チーム天狼院

「11代目秘本」は、10年前の恋を思い出させた。


*この記事は、「ライティング・ゼミ」を受講したスタッフが書いたものです。

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記事:松下広美(チーム天狼院)

そんな出合いが、まだあるなんて思ってなかった……。

出合いの経験は、そんなに多いとは思っていない。

経験が少ないとはいえ、それなりに歳を重ねているので、見たり聞いたりしている出合いも多い。

見聞きしたものと、経験したものを合わせれば、ある程度の出合いは網羅できると思っていた。だから、そんなに驚くことはないと、思っていた。

でも……。

10年くらい前のことだろうか。

会社の同期と、

「Sさんに会わせたい人がいるんだよねー」

と、会社の先輩であるSさんに会わせたい人がいるという話をしていた。

「じゃあ、紹介すればいいじゃん」

「いやいや、あからさまな「紹介」はしたくなくって。だって、そうしたらいきなり構えちゃうし」

同期の言うことは、確かに、と思えた。

「だからさ、軽い飲み会、って感じにしようと思ってたんだけど、なかなかみんな予定合わなくて」

「Sさんの予定は聞いたの?」

同じ部署だった、Sさんのシフトを思い出す。

「聞いたよ。それで、来週の土曜日にしようかと思ったんだけど、みんなラストまで入ってるらしくて、行けないって」

ラスト、というと日付が変わるくらいまでの仕事だった。

「その日、私、休みだよ」

自分のシフトを思い出して、そういえば休みだったな、と思った瞬間に言葉が出ていた。

「え、そうなの! じゃあお願い!」

「わかった。またお店とか時間とか決まったら教えて」

普段なら、ちょっと考えて、どんな人が来るか聞いてから「参加する」って決めるはずなのに、なぜかこのときは考える前に、決めた。

そのときの飲み会は、盛り上がった。

男女3人ずつ集まった飲み会だったが、盛り上がったといっても、付き合っちゃいなよー! なんていう、コンパ的な盛り上がりではない。

ずっと前から知っている仲間たちが集まったような、近所のおさななじみの友だちとの、いつもの飲み会のような、落ち着いた盛り上がりだった。

だから、同期と同期の彼氏を除く、4人で旅行に行くことになったのは、自然の流れだったんだと、思う。

旅行でも、飲み会のときと変わらず、楽しく盛り上がった。

帰ってきて、楽しかったな、って思い出した。

思い出していて、気づいた。

好きになった……かも、と。

恋に落ちる、とはよく言うけれど、「落ちた」と思った。

でも、深く深く落ちたわけではなくて、ちょっとした穴につまづいたくらい。

「かも」と思ったのは、「好きになった」ということが、信じられなかったから。かっこいい、とか、めちゃくちゃいい人、だとか、好きになった要素がよくわからなかった。

この人のこういうところが好きって言えたらよかったのだけど、「恋をしました!」と叫べるほどの熱量はなくて、「好きになった、かも」というくらいが気持ちを表すのに、ちょうどよかった。

恋に落ちたときの出会いって、月日が経っても覚えているものだなって思った。

初恋の人との出会い、

初めて付き合った人と出会い、

報われない片想いのときの出会い、

そして、10年も前の出会い……。

そんな10年も前の「出会い」を思い出したのは、

新たな「出合い」をしてしまったからだ。

今までにいくつか、出合ってきた。

いつも私を興奮させてきたけれど、もうこれ以上はないだろうと思っていた。

今までは、本当に突然だったけれど、今回は前もって知ることができた。

パソコンで作業をしていたときだ。

画面の右上に、お知らせの表示が出た。

作業に集中していたけれど、「ん?」という違和感があったので、作業を中断してお知らせを開いた。

「秘本、決まった」

店主、三浦からの秘本のお知らせだった。

10代目までは、お客様として知らされてきたので、突然記事が出て「おお!」と興奮をした。すぐにでも知りたい衝動に駆られ、発売日まで心待ちにしたのを思い出す。

スタッフになって初めての「秘本」の知らせ。

こんな感じなんだと思った。

「あれ?」

で、秘本って何?

どうも、現場にいたスタッフは知らされたようだけど、名古屋という遠隔にいた私は、「で、何?」となった。

結局、届くのを待つしかなくて、秘本のことは忘れていた。

ある日の朝。

いつもより多いダンボールが届いていた。

こんなに発注したの誰だよ、と思いつつ、箱を開けた。

え? なに?

どの箱を開けても、同じ本が出てくる。しかも、パンパンにダンボールに詰まっている。

あ、まさか……。

「これ、秘本?」

写真を撮って、「秘本、決まった」というお知らせが届いたのと同じところに流す。

「そうです!」

と、返ってきた。

これが秘本か。

開店前の店で、パラッとめくる。

まだ、こんな出合いがあったんだ……。

11代目秘本と出合って、人との「出会い」を考えた。

感じは違うけれど、本当に同じだなって、改めて思った。

人と出会いの瞬間を全部は覚えきれないけれど、恋した人との出会いは、案外、覚えている。

本との出合いも、全ての本と出合った瞬間なんて覚えていないけれど、本当にステキな本と出合ったことは忘れられない。

秘本は毎回、「素敵な出合い」を届けてくれる。

11代目秘本も、そんな「素敵な出合い」になった。

***

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2021-01-25 | Posted in チーム天狼院, チーム天狼院, 記事

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