『ガイアの夜明け』デオデオと提携で町の電気屋さんが年商1億3千万円!《READING LIFE EXTRA》
たった今終わったばかりのテレビ東京系番組『ガイアの夜明け』でやっていたのはこれでした。
「縮小市場をどう生き残る!〜家電量販店の新たな挑戦〜」
何も、これは家電量販店に限ったことではございません。経済はより小さくなっていき、人口も減少へと転じた日本においては、多くの業界が同じ問題に直面しているものと思います。
僕が飯を食わせてもらっている、書店・出版業界も、その例外ではございません。
どこかに希望があるのではないか、と僕はテレビに食らいつくようにして観ておりました。
コジマ電気とビックカメラの提携、そして、ビックカメラとユニクロの意味不明の提携などが取り上げられ、真打ち登場とばかりにヤマダ電機のスマートハウス戦略と、さらには街自体を作ってしまおうという、スマートシティーの建設、および、ベスト電器の積極的な海外への進出などを、やっていたのですが、僕はそこには「希望」は見い出せませんでした。
ヤマダ電機は、年商二兆円から今度は三兆円を目指す、と言われても、「何のために?」と冷めたふうにしか思えないのでございました。
有り体に申し上げますと、これは、長くは続かないな、と漠然とながら思ったのでございます。第一、果てのない成長を目指すというやり方が、あまりに古臭い。
しかし、最後の方に、希望が残されていました。
まずは、古い昔の写真が映されて、「昔は他と一緒の、メーカー特約店の町の電気屋さんだった」というお馴染みの流れ、普通ならば、次に「この小さな店がやがて二十年後には年商2000億円の大企業に成長することになる」、今の画像どーん!、ワオ!!というお決まりのオチが用意されているのだろうと思いました。
ところが、違ったのです。
昔の写真と、まったく同じ規模の、現在の町の電気屋さんが映し出される。しかし、昔と違って、そして普通に思い浮かべる地方の寂れた商店街の電気屋さんと違って、この店は、とても明るくて、小ぎれいで、最新の商品がびっしり詰まっていて、何より、働いている人の顔がツヤツヤしているのでございます。
なんだろうか、これはなんだろうか、と僕は画面に惹き寄せられました。
そして、アナウンスが次にこう言ったのです。
「このお店、親子三人で年商1億3千万円!」
えええええ!!!!!!
ひとりで、アホみたいに絶叫でございます!目が見開いて、鼓動、バックバックでございます!
え、いったい、どういうこと?魔法?違法?地下にバカラ?
と、様々な可能性が頭をよぎります。その中で、ふと目に止まったのが、レジの上の「デオデオのポイント」がどうのという表示。
そう、この小さな小さな町の電気屋さん、デオデオという、全国で第四位の家電量販店グループと提携しているのだという。
このお店の500m圏内に、500圏のお得意さんがいるという。
まてよ、と計算機の登場です。えーと、と僕は計算してみます。
「1億3三千万円だから、1軒あたり、1年で26万円買っていることになる…」
ん? 26万円、なら、それほど難しい話じゃない。
テレビ1台でもそれに近いことになりそうだし、家庭全体でなら、冷蔵後、洗濯機、エアコンなど、毎年、何かしら壊れそうなものだ。
それに、企業が何軒か顧客にいれば、もっと大きな買い物があるかも知れない。
そう、1億3千万円は、まったくもって、まっとうな商売でありえる数字なのでございます。
冷蔵庫が壊れたという電話があって、その電気屋さんの主人がご家庭に駆けつけます。
12年前に主人が納品した冷蔵庫。直すことは不可能、嫌な匂いまで出ている始末。
奥さんも、最初から諦めている様子で、電気屋さんが持ってきたカタログを見て、電気屋さんが「これがいいと思うんですよ、これだとちゃんとはまりますしね」とすすめるのを、うんうんと聞いて、じゃあ、それにするわ、と簡単に商談成立。
驚くのはこれから。
電気屋さんは、すぐにどこかに電話をかけて、商品を確保。向かった先は、家電量販店デオデオの地域の大きな店でした。提携している店は、ここの在庫を使えるのです、しかも、お客様はその大きな店と同じ料金で買えるのです!
「じゃあ、それにするわ」と奥さんが言ってからものの1時間後に、なんと、電気屋さんがそのご家庭にカタログの商品をお届けします。
「おお、入りましたね!」
「あ、ぴったり収まったわね!」
と、ふたりで喜び合っている。
スタッフが奥さんに聞きます、なんで、このお店で買うのかを。
「だって、私たちはわからないでしょ? 新製品が出たって言われたって。でも、この人ならうちのことも知っているから」
なるほど!!!!
そうなのです、人によっては、価格よりも重視すべきことがあります。
どこかの田舎の電気屋さんで、これとは違って定価販売でも、バリバリプラズマテレビを売っていた、というお店があったと、前になんかのテレビでみた覚えもあります。これも、一緒ですよね、家電に詳しくない人にとっては、新製品やスペックというのは、もう外国語と一緒です。チンプンカンプンです。
それなら、ちょっとばっかし高くったって、知っている電気屋さんに聞いたほうがいい。うちのこともわかってくれているし。
そうなるのも当然ですよね。
なぜ、僕はここまで、電気屋さんについて、熱く語るのか。
それは、この話には、書店業界の「希望」が隠れているのではないかと思っているからなんですね。
町の電気屋さんから奥さんが買ったのは、冷蔵庫です。そして、それだけではないんですね、「情報」を買っているのです。
価格ドットコムや、都市部の大きな家電量販店では提供してくれることのない、そのご家庭に本当に合うかどうかという、実に「コア」な情報を、電気屋さんは提供しているのでございます。
ここに、僕は「希望」があるように思えてなりません。
そして、ふと、思うのです、やっぱり、Amazonってすごいよね、と。
だって、過去の購入履歴から、「次はこんなの欲しいんじゃないんですか?」と提案してくる。しかもそれが最近は「なんでわかったの!?」と画面に言ってしまいそうになるくらいのとてつもない精度でございます。
しかし、Amazonにできなくて、リアル店舗にしかできないこと、僕はこのテレビを観ているうちに思いついちゃったんですねー笑。
ま、教えてあげませんけどね、企業秘密なんで笑。
てか、いや、ここまで手の内明かしちゃっていいの?お前が本屋開くときに、みんなに全部真似されちゃうよ、と心配してくださる方がいるかも知れませんが、心配、ご無用でございます!
それはなぜかと言えば、最先端の営業戦略を取り入れている、とある版元の営業担当の取締役の方が、前に僕にこう言ったことが答えになると思います。
「明かしても大丈夫なんですよ、教えたところで、実際に行動に移すところはほとんどありませんから」
その穏やかな笑顔が印象的でした。
たしかに、結構オープンにしているのに、そこの営業戦略を真似しているところは一社もありません。
と、いうことで、僕が東京天狼院さえオープンしてしまえば、失敗しながらも、みんなが見たことも聞いたことのないような様々な新戦略を、次々に投入していきますので、普通に考えて、追いつけないだろうと思います。
これからは、きっと、小回りが勝敗をわける時代になるだろうと、僕は確信をもっております。
いやー、楽しみになってきましたねー!
絶対に、来年の8月に「東京天狼院」オープンさせるぞ!おう!
と、新たな決意を秘めつつ、さ、明日も早いんで寝るとしましょう!
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