【カンブリア宮殿】「年輪経営」で社員の幸せと会社の永続を目指せ!伊那食品工業《READING LIFE EXTRA》
考えさせられた。
ひとことで言えば、「古い」のである。
「終身雇用」と「年功序列」。
これに対して、今、新しい働き方が注目されている。
「フリーランス」に「ノマドワーカー」。
独立しないとしても、社内で半分個人事業主的な考え方でなければ、これからの時代、生き残ってはいけないと、「識者」は口をそろえて言う。
僕も、実際、起業独立して、様々な企業と連携して働かせてもらっているので、周囲からみれば、「フリーランス」や「ノマドワーカー」として映るんだろうと思う。
しかし、僕が理想とするのは、実は「終身雇用」などの、「古い」考え方の方だ。
実際、僕が天狼院書店で実現したいのは、次のようなことだ。
夫婦で書店人としてひとつの店を経営して、子供二人が大学に通わせられるだけの収益を確保する。
厳しいことをいうようだが、有り体に言ってしまえば、今二十代の書店人が、今の仕組みの書店にいてこれを実現するのは、ほとんど不可能である。とある書店は、数年前に業界給与ナンバー1を標榜したが、そこに勤める人の話を聞くと、これが幻想であることがわかる。こうとも言える。それでナンバー1を謳われてしまっては、この業界に優秀な人材はとどまることはできず、衰退は火を見るより明らかである、と。
ところが、今回、カンブリア宮殿で取り上げられている会社、伊那食品工業はこれを悠々と実現してしまっている。業種は「書籍」と「寒天」と大きく違えども、その仕組みについて、一度真剣に考えてみる必要がある。ふつうに考えれば「寒天」にできて、「書籍」にできないことはないだろうとも思う。
番組において、ひとりの社員がこう言っていたのに、僕は正直、言葉を失った。
28年間、一度も給料が下がったことがない。それだから、娘を3人、私大に通わせることができた。
そして、こんな話も出た。
持ち家率8割。30歳前後で家を建てている社員もいる。
はるか遠い昔の話ではなく、現代の話である。
どこか勢いのある新興国の話ではなく、日本での話である。
また、シリコンバレーで新しいIT技術革命を起こしたベンチャー企業の話ではなく、「寒天」を作る地方の企業の話である。
僕が企業人として理想としているところのことごとくを現実としているのは、そんな会社なのだ。別段、見たことも聞いたこともないような形態でもなく、戦後の日本に普通にあった会社のかたちなのだ。
実際に伊那食品工業の代表取締役会長の塚越寛さんは番組内でこうも言っている。
そもそも会社は働く人が幸せになるためにできた仕組み。
至極もっともな言葉である。
ただ、我々は、新しさにばかり目を奪われて、それに憧れをいだき、こういった本当に大切なことを忘れてしまっているのではないだろうか。
僕はシリコンバレーの起業家が好きな一方で、それ以上に、『1坪の奇跡』の吉祥寺小ざさ稲垣社長や『売れ続ける理由』のさいち佐藤社長が好きだし、二人を心から尊敬している。また、この前、あるパーティーで様々なお話をさせて頂いた、『利他のすすめ』の日本理化学工業大山さんも大好きだ。
そして、伊那食品工業の塚越会長の理念にも、あこがれを抱く。
この4人の方々に共通しているのは、決してブームや一時の利益に踊らせられないということだ。そして、何よりも、社員を大切にするということだ。
その意味で、小説だが、『海賊とよばれた男』の国岡社長(出光創業者がモデル)もそうだ。
大切なことなので、もう一度言う。
そもそも会社は働く人が幸せになるためにできた仕組み。
マーケティングや戦略を考えるのは、まず、この前提をしっかりと根付かせてからではないだろうか。
欧米型の、爆発的成長型を目指す、企業体質というものは、なるほど、爆発的成長期には適合するだろうと思う。
けれども、天井のない利益を求めることに、なんの意味があるのだろうか。
我々は、もう一度、働き方を考えなければならないのかも知れない。
そして、それは同時に、幸せのかたちをそれぞれ考えるということでもある。
もしかして、際限のない、拡大路線をとる方が、よっぽど古臭いことなのかも知れない。
伊那食品工業と塚越社長が取り上げられている、『日本でいちばん大切にしたい会社』坂本光司著(あさ出版)を、改めて読んでみようと思う。
また、新しい発見があるに違いない。
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