チーム天狼院

何度読んでも嗚咽するほど号泣する。


*この記事は、「ライティング・ゼミ」を受講したスタッフが書いたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜


記事:松下広美(チーム天狼院)


Amazonのお知らせを見かけてから、今か今かと待ち構えている。
さっきもメールチェックをしていたら、「お客様におすすめの商品」として連絡がきていた。

そのまま、Amazonで買うべきか。
それともイーホンで発注をして受け取るか。
いや、発売日に本屋に走るか……。

あーそうだ。
買う前に、もう一度、復習をしてから読まないと。
頭から読み直して待ち構えないと。

ただ、覚悟が必要だ。
この本はいつだって、私の涙腺を崩壊させる。

読み返すたびに、泣くポイントが増えている。
もう、何度も読み返していてストーリーもわかっているのに、やっぱり泣いてしまう。
しかも、静かに涙を流すのではなく、嗚咽するほど泣いてしまうときもある。

初めての出合いは、2008年だ。

この作者の前作が素敵な作品で、新作だっ! と飛びついた。
作品の空気感は、とてもいい。
冷たい真冬のような風が吹いたり、嵐のような激しさもあるけれど、春の木漏れ日のような穏やかなところもある。

ただ、最初は今ほどハマっていなかった。
5巻ほどで買うのをやめていて、すっかり存在も忘れていた。
あるとき……5年ほど前だろうか、ふと思い出し読み返した。
もうそのときには10巻を超えていたので、最新刊まで買い足して読んだ。

ところどころで号泣してしまうので、一気読みしたいのにできずに、それでも突っ走りたくて傷だらけになって読み進める。
セリフだったりト書きだったり、小さな言葉に心をえぐられる。物語の中の、登場人物がみんな傷を持っていて、痛い、と感じる。

その傷は、みんな、根深いところにある。
でも、出てくる人たちが悪人じゃない。傷つけてしまう立場の人も、何かの理由がある。それよりもみんな、やさしくて、あたたかい。傷はパンパンに張った水風船のようで、今にも割れてしまいそうなのに、やさしくそっと寄り添って包みこんでくれている。
そのやさしさが、心にピンと張った糸を弾いて涙を誘うのだ。

傷つくこと。
大きかったり小さかったりするけれど、人として生きていると誰だって傷を持つ。
それは見える傷だったり、見えない傷だったりする。全く同じ傷なんてなくて、みんな違う傷を持っている。
自分ひとりで癒せるものもあるけれど、誰かのやさしさが必要な傷もある。

この作品『3月のライオン』は、そんな傷ついた人たちが、たくさん出てくる。
登場人物たち……例えば、主人公の零くんは、将棋の世界に生きるしか選択肢がなく、自分自身を閉じ込めながら閉じ込めた自分を全て将棋に詰め込む。痛い、と自分で気づいているはずなのに気づけない零くん。そんな零くんが周りの大人や同年代の友達に、少しずつ癒やされていく。
「よかった……」
と呟きながら読んで、気づいたら泣いている。
零くんや、ひなちゃん、あかりさん、その他の人たちがこれ以上、傷つかないでほしいと思うし、今まで傷ついた分、幸せになってほしいと願う。
もう、親心のような気持ちで読んでしまう作品なのだ。

『3月のライオン』と聞くと、将棋漫画のイメージも強い。
もちろん、将棋に詳しい人は、また違う角度から見ることができる。将棋盤の細かいところまで描かれているので、将棋の解説者のような気持ちで読むこともできる。過去の有名な対局が再現されていたりもする。
そして実際の対戦だけではなく、将棋の世界の厳しさも描かれる。
現実の世界では、若くてタイトルを取っていることばかりがニュースになる。でも地味な光の当たらない場所もあると、究極の実力主義の世界だと、知ることができる。

そんな将棋の、少し地味な場面も、ニヤッとさせてくれるのが、さすが羽海野チカさんの世界だなと思う。

……と、キレイに締めくくろうと思ったが、ここだけは外せないというポイントがある。

実は、この作品、壮大な伏線が存在する。
その伏線がわかったとき、
「えーーー!!!」
と、叫んだ。
嘘じゃないし、誇張でもない。
マジで叫んだ。

まさか、これって思いつきじゃないんですか?
と確認したくなる。
伏線って、普通なら同じ作品の中でクライマックスに向けて準備しておくものなのだ。
でも、作者の羽海野チカさんは、違う作品での伏線を回収してしまったのだ。
そして、羽海野さん自身は、いつか描きたいと思ってたんです、とあっさり言う。
しかも同時進行でもなく、12年越しの伏線回収なのだ。

この12年越しの伏線回収を体験をするのに準備が必要だ。
準備なんて面倒だから、という方は仕方がない。
でも、せっかく読むのであれば、この伏線の回収を体験できないのはもったいない。

この伏線は『3月のライオン』だけでは体験できない。
羽海野チカさんの前作『ハチミツとクローバー』を読むことが必須だ。

どんな伏線かは……読んでからのお楽しみに。

さて、9月29日の発売日までに、もう一度、読み返すか。



■松下広美(チーム天狼院)

天狼院書店「名古屋天狼院」店長。
1979年生まれ。名古屋市出身。
2016年12月に「天狼院ライティング・ゼミ」に出会い、その後、ライティング・ゼミの上級者クラスである「プロフェッショナル・ゼミ(現 ライターズ倶楽部)」に進む。ライターズ倶楽部に3年ほど在籍して、書き続けているうちに、気がついたら天狼院書店に合流をしていた(2020年5月より)。
ライティングだけではなく、フォト部部員としても活動中。相棒はSONYα7Ⅱ。

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