コーラに嫉妬した私《プロフェッショナル・ゼミ》
*この記事は、「ライティング・ゼミ プロフェッショナル」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:松尾英理子(プロフェッショナル・ゼミ)
ああ、またコーラの瓶が映ってる。
ああ、またあんなに美味しそうに飲んでる。
通信受講生の私は、画面を通じて授業を受けながら毎回こう思っている。
ライティング・ゼミの内容と同じくらい、私が気になることがある。
それは、三浦さんがあまりにも美味しそうにコーラを飲むことだ。
こんなに美味しそうにコーラを飲む人を見たのは、正直初めてだった。
私と同じように思うゼミ生は多いらしく、受講中にコーラを飲んでいるゼミ生はかなり多くてびっくりする。
天狼院では、もしかするとシェアNo.1ドリンクかもしれないコーラ。
でも、コーラは恐らく、日本では昔に比べて飲む人が減っている飲み物の代表格かもしれない。特に三浦さんが飲んでいる瓶のコーラは、普段は滅多に見かけることがなくなっている、絶滅危惧種のような飲み物になっていると思う。
他の飲料と同じく、ペットボトルがメインになったコーラ。
飲む人が減っているとは言っても、看板ブランドを抱えるメーカーたちは、あの手この手を使って、コーラにもう一度お客さんが振り向いてくれるよう、そして心をつかもうと必死だ。
例えば、味や香りをフルーツフレーバーにしてみたり、ダイエットを気にしている女性達に対してカロリーゼロを打ち出してみたり。生活習慣病が気になる男性向けに、身体にいい機能をいれてみたり。刺激を求める若い世代に向けて、炭酸を強くしてみたり。本当にいろいろな展開をしている。宣伝も、ただテレビ広告を入れるだけではなく、デザイン自体をエリアごとに変えたり、ローカル電車をラッピングしたり、3Dの目立つ街頭広告を入れてみたり、ありとあらゆる策を駆使して、みんながんばっている。
でも、昔に比べて、飲み物の選択肢は本当に広がった。コーラ以外にも魅力的な商品はたくさん出ているし、さらには健康志向の人が増えていることもあり、不健康なイメージがどうしてもついてまわるコーラには、不利なことばかりなのかもしれない。
そんな環境の中だから、お客さんの心を動かそうと思っても、特にコーラに対しては、そんなに簡単には振り向いてくれない、というのが事実。コーラにとっては、本当に難しい市場になりつつある、というのが業界の常識だと思う。
でも、天狼院では日々、コーラのファンが増えているはず。
それも炭酸飲料離れが激しい、と言われる若者たちがこぞって飲んでいるから、尚さら驚きなのだ。
人は子供の頃、常飲しているものを大人になっても引き継ぐと言われている。
私たちバブル世代は、今のようにお茶や水は買って飲むものではなかった時代に育った。買って飲む飲み物といえば、炭酸飲料だった。お誕生日会やクリスマスはもちろん、運動会や学芸会で頑張った時に、ファンタやサイダーを買ってもらい、超ハッピーになれたことを思い出す。
炭酸の「のどごし」は他の飲み物では得られない爽快感がある。昔から飲みなれているからか、私達の世代は、基本、炭酸好きの人が多いと思う。だから飲み会となれば、夏でも冬でも「とりあえずビール」になる。
でも、今の若者は炭酸を飲まないみたいだ。コーラは身体に悪いと思っている人も多い上に、小さな子どもには炭酸飲料を飲ませない家庭も多い。そんな環境で育ってきているからか、大人になってからも、ビールや炭酸が苦手な若者はとっても多いように感じる。
なのに、なのにだ。
天狼院のライティング・ゼミでは、いつもびっくりするくらいたくさんの人がコーラを飲んでいる。
三浦さんがライティング・ゼミの開講日にお話しする内容が、確実に効いているんだと思う。
私が最初にライティング・ゼミを受けた日ももちろんその話を聞いたし、恐らく毎回、開講日に三浦さんはこんな話をしているはずだ。
「ゼミの期間中は、積極的に糖分を取ってくださいね。糖質ダイエットなんてしたら脳が働かなくなります。おすすめはやっぱり、カフェインと糖分が一緒に取れるコーラですね」
いい文章を書くためには、コーラがいいらしい。
ふーん、そうなんだ、とみんなが思う。でも、この時点では、普段コーラを飲まない人にとっては、半信半疑で聞く程度で、飲んでみようとはまだ思っていないはず。
でも、ここからまた心を揺るがす出来事がおきる。
