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のら猫にとって、なぜ「発情期」は最大の危機なのか?


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記事:琴森美香子(ライティング・ゼミ11月コース)
 
 
あなたは、道端や公園で「のら猫」を見かけたことがあるだろうか?
その時、どんな印象を持っただろう?
 
日向ぼっこしながら気持ちよさそうに寝ていれば、「のびのびと生きていてイイな」と感じたかもしれない。あるいは、可愛い子猫の姿に心が和んだこともあるだろう。
 
他方、猫が近所でゴミを漁ったり、自宅の庭に糞尿をしたりといった迷惑行為に困っているなら、「のら猫」という言葉を聞くだけで嫌な気持ちになるかもしれない。
 
しかし、どちらの立場の方にも、ぜひ思い起こしてほしい事実がある。
日本には、沖縄のイリオモテヤマネコ等、一部を除き、野生の猫は存在しない。
 
外で見かけるのら猫たちは、皆、元は人に飼われていた家猫(イエネコ)か、その子孫であり、身勝手な人間に捨てられた被害者なのだ。
 
猫が捨てられる理由は様々だ。
 
引っ越し、経済的困難、猫アレルギーの発覚、「思ったより手がかかった」といったものや、高齢の飼い主が施設に入所したり亡くなったりして、親族の手で捨てられるケースも増えている。
 
こうして突然、外の世界に放り出された猫にとって、そこは想像を超える過酷さだ。
 
エサも水もどうやって探せばいいのか分からない彼らは、飢えと渇きに苦しみ、天敵のカラスや車、人間からの虐待などを避けられず、次々と死んでいく。
 
何とか外の世界に適応し、「のら猫」として生き延びた猫も、次世代を生み出す過程で新たな苦難に直面する。
 
母猫の多くはウイルスや細菌に感染しており、それが子に受け継がれ、免疫力が弱い子猫はあっと言う間に発病し、絶命する。
 
春夏秋冬も、子猫にとっては脅威だ。
生後1ヶ月頃まで自分で体温調節ができない子猫は、春先の寒さで容易に命を落とし、夏の炎天下、熱中症に倒れる。さらに、冬の寒さや豪雨、台風による低体温症も、死に直結する。
 
こうした厳しい環境を乗り越え、成長した猫たちに、最大の危機が訪れる。
「発情期」だ。
 
本来、猫は平均して半径50mという、狭い縄張りの中で生活する動物だ。そのため、通常は、エサと水が十分にあれば、交通量の多い道路をわざわざ横断することはない。
 
しかし、発情期になると状況は一変する。
 
発情したメス猫が出すフェロモンに引き寄せられ、集まったオス猫たちが縄張り争いやケンカを始める。興奮したオス猫は、縄張りを越えてメス猫を追いかけ、メス猫も、普段は行かない場所に逃げ込む。
 
こうして、多くの猫が道路に飛び出し、車に轢かれる危険が一気に高まるのだ。
 
ここで、皆さんにちょっと考えてみていただきたい。
 
令和5年度の名古屋市における交通事故の死者数は、33名だった。これは名古屋市の人口を約230万人とすると、その0.0014%にあたる。
 
では、名古屋市において、路上で死亡した猫の数は、一体、何頭くらいで、その割合は、全のら猫の大体、何%くらいに当たると思われるだろうか?
 
名古屋市には、約1万3千頭ののら猫が生息していると推計されている。
そのうち、昨年(令和5年度)1年間で路上死した猫は、3,442頭。
これは、実に全のら猫の26.5%に当たり、約4頭に1頭が路上で死亡している計算だ。
 
驚かれたのではないだろうか? これほど多くの猫が、路上死しているという事実を知っている人は、そう多くないはずだ。
 
しかも、亡くなっている猫のほとんどは、年若い猫たちだ。
室内飼育の猫の平均寿命が14.2歳(アニコム動物白書2023)であるのに対し、のら猫の平均寿命はわずか3~4年、約4分の1以下と極端に短命であることが、それを物語っている。
 
だが、こうした悲惨な現状を打破する方法が、一つ存在する。
のら猫の「不妊手術」だ。
 
不妊手術は、新たな子猫の誕生を防ぎ、これ以上苦しむ猫を生まれさせないことはもちろんだが、それに加え、今を生きるのら猫の命を守る効果もある。
 
まず、手術を受けることで発情期がなくなり、道路に飛び出すリスクが格段に減少する。また、発情期には猫同士のケンカで負傷し、その怪我が元で死ぬ猫も多いが、不妊手術を行えば、そういった命も救うことができる。
 
こう書くと、猫を迷惑に思っている人は「猫が死ななくなって数が増え、迷惑度が増すのでは?」と心配されるかもしれないが、それは、おそらく杞憂だ。
 
なぜなら、猫は大変繁殖力の強い動物で、メスは生後半年で妊娠可能となり、1年に2~3回妊娠し、1度に4~6頭を出産する。1年で8~18頭の子猫を産むため、一組のつがいが、2年後には80頭、3年後には2000頭に増える計算だ。
 
不妊手術をすれば、この連鎖を止められるのだから、当然ながら全体の数は減っていく。
 
しかも、不妊手術を受けた猫たちは、尿の匂いが薄まり、発情期特有の鳴き声を発することもなくなるため、迷惑度も軽減される。
 
このように、「不妊手術」は、猫たちの命を救うだけでなく、人とのより良い共存を実現するための鍵だ。
 
「不妊手術」により、のら猫たちを苦しみの連鎖から解き放ち、猫と人とが共生する都市、名古屋を築いていきたい。
 
 
 
 

***

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2024-11-28 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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