複業歴10年の彼から学んだ、サラリーマンの僕が複業を始めようとしたきっかけ
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:岸本 泰之(ライティング・ゼミ夏休み集中コース)
当時、彼は入社8年目のサラリーマンだった。
仕事はある程度楽しく、成果も少しずつ出始め、業務も任されるようになってきた。部下もできた。そして、生活できる給料も保証されていた。
ただ、彼には仕事以外でやりたいことがあった。その秘める情熱を温めてきた。
ある日、彼は労働組合に足を運んだ。
「自分の建築設計事務所を立ち上げたいのですが可能ですか?」
とても真剣に、真正面から聞いた。
「当社は副業禁止です」そう返ってくるかと思っていた。
その際は泣いてでも、土下座してでも懇願しようと考えていた。
でも、言われたのは
「儲けなければ良いんじゃないかな」
もちろん副業は禁止されている。でも何かしらやりようはあるんじゃないか。
というアドバイスだった。
そして彼は複業を始めた。
複業を始めたときから彼はこう言っていた。
「ここでの活動を会社の仕事に役立てる」
この言葉が複業を体現していると思う。
彼の日常の生活パターンはこんな感じだった。
仕事を終わると、複業に向かう。仕事は定時で帰れる時期もあったし、午後11時を過ぎる時期もあったが、ほぼ毎日、自分で借りている事務所に通っていた。
終電近くになって家に帰り、翌日の準備をして寝る。翌朝起きて会社に行く。
考えてみると、みんな小さいときから同じようなことをしているのではないだろうか。
学校の授業の後は、毎日部活に行き遅くまで練習をしていたり、習い事に通っていたり。
学校に通っていたのが、会社に通うようになっただけのように思う。
サラリーマンの僕の周りにも
バンド活動をして、半年に1回はお金を取ってライブをする人がいた。
好きなアニメのブログを書いて、そこで広告収入を得ている人がいた。
得意のマラソンの大会に出場して、ときどき賞金を獲得する人がいた。
そして彼は建築の設計をしていた。
彼に建築の設計で直接的な収入があったかどうかはわからない。ただ、彼は会社を辞める気はなかった。おそらくは、会社を辞めて独立することも検討したと思う。しかし、彼はサラリーマンをやりながら複業を極めていく道を選んでいた。
彼はサラリーマンで複業を行うメリットを理解し、最大限に活かしていた。
個人事業主や経営者と話をするとよく言われるらしい。
「覚悟が足りない」
その通りだと思っていた。
「来月注文がなかったら不渡りを出して倒産する」
「従業員にお給料を払わないと、彼らも路頭に迷ってしまう」
「今晩、食べるものすらない」
サラリーマンの複業ではそんなことは起こらない。
だからこそできることがある。
アクセルを目いっぱい踏める。複業で失敗しても給料は入ってくる。
一方で、サラリーマンの複業だからこそ気にした方がよいところもあった。
彼は、自分の事務所を立ち上げられるかどうか聞いた。
聞かれた側は、会社の規則に「出来ない」と決められていることを、「あなただけ特別に……」とは言えない。「それだったら大丈夫」という落としどころを持って相談しに行くべきだったと反省していた。
「規則の範囲内なら協力的なことも多かった」とも言っていた。
「俺も写真で食っていきたかったんだよ」と共感してくれることもあったということだ。
逆に判断する側だったら、彼が相談しに行ったときにアドバイスをくれた担当者のように、何かしらの可能性を与えてあげてほしいと思う。
彼の場合は「儲けなければいいよ」というヒントをもらった。
彼はボランティアという立場で複業を始めた。
彼の友達が代表で、彼が共同設立者兼無償ボランティア。
名刺には肩書は書かれていなかった。
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活動を続けていると、他の社員から家を建てるときに相談の声がかかるようになった。
さらにその後には、自分の複業の能力を活かして会社で建築に関係する事業を立ち上げた。宣言通り、複業での活動を会社の仕事に役立てた。
そのときの彼はとても活き活きとしていた。
僕は思った。複業は化学反応のようなものだと。
Aという物質とBという物質が反応して別のものが生まれる。
本職での能力と複業での能力が反応したときに新しい能力が生まれる。
さらに言うと、サラリーマンの複業は化学反応の中でも、電池のようなものかもしれない。
例えば、レモンに2種類の電極を刺すと電気が発生する。
会社(レモン)において、仕事上の彼の能力(電極1)と、複業の彼の能力(電極2)によって新しい事業(電気)が生まれた。
サラリーマンであるということは、2種類の電極を刺すレモンがあるということだ。
彼が複業を始めたのが10年前。いまはその時よりも格段に複業がしやすくなっている。
会社によっては複業を推進しているところもある。
自分の好きなことや得意なことを極めていける。
社外に向けても社内に向けても活用することができる。
そして、複業が失敗しても給料は払われ続ける。
もはやメリットしかない。
会社の制限は確認しつつ、僕もまずは始めてみようと思う。
ちなみに、いま、僕は「天狼院書店ライティング・ゼミ」という講座でこれを書いている。
これを受けている人の中にも、会社に勤めながらライティングに関して秘める情熱を持っている人がいるかもしれない。そういった人が読んでくれていたらとても嬉しい。
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