三浦さんは2時間に渡る講義の中で、終始コーラを美味しそうに飲み、熱くしゃべり続ける。講義は一方的ではなく、双方向で時には問いかけてくれる形式で進む。疲れているはずなのに、疲れが一向に見えてこない。その姿には、画面を通してでさえ熱量を感じるのだから、目の前で見ていたら相当な熱気なのだと思う。ここまでくると恐らく半分くらいの人が、「これはもしかすると、コーラ効果かもしれない」と思ってしまうのも無理はない。
結果、後半のワークショップ前には、レジにコーラを求める列ができるようだ。
これってまるで、デパートやスーパーでやっている「実演販売」みたいだ。
「実演販売」は、その商品を売りたいメーカーやデパートの販売員が行うのが普通。
でも、三浦さんはコカ・コーラの社員じゃない。
だから、なおさら説得力があるのかもしれない。
本人から直接薦められ、その後本人によるデモンストレーションが行われる。
オススメが確かなものだったことを目の前で確認できてしまう。
まるで、新種のマーケティング手法みたいだ。
この手法の効果がどれだけ絶大かは、検索画面で「天狼院 コーラ」と検索してみると一目瞭然だった。
「敬遠していたコーラが好きになりました」「また今回も、コーラの力を借りて書いてしまいました」「気がつくとまたコーラに手が伸びていた」「コーラで脳に糖分を送り込み、熱をもった頭をクールダウンしなければかけなくなってきた」など、文章中に「コーラ」という文字が出てくる作品がかなりな数、ある。
ああ、やっぱり。
メディア・グランプリに掲載されているだけでもこんな多いのだから、恐らく相当数の人が、コーラに影響を受け、コーラを素材や題材にして記事を書いているはず。
さらにさらに。
私は発見してしまった。「人生はコーラで変わる」というタイトルの作品を。
ちょっと、これはいくらなんでもすごすぎないか?
メーカーが莫大なお金を投資してCMや広告を投入しても、なかなかお客さんの心をつかめないのに、コーラで人生変わる、とまで言わせてしまうなんて。
そしてもう一つ、マーケティング観点的には面白いことを発見してしまった。
コーラは飲料カテゴリーの中では「炭酸飲料」に分類されているものの、この市場は先にも話したように、なかなか苦戦気味の市場。そんな中、三浦さんはコーラを「炭酸飲料」と言うよりは「エナジードリンク」的に飲んでいる。
エナジードリンクと言えば、市場はここ数年伸び続けている、飲料業界では優等生カテゴリー。
つまり三浦さんは、コーラのポジショニングをジリ貧カテゴリーから成長カテゴリーに変えてしまったともいえる。少なくとも天狼院の中では完全にそうなっている。
私は20年以上、飲料業界に身を置いている。
でも、三浦さんが大好きなコーラを作っている会社には所属していない。
飲料業界に勤めていると、自社以外の飲み物を公の場で飲まないというのが暗黙のルールになっている。別にそんなこと会社に指示されているわけじゃないのだけど、恐らく社員全員がそう理解していると思う。これは私の勤めている会社だけではなく、どこも同じらしい。
そんなのかわいそう、と思われるかもしれないけれど、自社のものばかり飲んでいると、自社以外のものが口に合わなくなってくるからか、自社のものが一番美味しくなるから不思議だ。つまり、飲み物とか食べ物と言うのは常習性があり、なおかつずっと取り続けているとやめられなくなることも多い。三浦さんにとってのコーラも、それと同じなんだと思う。
最初は、三浦さんがコーラをあまりに美味しそうに飲んでいることが、なんだか腑に落ちなかった。
それなのに、三浦さんは毎回毎回美味しそうに、コーラを飲んでいる。
回を重ねるうちに、ついつい、じゃあ私も飲んでみようかなという間違いを起こしそうになる。いや、だめだ。絶対に飲んではならぬ。意地になっている自分がいる。
そして、プロフェッショナルコースの初日。
1ヶ月ぶりにみた三浦さんは、やっぱりコーラを飲んでいる。
当然のことながら、今回もものすごく美味しそうに。
そして、コーラに嫉妬している自分がいる。
私は決めた。
いつか必ず三浦さんに、コーラ以外でも「ライティング」に効く飲み物を提案して飲んでもらおう。
きっと、三浦さんはコーラをやめられないと思う。
でも、もう一つくらい選択肢があってもいいよね、と思ってもらえるようにしたい。
だって、私も三浦さんと同じ飲み物を飲みながら、授業を受けたいから。
嫉妬から解放される日が来ることを願って。
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