライティング・ゼミ6月コース)
「これがプロの技か」
すっかり片づいた部屋を見て、私は心の底から感心した。わずか2日間でここまで綺麗になるとは! 窓から入る風が心地いい。ずっと気がかりだったことが解決できて、私の心にも清々しい風が吹く。プロにお願いして本当に良かった。
義父亡き後、義母は一軒家に一人で暮らしていた。元々モノを大切にする人だった。
夫の幼い頃の洋服や年代物の家電製品など、もう使うこともないモノでも取っておく。周りから見たらゴミでも、義母にとっては思い出の品だった。部屋の中には、様々なモノが所狭しと並んでいた。
モノが多くて散らかった部屋は、人の気持ちを苛立たせるらしい。夫と義母は、片づけを巡って言い争うようになった。
「使わないモノは捨てろ」「今度使うから」
「片づけないなら俺が片づける」「勝手に触らないで」
義母は、徐々に家に人をあげるのを避けるようになった。
今にして思えば、既にこの頃から認知症を発症していたのかもしれない。モノの置き場所を忘れてしまうから、また新たに買ってしまう。部屋に見合った量がわからなくなり、捨てるべきモノと取っておくべきモノの区別がつかなくなる。義母も片づけようと思ったこともあっただろう。しかし、体力が衰えて体が言うことを聞かない。そうして次第にモノが増えていったのかもしれない。
やがて認知症が進行した義母は、施設に入所することになった。義母の制限がなくなり、自由に見て歩けるようになった実家は……。大変なことになっていた。あふれるモノ、モノ、モノ。床は足の踏み場もなく、天井に届くほどモノが積み上げられていた。
とにかく片づけなければ! モノであふれる光景を見た私達に「片づける」以外の選択肢はなかった。前々から、いずれ実家の片づけ問題に直面することは覚悟していた。その覚悟は大いに甘かったと思い知らされることになる。
最初は、「筋トレだと思って頑張ろう!」と、前向きに取り組んだ。しかし、筋トレはすぐに修行に変わった。やってもやっても片づかない。とにかくモノが多かった。
押し入れを開けると、座布団50枚に布団10組。段ボールを開ければ、義父が定年するまでの全ての給与明細と社内報の束。食品庫の中には漬け物の瓶が30個。もちろん中身入り……。ドアや引き出しを開ける度に肝試しだった。祈るような気持ちで恐る恐る扉を開ける。「ぎゃー!」「出たー!」と大量のモノに腰を抜かす。この繰り返しだった。家中の至るところに、モノがぎっしりと隙間なく収められていた。
私達夫婦は、休日の大半を片づけに費やすようになった。3か月で捨てたモノの総量は2トン。それでも、家の中はモノであふれ返っている。鳥取砂丘の砂を耳かきでかき出しているようだった。やってもやっても終わらない。
見通しの立たない作業は精神的に参ってくる。身体の疲れ以上にきつかった。ゴールが見える分、仕事の方がずっと楽だった。以前は憂鬱だった月曜日が待ち遠しい。そう思うほど身体も心も疲れていた。一体、いつになったら終わりが来るのだろう? 考えるとため息が出た。
しばらくして、救いとなる貴重な情報に出会う。実家の片づけを遺品整理業者に頼んだという人の話を聞いた。彼女の母親も一軒家に一人暮らしだった。家の中はモノであふれ、こたつは4台あったそうだ。聞けば聞くほど、うちと似ている。その家の片づけが、作業料、運搬費、ゴミ処分料、すべて含めて30万円で済んだと言う。
私は、業者は高いものと決めつけて、全く考えていなかった。でも、そのくらいの金額ならなんとかなる。節約のために自分達が疲れ切ってしまったら、元も子もない。自分達の生活や身体を優先しなくては。私達は業者に依頼することに決めた。
業者はわずか2日間で、あっという間に家中を片づけてくれた。掃除機で吸い取るようにモノがどんどん視界から消えていく。プロの技に感動するばかりだった。
運び出したモノの総量は、14トン! どうりで片づけても片づけても終わりが見えないわけだ。あのまま、自分達で作業を続けていたら、どれだけの時間とエネルギーを消耗したことだろう。最低でも2年はかかったはずだ。それを36万円で避けることが出来た。知人より少し高くついたものの、大満足だ。費用も時間も、とても有効に使えたと思う。過去の苦労を思えば安いくらいだった。
最初からプロに頼む。そう決めていたら、あんなに苦労したり心配したりする必要はなかった。義母と言い争いをすることもなく、義母の思い出話でも聞きながら、お互いもっと気持ち良く過ごせたことだろう。
困ったら、プロや詳しい人を頼ればいいのだ。問題に直面したとき、自分で解決しようとするのは大事だ。でも、自分の力ではどうしようも出来ないことだってある。そういう時は、素直にプロの手を借り、アドバイスや教えを求めればいい。
心が弱ったときにはカウンセラーに。介護で困ったら介護のプロに。掃除が出来ないときはハウスクリーニングの業者に。文章が上手になりたかったら天狼院ライティング・ゼミに。お金がかかるものもあるが、それだけの価値は十分ある。
何でも自分一人で解決しなくても大丈夫。案ずるよりも頼るが易し。案じて案じて自分を追い詰める前に、頼れるところに頼ればいい。世の中には私達を助けてくれるプロがたくさんいるのだから。
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