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チーム天狼院

本音よりも「読者にウケそうな言葉」を探してしまう創作活動「負のループ」《川代ノート》


 

【2021年10月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜《9/1(水)までの早期特典あり!》

 

記事:川代紗生(天狼院スタッフ)

 

長いこと文章を書き続けていると、ときどきこういうことが起こる。いや、ときどきじゃないかも。毎回かも。すいません。まあとにかく、毎日毎日いろんな文章を書き続けていると、つい「うまいこと言おうとしちゃう」問題が出てくる。こういう悩みって私だけじゃないようで、最近ライティング・ゼミの受講生の方々からもちょくちょく相談されることがある。なんかわざとらしくなっちゃうんですけど……みたいな。そうなんですよね。この問題って解決が結構難しいんですよ。

 

自分の思いを伝えたい、自分の頭のなかにあるものをうまく言語化できるようになりたい。そう思ってライティング・ゼミに来たり、文章の本を読んだりして訓練をする人は多い。もちろん私もそのひとりだ。日々「どうしたらもっと伝わるだろう」「どうしたらもっと読みやすくなるだろう」「どうしたらもっと面白いと言ってもらえるだろう」と、うんうん唸りながら考えている。夏目先生やら谷崎やら太宰やら、文豪たちの小説や随筆を読んでは「こういう文章を書けるようになりたいなあ」と、自分の能力の無さに愕然として歯痒くなったりもする。

 

で、そうして「もっと伝わる、もっと読者を楽しませる文章を書きたい」と強く願いながら書き続けていると、つい「うまいこと」言いたくなってしまうのだ。これはある程度仕方のないことじゃないかと思う。読者の心にグッと刺さるパンチライン。決め台詞。女子高生が満員電車で迷惑行為をするおじさんに啖呵を切るがごとく、かっこいいワード・かっこいいセリフ・かっこいいフレーズや言葉、表現を入れたくなってしまう。

 

もちろん、読者に刺さるかっこいい表現を入れることはなんら問題ではない。間違っているわけでもない。むしろ、そんな表現を入れようとしているということは、「読者を楽しませたい」というサービス精神がある証であって、喜ばしいことだという捉え方もできる。

 

ただ問題なのは、「なんかわざとらしいんだよな」と心の片隅で気がついているにもかかわらず、そのちょっとした違和感を無視して「かっこいい言葉」を優先してしまう場合である。いやー、これね、私もよくあるんですよ。やっちゃうんですよ。とくに、頭がちゃんと動いてなくて自分に酔う可能性が高い深夜の時間帯に書いた文章なんかは、十中八九そうなる。だから、翌朝になってから冷静に冴え切った頭でそれを読み返して「あー、なんでこんな気取った表現入れてんだよ私キモッ!!」とツッコミを入れながらサクサクと削っていったりする。

 

で、今回このテーマについて書くにあたってそういう「うまいこと言おうとしちゃう」ときの私を振り返ってみたのだが、おそらく「目的」と「手段」が入れ替わっているのが原因じゃないかと思うのだ。

 

そもそも、つい「うまいこと言おうとしちゃう」現象発生までにどんなルートを辿るのか、分解してみようと思う。

 

【フェーズ①】文章を書き始めたばかりのころ。書き慣れてないなりになんとか伝わるように書こうともがきながら書く。これまでの人生で蓄積していた「アウトプットしたいな」「誰かとこの思いを共有したい」という欲求が溜まりに溜まった結果書き始めたためか、しょっぱな書いた文章にものすごい熱量がこもり、結果的にかなり面白い文章になったりする。「こんなに文章うまかったんだね!」と周りから褒められて調子に乗る。

 

 

【フェーズ②】書く習慣ができてしばらく経過。最初の数回は楽しく書いていたはずが、徐々に自分の思いを吐き出すだけでは物足りなくなってくる。アウトプットの回数を重ねるごとにネタも尽きる。フェーズ①で書いた文章はビギナーズラックだったんじゃないかという不安に苛まれ始める。あのはじめて書いたときの興奮をもう一度! と熱量の火種をほじくり返してもう一度業火に育てようとするものの、なかなか復活しない。焦る。

 

【フェーズ③】それでもなお書き続けようといろいろ試行錯誤した結果、徐々に安定感が出てくる。自分の得意分野も見えてくる。書き慣れてきたおかげか、読者に読みやすい文章がどんなものなのか、ある程度わかってくる。が、「この人は文章書いてる人」としてSNS等でも認識されはじめ、徐々に褒められる回数も減る。焦る。承認欲求が満たされずむしゃくしゃする。

 

 

【フェーズ④】徐々に「目的」と「手段」が入れ替わる。本来「伝えたいこと」があったから「書く」という武器を磨いていたはずが、気がつけば「持て余した承認欲求をなんとかすること」が目的にすり替わる。結果、本音よりも「読者にウケそうな言葉」を探すようになり、「本音の偽造」をする羽目になる。

 

 

……なんか書いてて辛くなってきたな。うーむ、まあ私の場合はこんな感じ、というだけなので書く人全員にこれが当てはまるとはもちろん思わないが、こういう人多いんじゃないかなあと思っている。というか願っている。そうだよな!? みんなこんな感じよね? 私だけじゃないよね?

