NHKスペシャル『がんワクチン〜夢の治療薬への格闘〜』について真剣に考える/『がんワクチン治療革命』中村祐輔著《READING LIFE EXTRA》
*『がんワクチン治療革命』中村祐輔著(講談社)12/6ついに発売です。
ありがたいことに、僕は今、健康である。
健康であるからこそ、こうして毎日目一杯仕事をさせていただいている。
それが、根底から崩れたとしたら、いったい、どうなるだろうか?
また、それは僕自身に限ったことではなく、僕が大切に想う人々にも起こりうることで、考えてもみれば僕の父方の祖父は質の悪い悪性脳腫瘍で僕が幼稚園の時になくなっているし、幼い頃から僕をかわいがってくれていた親戚のおばさんも僕が中学二年生の時に乳がんでなくなっている。
これは、飛び抜けて際立ったことではないだろうと思う。あるいは、もっと近しい人をがんで亡くされている方も多いだろうと思う。また、現に今がんと闘っている方もおられるだろうと思う。
なぜなら、番組でもあったように、今やがんにかかる人の割合は、2人に1人にまでなっているからだ。
大変残念な話ではあるが、つまり、今健康な僕も、あなたも、決して他人事ではない。
しかし、今、ひとつの希望が生まれようとしている。
それが、今回、NHKスペシャルで放送された「がんワクチン」治療である。
今まで人間は、がんに対して、外科療法(手術)、放射線療法、化学療法(抗がん剤)という3つの武器しか持っていなかった。そして、4つ目の武器として新たに手にするのが、この「がんワクチン」治療である。
ただし、これはまだ確立した治療法ではないということを、まずはしっかりと認識しておく必要がある。簡単に言えば、実験段階にある。ただし、実験段階といっても、もう実際に人間に投与して効果を試す「治験」の最終段階に入っている。また、アメリカではいち早く、二年前に前立腺がんのワクチンが認可されて実際に使われている。
つまり、希望の光は少しずつではあるが、確実に強くなっていると言えるだろう。
さて、その「がんワクチン」治療法とは、いったい、どういうものだろうか。NHKの番組は図解もあって、実にわかりやすかった。けれども、あの番組を観た多くの方がそれ以上に知りたいと思ったのではないだろうか。
ここに、一束の原稿がある。
まだ、本の形をしていない、改稿作業が今なお現在進行形で進んでいる原稿だが、ほぼ、形になっている。
著者は、この番組でも第一人者として紹介された、中村祐輔東京大学医科学研究所特任教授(シカゴ大学医学部教授)である。
これは12月上旬に講談社さんから発売が予定されていて、いち早く、読ませていただいているのであるが、僕はこの内容に衝撃を受けた。
このことを最近まで知らなかったことに、大きな危機感を抱いたのだ。知っているのと知らないのとでは、もしかして、人間の運命も変えてしまうものなのかもしれない。
この本で、中村さんはがんと戦うことをあきらめるなと述べている。
序章において、「難問に挑むには、よい武器、よい軍隊、すぐれた戦略が必要だ」とした上で、「がん」という難問に挑むのにも同じことが言えるとして、次のことを挙げている。
よい武器とは、予防・予知を含めて、最新の正しい知識。
よい軍隊とは、あなたを支えてくれる医師や家族や仲間。
すぐれた戦略とは、希望を持ち続けること。希望こそ、私たちの最大の武器です。
まさに、我々は、まずは正しい最新の知識を得なければならないのだろうと思う。それをもたらすのが、この本だろうと思う。
たしかに、まだ確立された治療法ではない。けれども、この「がんワクチン」治療法は、患者さんや家族の希望となり得るものである。
それでは、がんペプチドワクチン療法とは、いったい、どういうものだろうか。
本文の第二章の記述を引用してみよう。
がんペプチドワクチン療法を、ひとことで言えば、免疫力を高めてがん細胞を殺す治療法、つまり免疫療法といわれるもののひとつです。
この仕組は実に巧妙で、がん細胞にはペプチドという目印になるものがあり、これをめがけて、キラーT細胞という免疫軍の部隊が撃滅に向かうのであるが、そのがん特有のペプチド(目印)を、まずは大量にワクチンとして注射する。すると、体内の免疫軍が「非常事態発生」のアラームを高らかにならし、大量にキラーT細胞が発生し、そのペプチドを持つがん細胞を撃滅させてしまうという方法である。
これまでの免疫療法だと、目的もわからない軍隊を大勢に投入していたのであまり効果は見られなかったが、このペプチド療法は違う。
懸命に免疫の目を逃れようとするがんを発見し撃退するよう特別に訓練された特殊部隊。
なのである。
詳しくは、ぜひ、12月上旬に講談社さんから発売される『がんワクチン治療革命』(中村祐輔著)を読んでいただきたい。これによって、最新の医療現場で何が起きているのか、よくわかるはずである。
僕はこの本がより多くの読者の皆様のお手元に届けられることによって、「世の中の流れ」が変わるのではないかと真剣に考えている。
日本は、アメリカに比べると、治験に対するサポートが十分ではない。それなので、アメリカに比べて認可が遅くなっている。
その現状を打破するためにまず必要なことは、多くの人に正しく新しい治療法の可能性について、知ってもらうことだ。
そのためには、この本をより多くの人に読んでもらう必要がある。多くの人がこの本を読むことによって、「治験に対して支援をしてほしい。早く製品化してほしい」というより多くの声が、より高らかに上げられることになるだろうと思う。
僕がCORE1000プロジェクトの対象作品としてこの本を選ばせて頂いたのは、その可能性を信じるからだ。
この本を売ることによって、世の中の流れが、もしかして変わるかも知れない。それは要するに、我々書店人は、世の中の潮流を変える可能性を持っているということだ。
毎年、70万人にも及ぶ人が新たにがんを患うという現代、これは決して他人事ではない。
僕の問題であり、そして、あなたの問題である。
ただし、ただ悲観するだけではなく、やるべきことはたくさんある。
まずは、正しい情報を身につけること。それが重要なことなのだろうと思う。
読者の皆様におかれましては、ぜひ、12月上旬に発売される『がんワクチン治療革命』中村祐輔著(講談社)を読んでいただきたいと思います。
そして、書店人の皆様におかれましては、この本をより多くの方に届けるために、力をお貸しいただきたいと思います。それ以前に、まずはご自身でも読んでいただきたい。きっと、「より多くの人に読まれなければならない本だ」と気づかれるはずです。
ちなみに、この作品を編集したのは、『僕は君たちに武器を配りたい』(瀧本哲史著)や『ザ・ラストバンカー』(西川善文著)、『海賊とよばれた男』(百田尚樹著)など、数々の名著を世に送り出してきた加藤晴之氏です。
*『がんワクチン治療革命』中村祐輔著(講談社)12/6ついに発売です。
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