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日本史上最強のゴッドファーザー『平清盛』《READING LIFE EXTRA》


今年の大河ドラマが始まる前、NHKの何かの番組で、こう紹介されていたのを見たように覚えています。

 

「平安のゴッドファーザー平清盛」

 

平安のゴッドファーザーとは、やばい。

何せ、僕は映画『ゴッドファーザー』がとてつもなく好きなのであります。

これで一気に観る気になりました。

今調べてみると、『平安のゴッドファーザー平清盛』という本も経済界さんから新書で出ているんですね。おそらく、この著者の加来耕三さんが、特番か何かに出て言っていたのではないでしょうか。

 

ともあれ、清盛。

 

どこかの知事さんが、『平清盛』が始まってから、「薄汚れた画面」などと批判しておりましたが、全くのナンセンス。というか、あの方、自分が「良さがわからない」ことを公言しているようなものでしたよね、今思えば。

今回の大河ドラマ、とてつもなく丁寧に作りこまれております。

そりゃあ、明るくすれば、いいようにも思えますが、そうすると安っぽくなって、興冷めしてしまう部分があるんですね。

特に、大河ドラマののっけの方は、伊東四朗の「もののけ」っぷりがひとつのポイントになっていたので、明るくする必然性がまるでない。

また、日本の皇室をここまで真正面から、しかも、生身の人間として描いた作品は、未だかつてなかったのではないでしょうか。

なんとも、絢爛豪華。平安時代、日本に君臨した王家の様子が、実に綺羅びやかに描かれておりました。

また、そればかりではなく、清盛の父親忠盛役を演じた、中井貴一が半端なくかっこ良かった! 三上博史の鳥羽上皇の乱れっぷりもよかった! 崇徳天皇の憂鬱とした怪しげな美しさと、その後の怨念に身を滅ぼされた時のギャップも凄まじく良かった!

そして、何より、出家してからの、まさに平将門のゴッドファーザーっぷりがたまらなくいいのです。

武士の出自ながら、王家をほしいままに操り、平家に背く者があらば、ナチスの親衛隊隊長のような時忠に命じて、以後、そむけないようにしてしまう。

まさに、平安のゴッドファーザー!

もしかして、平清盛は日本史上最強のゴッドファーザーだったのかも知れません。

でも、なんで、視聴率がとれないと言われているんだろうと、不思議に思いもしますが、わからない人にはべつに、永遠にわかってもらえなくともいいのです。

視聴率が全てではなく、NHKさんにはこのまま最後までこの高い完成度のままで突っ走ってもらいたいのです!

いやー、近頃にないほどにゾクゾクするほどの面白さです!

 

ちなみに、なんで、これまでは平家の人たちは悪者みたいに描かれていたんでしょうか。

司馬遼太郎さんは、生前、「日本に天才がいるとすれば、源義経と織田信長だ」と書かれていましたが、スケール感からいっても、この平清盛こそが天才だったのではないでしょうか。

厳島神社しかり、大輪田の泊しかり、中国との貿易しかり。

そして、武士こそが実験を握るべきだという考えもしかり。

考えてみると、源頼朝など、何をやったんでしょうね。清盛にくらべると、何もしてないように思えます。

ただ、軍事的超天才の義経がいたから、あんだけの大勝利を得られたような気がしますし、嫉妬やら嫁さんの尻にしかれるやらで、何だかぱっとしない印象しかない。

きっと、あの『平家物語』の影響力というのが凄まじく、諸行無常の響きありのあの冒頭の、日本語の音韻の極みともいうべきで、日本人のほとんどはサブリミナル的に打たれ、ああ、平家憐れ、やっぱり源氏だよね、みたいになってしまう。もしかして、あのとてつもない、実際には誰が書いたかすらもわからない一冊の本が、我々の脳を千年にも渡って洗脳し続けていたのかも知れませんね。

今こそ、平忠盛、清盛親子の業績を見直すべきなのではないでしょうか。

もしかして、視聴率が悪いというのも、実は源氏の陰謀?みたいに考えてしまうほどに、今は清盛ファンでございます。

平家滅亡以降、武士の時代が、ついこの前の明治まで続くんですが、壇ノ浦後はほとんど源氏の時代といってもいいですよね。

源氏直系の鎌倉幕府はもとより、室町幕府の足利氏も源氏の系譜であり、織田信長なんかは平家にしようかな、でも、元々は織田劔神社の神官の出だしな、なぞと悩みましたが、徳川も結局は源氏の血を引いてるよ、みたいなことになって、つまりは源氏の世の中だったんですね、ずっと。ま、戦国武将の武田氏なんかもバリバリの源氏ですしね、信長をやっつけた惟任日向守光秀なんかも源氏ですよね、たしか、土岐源氏とつながりがある。例外的に秀吉は百姓の出だったんで、源平藤橘に次ぐ新たな姓、豊臣をむりやり作っちゃうという蛮行まがいなことに走りますが、まあ、付け焼刃は長くは続きませんよねー。

ちょっと、壇ノ浦まで戻ると、考えてもみれば、義経って本当はひどいことをしているんですね。いや、僕は東北出身で平泉びいきだから小さい時から義経が好きだったんですが、まさに判官びいきですが、やっぱり考えざるを得ない。

二位の尼に抱かれて飛び込まれたにせよ、やっぱり現役の王、安徳天皇を死なせてしまってはまずかったのではないかと。

あそこまで追い込む必要は本当にあったのでしょうか。それは、たしかに、親父の義朝が殺されたってことはあったんだけど、そもそもクーデターを起こしたのは、義朝の方でしたよね。

ま、それから平家というのは、何か、不当なほどに日本人に嫌われた感があります。これは東日本だけなんでしょうかね。

平家の落人の里とか、怨念とか、とても暗くじめじめしたところに追い込まれたように思います。

平安貴族の描き方も、今までは歌ばかり詠んで何もできない種族みたいに、どちらかと言えば、ひどい描かれ方をされてきたような気がしますが、今回の大河ドラマ、その常識をくつがえす、痛快な作品だったのではないでしょうか。

観ていない人、やばいです。今からでもいい、観たほうがいいです!DVDになったら、ソッコーで借りて観たほうがいい。

あれは、NHK大河ドラマの中では、世界の渡辺謙の出世作となった『独眼竜政宗』レベルのとてつもない作品だと思います!

しかし、これ、どうランディングさせるんでしょうね。

平家の滅亡は決まった史実ですし、源氏の頼朝や義経なんかも育ってきてますし、あ、やっぱり、あいつが弁慶だったね、的なことにもなってますし。

ともあれ、今後も『平清盛』、本気で楽しみです!!!!

 


2012-10-02 | Posted in READING LIFE, READING LIFE EXTRA

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