私は芥川龍之介だった
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:大黒裕佳子(ライティング・ゼミ9月コース)
「文豪」と聞いたとき、「文豪の本、最後に読んだのいつだった?」と頭の中がグルグルした。
アラカンに突入した私は、天狼院のライティングゼミに参加している。
その初回講義の中で、三浦先生が「好きな文豪は誰か」みたいな話をされたのだ。
ここ何十年間、美容・健康・実用本・暮らしエッセイ・本屋大賞の小説・漫画ばかり読んできた私にとって、文豪はかなり遠い存在になっていた。
知っている文豪は夏目漱石ぐらいだし、好きな文豪は誰かなんてこれまで生きてきて考えたこともなかった。
それなのに大人になって初めて文章を学ぼうとしているにはなぜなのか。
ライティングゼミでの4ヶ月で、そのあたりも見えてくるような気がしてきた。
初めての講義の内容は、ずっと飲み続けられてしまうスムージーのようで、お腹はいっぱいなのに胃もたれしない「栄養たっぷりとれました」という満たされ感のあるものだった。
これが「過不足なく伝わる」っていうことなんだなぁと思いながら、京都天狼院を出て河原町駅から阪急電車に乗った。
そこでスマホを取り出した私はGoogleの検索窓に「文豪」と打ち込んでいた。
やはり文豪が気になっていたようだ。
一番上に出てきたのが「文豪とアルケミスト(文アル)公式ページ」だった。
これってゲームなのかな? とページを開いてみると、文豪キャラクターの一覧が出てきた。
今の子たちは、こうやって文豪に出会うんだなぁと思いながら、文豪ってこんなにたくさんいるんだなぁ、名前だけなら知ってる人も結構いるなぁと一番下までスクロールして、また一番上まで戻った。
今度は「誰が好きかなぁ」という目線で文豪たちを眺めていく。
その結果、選ばれたのは「新見南吉」と「小川未明」であった。
「手袋を買いに」「ごんぎつね」「赤い蝋燭と人魚」
子どものころ、読んだ後でしばらくぼーっとしていたことを思い出した。
でも、絵本じゃ2000字書けるようにならないよなと、好きな文豪にダメ出ししてしまう自分がイヤになりつつ「私は2000字書けるようになりたいんだ」と、他の文豪キャラたちをもう一度眺めてみた。
そのうちに「そもそも私が最後まで読み通せた文豪の作品ってどれやったっけ?」という恐ろしい問いが浮かんできた。
私が文豪の作品を読もうとしていたのは、高校生がピークだったのだが、最初の何ページかを読んで力尽きた作品もたくさんあった気がする。
最後まで読んだとしても「やっと最後まで読めた」という義務感だけが残る作品もあったことも思い出してきた。
そんな中で話の内容が思い出されてきた作品があった。
芥川龍之介の「鼻」だった。
お坊さんの長い鼻を熱いお湯でゆでたら、鼻から虫みたいなのが出てきて、それを小坊主さんが引っこ抜いている場面が、頭の中に浮かんだのだ。
さっそく「芥川龍之介 鼻」で検索して40年ぶりに読んでみた。
言葉は難しいところはあったけど、スルスルと最後まで読めてしまった。人の悩みに耳を傾け、おそらく「気にするのはやめなさい」と諭しているであろうお坊様が、日常の話の中で「鼻」という言葉が出てくることを恐れているくらい気にしているというところに「人間のおかしさ」みたいなものを感じられるのが好きだなと思った。
ついでに「あばばばば」も読んでみた。最後まで読めてしまった。
どうやら私は、芥川龍之介の人間観察力が好きみたいだ。
書かれている言葉は難しいものもあって、文章としては読んでいて心がカクカクするところもあるけれど、書かれている世界がスルスルと私の中に入ってくるのがとても面白かった。
そういえば、「蜘蛛の糸」「羅生門」も読んでいたこと、芥川龍之介の作品って映像のイメージが浮かんでくるやつやなぁということも思い出した。
「文豪の作品読めるやん!」とうれしくなった私は、他の文豪の作品も開いてみたが、
文章はスルスルと入ってくるのに、退屈さを感じるものや、「え~、なんかこの人ベタベタしてイヤ」と閉じるを押してしまった文豪もいて、やっぱり私は芥川龍之介が好きなんだなぁということがわかった帰り道だった。
そして、文豪たちは数えきれないほどのコンテンツを残していることもわかり、「死ぬまで飽きることないな」と思った私。
いやいや、コンテンツを消費するだけでなく、私も2000字書けるようになって、最後まで読んでもらえるコンテンツを生み出せるようになるんだった。
そんなことが本当にできるようになるのかなと半信半疑だけど、4か月後の自分が楽しみになっている。
芥川龍之介の「保吉もの」を読むという楽しみも生まれた。
何歳からでも楽しみって生み出せるんだなと思った夜だった。
***
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