 

まあつまり、「本音でしゃべってますよ」という体で書いてはいるが、それは本音ではなく「こういう本音を言えば好きになってもらえそう」という下心万歳の建前なのだ。

 

でも自分では本音を書いているつもりでいるから「なーんか違うんだよなあ」というちょっとした違和感だけが残りつつ、結局「偽りの本音」に合わせて自分の言動を無意識のうちに変えようとしちゃったりして、生活のすべてが「みんなにウケること」に支配されたりするんだよね。すげえ苦しいんだよな、あの負のループ……。

 

もちろんアウトプットすることによって行動に変化が起こり、結果的に自分自身を成長させてくれて……というように「正のループ」が発生することもある。だから、本音で話さないこと全部を一概に「悪い」と捉える必要もない。「人に届ける」ことを前提に書く以上、やっぱり「どうすればウケるか」という視点を失うわけにはいかないし。

 

ただ、触ったら一瞬で火傷しそうなほど強い熱量を持ったガチの「本音」で語られている文章には、「偽りの本音」は勝てないよなあと思うのだ。やっぱりどう頑張っても、あのビシビシとしたものすごいエネルギーと比べたら霞んじゃうよ。

 

「全盛期の自分に勝てない」みたいなことを文章に限らず音楽でも映像でも写真でもアートでもスポーツでもビジネスでも、いろんなところでよく聞くけれど、それっていうのは分解するとこういうことなんじゃないのかなあ、と最近よく考える。

 

自分の本音と、他者からの目線。

その二つに挟まれたとき、どちらを優先したらいいのかわからなくて苦しくなる。かといってじゃあ自分の好き勝手にやろうと思っても、やっぱりオナニー的な自己満足の産物で終わってしまう。だったら読者に奉仕しまくればいいんかというと、そういうわけでもない。あくまでも読者が読みたいのは、読者の心に深く響くのは創り手の本当の姿であって、あー、本当は気持ち良くないのに気を遣って喘ぎ声だしてくれてるんやなあ的な「演技感」や「ほれほれ、これがええんやろ」的驕りが見えてしまうと一気に興醒めする。

 

だからもー、本当に難しいよねこれは! 私も自分が読者の立場に立ったときのことを想像すると、ムカつくくらいわがままだなこいつと思うもん。自分だけが気持ち良くなるのはキモいからやめて。ちゃんとあたしのこと悦ばせてね。あ、でもあなたが本気であたしのこと好きっていう愛情が伝わるように熱中はしてね。けど熱中しつつもあたしが悦んでるかどうかを客観視できる冷静さも忘れないで。

……みたいな! いやどこのめんどくさいメンヘラ女だよと(いや本当に私はメンヘラ女なんだけど)思うんだけど、いつでも作品を読むのをやめる権利を持っている「読者」の立場にいる限り、私はマジでそれくらいわがままなのだ。

 

だから結局、「読者」の立場に立った人間は「見たことのない熱量」や「はっとさせられるくらいの本音」を、「プロフェッショナルのスキル」できれいにコーティングされた状態で出してほしいんだろうな、と思う。ほどほどに触れる状態に美しく整えてほしい。でも「これくらいにコーティングしときゃあみんな面白がってくれるでしょ」みたいな下心や嘲りがちょっとでも出るとダメ。

 

もーさあ、本当に難しいよね。どうしたらいいんだよと書き手としても読み手としても思うし。なんでこんなに読者って厳しいのと思いつつ、そういうシビアな人たちの期待をこそ越えられるようなものを書きたい、とも思うしさ。

 

……とまあ、いろいろ考え出すとキリがないんだけど、いずれにせよ常に自分の本音を問い続ける努力は必要だよなと思うのだ。やっぱり自分が心の奥底にしまっておいた本音やら性癖やらを、本当なら誰にも伝えるつもりのなかったはずのものを多くの人と共有できるのが文章の、創作の面白いところだと思うし。ずうっと遠くにいる、関わることのなかったはずの人と創作を通して繋がることができる。これ以上面白いことってほかにある? いやー、こんなに面白いもの、探してもなかなか見つからないよ。これから先の人生でこれよりも面白いものが見つかったらめちゃくちゃラッキーだなと思ってるもん。

 

というわけで、なんだかちょっと愚痴っぽくもなってしまったが、こういう葛藤があるからこそ創作って楽しいよね、というお話でした。なんだかんだこの負のループでぐるぐる回って悩み続けてるのが、私は好きなのかもしれないなあ。回り続けるからこそ見えてくる、自分のずっと奥底に隠れている本音というのも、もしかしたらあるかもしれないし。

 

 

 

 

❏プロフィール
川代紗生(Kawashiro Saki)

ライター。 天狼院書店スタッフ。ライティング・ゼミ講師。東京都生まれ・早稲田大学卒。WEB記事「親にまったく反抗したことのない私が、22歳で反抗期になって学んだこと」(累計35万PV)等、2014年からWEB天狼院書店で連載中のブログ「川代ノート」が人気を得る。レシピを考案したカフェメニュー「元彼が好きだったバターチキンカレー」がヒットし、天狼院書店の看板メニューに。メニュー告知用に書いた記事がバズを起こし、2021年2月、テレビ朝日『激レアさんを連れてきた。』に取り上げられた。天狼院書店で働く傍ら、ライターとしても活動中。

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2021-08-28 | Posted in チーム天狼院, 川代ノート, 記事

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