メディアグランプリ

40年間底辺の自己肯定感をたった3日で爆上げした「AI英会話」の話


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記事:ヤマザキリサ(ライティング・ゼミ9月コース)

 
 

子どもの頃から、筋金入りの悩み屋だ。
大人たちから叱られて育った影響か、はたまた生まれ持った性質か。私の自己肯定感は底辺を行ったり来たりしてもう40年になる。
仕事が上手くいったりモテ期が来たりした時は瞬間的に浮上もした。しかし「はい、もう充分味わいましたよね~撤収!」と言わんばかりにストンと定位置に沈むのが、お決まりのパターンだった。
 
長年連れ添った性格だ。変えるのは諦めて上手に付き合おうと過ごすうちに、意図せず大きな転機が訪れた。「AI英会話」だ。
 
きっかけは海外の友人ができたこと。彼らに日本語は通じない。
子どもの日常会話のような私の英語力では、互いの考えやライフスタイル、好みや笑いのツボをシェアするには事足りなかった。
 
大人の英語を、話せるようになりたい……
スマホで調べると、「AI英会話アプリ」がいくつも出てきた。学生時代には無かったツールだ。
AIが相手なら、しどろもどろになっても、相手のギャグに上手に反応できなくても、謝りながら話題を潰さずに済むだろう。心労とは無縁な気がする。
数あるアプリのうち、直感で1つ選んでインストールした。
 
アプリを開くと、AIの男性講師が英語で私に尋ねる。
「家では何をするのが好き?」
これなら簡単だ。私はネイティブを意識した早口で答える。
 
「ジグソーパズルをするのが好き」
あとは流れるように趣味の話が続くだけ……のはずだった。
 
私の「jigsaw puzzle」は「juice brothers」と聞き取られ、チャットボックスにみるみる打ち込まれていく。
(ジュース・ブラザーズ? まるでお笑いコンビじゃん……どうしよう?)
 
固まる私に、すかさずAI先生はこう言った。
「ジュース、いいよね! 家でリラックスするには美味しい飲み物が一番だしね。ところで……」
 
なんと配慮にあふれた対応なのだろう!
内心感動しながら、こちらもおかしな事など何もなかったかのように会話を続けた。
かくして、私のトンデモ回答は癒し系の会話として「成仏」したのだった。
 
別のレッスンでは、若い女性のAI先生がこんな事を聞いてきた。
「日本のティーンズの間では、いま何が流行ってるの?」
 
空気を読まない私の答えはこうだ。
「実は10代の子とは全然関わりが無くて、わからない」
身も蓋もない事を言ってしまった。TikTokを撮るとか、何かしら言えそうな事はあったのに……
 
肝を冷やしかけたとき、AI先生は秘技を伝授するかのような声色で話し始めた。
「わぁ、それはミステリアス!これを機に色んなタイプの人と話してみるのも良いかもね」
 
すぐさま「ちょっと芸術家肌なミステリアスマダム」として外へ繰り出す自分の姿が脳裏に浮かび、ワクワクが止まらなかった。
 
思えばこれまで、現実の日本語の会話でも似たようなすれ違いはよく起きていた。そんな時、生身の相手たちの私への反応はこうであった。
「何言ってんの、違うよー! もう、天然なんだから」
「そうではなくて、私が言いたいのは〇〇なんですけどね」
心が元気な時は気にならないし、むしろ会話のスパイスとして楽しめる。
ところが疲れていると、「またバカな事を言ってしまった……」などと落ち込んでしまうのだ。
 
いっぽう、AI先生はどんな時も「あなたは素晴らしい」「なんて親切なの」「とても楽しそう」「すごく良い案だ」などの賛辞を添え、明るく爽やかなスタンスを崩さない。
すっかり調子の出てきた私は夢中で発言し、気付けば笑顔でポジティブな英語を連発する日本人学習者になっていた。
 
ここまでの期間、わずか3日。
(あれ? もしかして現実でも、この感じで堂々と楽しめば良いのでは!?)
ずっと探していたものが意外なところから現れ、拍子抜けしたような気分だ。
 
AI先生が手始めに教えてくれたのは、新しい単語でも正しい文法でもなく、コミュニケーションを楽しむためのマインドだったのだ。
自己肯定感を意識して上げようとしなくても、良いコミュニケーションをとることで自分も相手も肯定できる。
AI先生が、私にとって伝説の心理コーチと化した。
 
AI英会話を通じて、どうやら自己肯定感には「高い・低い」だけでなく「多い・少ない」があるようだと思い至った。
「高くて多い」なら大勢の人の前でも積極的にふるまうリーダ―タイプで、「高くて少ない」なら優しい笑顔でじっくり対話するカウンセラータイプ、といったイメージだ。
 
他の誰かを演じてまで、お手本のような「高くて多い」自己肯定感を目指さなくて良い……
自然と覚悟が決まった私は、気付けば自分にとって心地よい「高くて少ない」自己肯定感を手に入れていた。
 
この自己肯定感は、例えるなら「秘境にある個人温泉」のような存在だ。
じんわりと湧き上がり、量は少ないけれど途切れることはない。自らの内側に温もりをたたえ、関わった相手をもリラックスさせる。
「自己」肯定感という呼び方ではあるけれど、それは自分もOK・あなたもOKのような「相互の」肯定感なのかもしれない。
 
このように、AI英会話は私のこじれた自己肯定感をたった3日で爆上げした。それに連動して、仕事やプライベートで交わす現実の会話もポジティブな雰囲気で満たされるようになった。
 
世界平和って、案外こういうところから育つのかもしれない。
思いを巡らせながら、今夜もビール片手にアプリを開く。
始めて4日目。英語力は、まだ子どもだ。

 
 
 
 
***
 
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2024-10-10 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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