働く理由を聞かせて
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:高野いづみ(チーム天狼院)
就職活動を控えた弟に、ある日突然尋ねられた。
「会社って、なんであるの?」「なんで人は働かなきゃいけないの?」
「5歳児みたいな質問かもしれんけどさ……」と前置きされながら。
たしかに子供のような質問かもしれない。
でも、この質問にすっと答えられる大人は、どれだけいるのだろうか。
私たちは、この質問に答えを持って働いているのだろうか。
回答は、人によっていろいろとあるだろう。
生活のため。
家族に苦労をかけないため。
社会の一員である責務を果たすため。
自己実現のため。
目の前に困っている人がいるから。
世の中をもっと良くしたいから。
etc…
きっと、働いている業種によっても、立場によっても様々な答えが出てくることと思う。
偶然にも今日は、大きな地震があった。
災害が起こったとき、その地域にいる人全員が被災者であるにもかかわらず、真っ先に出勤しなければいけない人たちがいる。災害時なのに、災害時だからこそ、働かないと非難される職種がある。
それが、 仕事だから。
はたまた、災害のときには活動を自粛する業界もある。
その人たちがいないと生活に張りが出ないけど、別にいなくても生存にはなにも困らない。人気商売で、人々は簡単にお金を払う対象を移動させていってしまうから、お客さんに合わせてでも人気をとって、嫌なことでもこなさなければいけない。不謹慎と炎上しそうな案件は避けて、邪魔にならないようにしなければ。
仕事だから。
……仕事だから?
わたしは、なんで働いているのだろう。
学校の卒業を前にして、就職活動をしているときに幾度となく聞かれたこの質問。
「あなたが働くモチベーションはなんですか?」
当時はなんて答えてたっけな……と思いを巡らせる。
面接官に、わたしはこう答えていた。
「わたしは、歴史に痕跡を残したいです」
……おっと、だいぶ大きなことを言っていましたね。自分でも思い出してびっくりした。
「自己分析」の結果、そうなったんだった。
就活が訪れるタイミングで、わたしが力を入れていたのは学生団体での活動だった。
活動内容は、「若者へ向けた選挙啓発」。平たく言うと、「若者たちよ、もっとちゃんと投票行こうぜ!」という活動である。なんだか真面目でお堅い活動に聞こえるが、選挙や政治参画に対するハードルをどうにか下げようと柔らかく面白く伝えるために活動していた。
そんな団体で活動していたとき、大きな社会的転機が訪れた。
2016年6月9日 公職選挙法が改正され、選挙権年齢が18歳に引き下げられた。
「2016年 選挙権年齢が18歳に引き下げ」
この文言は、歴史の教科書に確実に載る。
この時に活動していた実績は歴史に残るのだ。私たちが頑張ったことによって投票率が劇的に変わったら、歴史の転換点になったら、活動ごと歴史に残るかもしれない。
そんな状況に立ち会っていることが、プレイヤーであることが楽しくて仕方がなくて、就活そっちのけで専念したいと幾度もミーティングで叫んでいた。自分の未来なんて一旦脇に置いていいから、この時期にこの活動に全力で取り組みたい!! と心から叫んでいた。
だから、わたしがうずうずするほど動きたくなるのは、時間を使って頭を捻らせたくなるのは、「歴史に痕跡を残すとき」だ。
あぁ、思い出した。
これが、わたしの「動く」モチベーション。
実際に社会で働くようになって、現実の条件として加わる要素はあるにしろ、根幹にはこれがある。うん、今でもぶれていない。
弟にようやく答えが返せる。
「わたしのモチベーションは、歴史に痕跡を残すことかな。たまらなくうずうずして、ワクワクする」
「ふぅん。でもそれってお金もらう仕事じゃなくてもできるくない?」
サクッと返された。
お金……確かに、「働く」という要素にはお金を得ることが含まれる。
もちろん自分がワクワクすることをしながら生活のためにお金が稼げたらいいよね、というのはその通りなのだが、それだと仕事は結局生活のためのものでしかなくなってしまう。
なんか……えっとそれだけじゃない気がするねんけど……。
頭を悩まそうとしたときに、はっと思い出した。
大学時代、散々考えたじゃないか。
わたしは経営学部で、「ビジネス」や「お金の流れ」について、そしてビジネスの起こし方を学ぶにあたって「どうやったら人はお金を払うのか」について学んで来た。
「お金は、いつの時代も「ありがとう」を価値にしたものなんだよね」
お世話になったある社長が、教えてくれた。
一見綺麗事のように聞こえるけれど、
貨幣経済が生まれた頃から、「これくれてありがとう」「助けてくれてありがとう」。
「マーケットのニーズを汲み取る」とか「誰の何の課題を解決するか」とか、簡単な言葉に直せば全て「ありがとう」なのだ。
社会を支えてくれて、ありがとう。
大変なときに一刻も早く普段の生活に戻そうと動いてくれて、本当にありがとう。
楽しい思いにさせてくれて、ありがとう。元気をくれて本当にありがとう。
おかげで明日からもまた、ありがとうをもらえるように僕も頑張れるよ!
経済は複雑そうに見えて、案外これで回っていると思う。
会社があるのは、一人の力よりもたくさんの人が力を合わせた方が人を助けられる力が大きくなるから。
「まぁこれはわたしの考えだから、面接官の人にも訊いてみたら?仕事によって結構いろんな答えがあって面白いと思うよ~」
と添えて弟に伝えてみたら、ちょっと就活に興味が出てきたらしい。
さて。
わたしもすっきりしたぞ。
わたしは、ありがとうをたくさんもらって歴史に名を残すために、今日も働くのだ。
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