トレンドを作るために知っておきたい「未来を読むための6つの方法」《READING LIFE》
危うい企業ほど、「過去」についての議論が多いものです。また、過去のことばかり議論する会社ほど、会議が多いものです。
上司は部下を問い詰め、部下は延々と言い訳をすることになります。
そうすると、部下は上司に言い訳するために、来る日も来る日も、言い訳に使えそうなデータを探します。
そして、その部下は「言い訳の天才」になっていき、新しく何かを生み出す能力が失われてしまう。皮肉なことに、そういった「言い訳の天才」ほど、危うい企業では出世するようになります。
しかし、考えてもみれば、過去を議論するのは面白くないはずです。
本来、会社とは未来を語り合うための場所であったはずです。未来のために何ができるかを考えることこそ、会社の役割と言ってもいい。
もし、あなたの会社が過去ばかりを議論するのだとしたら、勇気を出して、こう言ってみてはいかがでしょうか。
「そろそろ、未来について話しませんか」
とは言っても、未来について、どう語り合ったらいいか、わからないという人がほとんどなのではないでしょうか。
今回は、雑誌Hanako編集部において、ティラミスやアウトレット、海外ウエディングなど、数々のブームやトレンドを作ってきた島田始さんの著書『僕たちはアイデアひとつで未来を変えていく。』(アスコム)から、「未来の読むための6つの方法」を学びましょう。
①自分で未来を創る
未来を読むために最も確実な方法は、いうまでもなく、自分で未来を創ることです。
たとえば、斬新なデザインで人気を博する九州新幹線や、「あそぼーい!」や「指宿のたまて箱」、「A列車で行こう」など様々な観光列車をヒットさせたJR九州は、予算がなく、自由に新しい車両を作れなかったからこそ、アイデアによってそれを補う必要がありました。「ない」という状況は、アイデアを出さざるを得なくなります。面白いもので、はじめは「ない」から仕方なくアイデアで補っていたのが、いつの間にかアイデアを出すことが企業の体質となり、自分たちが新しい未来を創るようになったのです。
②「決まっている未来」がある
調べればすぐにわかる未来が、世の中には無数にあります。
ひとの誕生日は意外に簡単に調べられます。また、オリンピックやワールドカップは4年周期で開催されますし、アメリカの大統領は任期が4年、フランスは5年、ロシアは6年、中国の国家主席は5年と決まっていて、そこが歴史的に大きな節目になる場合もあります。英雄や文豪、偉人の生誕何年、没後何年かも決まっていますし、金環日食が次に北海道で見られるのが2030年、ハレー彗星は2062年に見られることもわかっています。
たとえば、記念行事やイベントを仕掛けたり、引き出物を売り込みたいのなら、周辺にある企業や商店、取引先が創立何年なのか、社長や会長の年齢は何歳なのかを確認しておくと、ビジネスにつながる場合もあります。
③「今でも実際に未来を読んでいる企業」がある
ロサンゼルスの郊外に、「ウォルト・ディズニー・イマジニアリング(WDI)」という研究所があります。しかし、大々的に看板を掲げているわけではないので、そこがまさかディズニーランドのアトラクションを研究・開発、設計している期間だとは気づかない人が多いでしょう。数多くのディズニー本でもこの機関について触れているところはほとんどありませんでした。
それもそのはず。この期間は夢の国を支える裏舞台そのもの、コンピュータのCPUそのものなのです。長らくウォルト・ディズニー社は公開してきませんでした。
ここにはノーベル賞受賞者をはじめ、世界的なレベルの科学者やクリエイター、デザイナーなど一流のスタッフが所属していると言われていて、アトラクションの時代考証などを念入りにする他、実に10年先、20年先の未来を読んで戦略を考えられていると言われています。
④「未来年表」からあなただけの新しい未来を創りだす
これは、②とも関わりがありますが、新聞やインターネットメディアなどから、「読める未来」を日々集積してまとめると、自分だけの「未来年表」を作ることができます。そこには様々なイベントが列挙されるでしょうが、重要なのは、そのイベントに合わせて何ができるかを真剣に考えることです。
ある程度アイデアが出揃い、構想が固まってきたなら、逆算して、どう実現していったらいいか、ロードマップを作成します。そして、そのロードマップも年表に組み込んでしまえば、未来に向かって現実的な明日を歩めるようになります。
⑤「定点観測」から見える未来がある
「マーク」すべき良質な情報源を複数持つようにすると、有益な情報が連続的に集まってきて、未来が見えやすくなります。どんなことをマークすべきかは、あなたがどの業界に所属しているのか、あるいは、どの業界に興味があるのか、によって変わります。
食なら、ニューヨークをマークすべきです。ヨーロッパの都市と比べて、スクラップ&ビルドが可能なニューヨークでは、新しい建築物、新しいレストランが次々にオープンし、しかもニューヨークで流行った食は数ヶ月後、東京でも流行る傾向が昔からあります。
テクノロジーならアップルのWWDC。車ならモーターショー。本ならフランクフルトの世界最大の国際ブックフェア。ゴールドアクセサリーならイタリアのヴィチェンツァ・フェア。インテリア・家具ならミラノのサローネをマークすべきです。
日本では東京ビッグサイト、横浜のパシフィコ、千葉の幕張メッセで行われる見本市や展示会をつねにマークするようにしてください。半年先、1年先の開催予定情報が1冊の小冊子にまとめられて無料配布されています。
また、書店で雑誌や書籍をマークしたり、ソーシャルメディアやブログでその業界に詳しい人をマークするのも重要です。
⑥「社会的要因」から見える未来がある
「未来年表」と同様に、「社会的要因」の表を自分で作成しておくといいでしょう。
「トレンド」と「流行」、「ライフスタイルの変化」、「未来要因」をそれぞれ項目ごとに整理しておき、それぞれの欄のキーワードを組み合わせることによって、未来を導き出します。
たとえば、「トレンド」にはアンチエイジング、クールジャパン、K-POPなどが入り、「ブーム」には塩麹、スカイツリー、タニタの社員食堂などが入ります。「ライフスタイルの変化」にはノマド、草食男子、介護などが入り、「未来要因」には未来年表、オリンピック、周年記念などが入ります。
さて、いかがでしたでしょうか。
最も重要なのは、これら6つのポイントを踏まえて、それを習慣にしてしまうことです。
常に、未来に対してアンテナを張り続けることです。
未来へつながるアイデアは、何も会社の会議室で生まれるとは限らず、休日の散歩道などでふと思いついたことが、むしろ未来を読むことにつながるかもしれないからです。
あなたも、ぜひ、未来を読む習慣を身につけて、新しい未来を創りだしていってください。
*この記事の大部分は、島田始著の『僕たちはアイデアひとつで未来を変えていく。』(アスコム)から引用させていただきました。また、本書には「未来年表」や「社会的要因」の表も収録されています。ぜひ、チェックしてみてください。