【R-18/30歳にもなるのに】コンドームを買うのは、なぜこんなにも恥ずかしいのか。《スタッフ平野の備忘録》
*この記事は、「ライティング・ゼミ」を受講したスタッフが書いたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:平野謙治(チーム天狼院)
飯を食った。皿洗いも済ませた。風呂も入った。
さあ夜はこれから。そんな時に僕は気づいてしまった。
「あれ? この箱空だぞ」と……
タバコの箱より少しだけ大きいソレは、中身が入っていたとしても大した重量はない。
それにしたって軽すぎる。
案の定、蓋を開けたら空だった。
焦燥感を抱きながら、ストックがありそうな場所を探る。
しかしながらどこにも見当たらず、これが最後の一箱で、この間使ったのが最後の一枚だったいう事実をすぐに思い知らされた。
妻にそのことを報告すると、「私も気づかなかった、買っておけば良かったね」と申し訳なさそうな顔をされた。
「しょうがないから、今度にする?」
今度にする?
いや、それはダメだ。
期待感の高まった俺はもう、山本リンダさながらにどうにもとまらない。
俺の心の中で、某塾講師が言っている。いつやるの? 今でしょ、と。
(受験勉強に励んでいる全国の皆様、本当にすみません)
今から買ってくる。そう宣言すると、妻はさらに申し訳なさそうな顔で、
「ひとりで買える?」と心配そうに言った。
いやいやいや。何をおっしゃいますやら。
私は立派な成人男性ですよ?
『はじめてのおつかい』じゃあるまいし。
コンドームのひとつやふたつ、ドレミファだいじょーぶだわ。
部屋着の上にダウンを羽織り、寒空の下にひとり飛び出した29歳成人男性。
頭の中に流れるのは、B.B.クィーンズ。全然可愛くない視聴率0%の「おつかい」が、今幕を開けた。
最寄りのコンビニまでは徒歩3分もない。ちゃっちゃと済ませて、早いこと帰るぞ。
そう意気込んだ僕だったが、その勢いはすぐに萎むことになる。
……なんか今さらになって、めっちゃ恥ずかしくなってきた。
なんでかって?
だってまるで、店員さんに「私これからセックスします」って宣言するようなものじゃないか!!
わかってる。考えすぎだ。アラサーの既婚者が何を童貞中学生みたいなこと言ってんのって話だ。
だけど事実として、冬の夜の寒さを感じさせないほどの恥ずかしさは無視できないほどだった。
コンドームを買うのは、決して恥ずかしい行為ではない。
理性ではそれはわかっている。だけどもやっぱり、ちょっと恥ずかしい。
さらに「23時過ぎにコンビニ」で買う、というのが恥ずかしさを大幅に助長させていた。
ドラッグストアで買うのは、まだいい。
今後のために避妊具を買う紳士って、感じがする(※個人の見解です)。
ドンキとかもそうだ、わざわざドンキに行っている時点で急いでいる感じはない。
一方、23時過ぎに部屋着でコンビニに買いに来る輩って……
そんなの絶対これから、セックスするじゃんか(事実そうです)。
一刻も早くセックスをするために急いでいる、慌てん坊のセックス大好き男って思われるじゃん(事実そうです)。
……まあ恥じらいを覚えたところで、引き返すわけにはいかない。
むしろ「あ、こいつコンドームを買うの恥じらってる」って店員さんに思われる方が、なんだか余計に恥ずかしい。
「マスターいつもの」的なノリで、堂々と買ってやる。
コンビニに入り、遠目で場所を捕捉する。
無駄のない動きで、背筋を伸ばし、堂々と男性店員の元へ向かう。
イメージはそうだ。『白い巨塔』の回診のような(ひとりだけど)。
恥じらいなんて1mmも感じてませんみたいな顔で、「感動の0.02mm」と書かれた箱をレジに置く。
「よろしくお願いします」
普段通りを演じようとしすぎて、普段言わないセリフが思わず口をついて出てしまった。
しかも普段出さないような声量かつ、無駄に「ええ声」で。
いや、「よろしくお願いします」て。
何をよろしくお願いするんだ?
「誠に僭越ながら、これからセックスさせていただきます! よろしくお願いします!」ってか?
やかましいわ。「感動の0.02mm」とか書かれている箱を、急いでコンビニで買う男はどう頑張ってもカッコつかない。
それでも僕は必要以上の凛々しさで、レジ袋を丁重に断り、洗練された所作でその箱をダウンのポケットにしまった。
いやマジで。誰に対するアピールだよ。
こうして手に入れた小さな箱。
10分に満たないはずのおつかいが、やたらと長く感じられた。
もうあと数日で30歳になるというのに。なぜコンビニでコンドームを買うのはこんなにも恥ずかしいのだろう?
百戦錬磨の男の中の男ならそんなこと思わないのかもしれないけれど! 少なくとも僕にとっては。
こいつだけは切らしちゃいけないと、改めて思うのだった。
でもよくよく考えれば、いい時代になったよな。
だって今なら、通販でなんだって買える。
今回は切らしていたのに直前まで気づかなかったという失態のせいで買いに行く羽目になったけど、これからは余裕を持って頼んでおけばいい。せっかくのプライム会員なのだから。
コンドームを買うだけでこんなに恥ずかしいのだとしたら……
ふと、一昔前の男性に思いを巡らせてみる。
どうしても今日、エッチな本や映像作品が必要ってなった場合(いやそんな場合ないだろ、って思われるかもしれませんが、そういう場合もあると思います)、店で買うなり、レンタルするなり、必ず店員さんの手を介さないといけなかったのだろう。
想像するだけで、冬の寒さが吹き飛ぶほどに顔が熱くなる。
だって僕が店員だったら、「お、こいつ見かけによらずこういう性癖なのか」とか絶対考えるし。
そう考えるとスマホ一つでなんでもこっそり買える今の時代、マジで助かります。
まあ、僕がそういうコンテンツを買っているかどうかは別にしてね。
そんなことを考えながら、帰路に着くのであった。
まあ無事手に入ったし、めでたしめでたしってことで。
……というか、勝手にこんな内容を記事にしてアップしちゃったけど、妻に見つかったら怒られないかな?
コンドームをコンビニで買う恥ずかしさより、遥かに恐ろしいぜ⭐︎
◽︎平野謙治(チーム天狼院)
東京天狼院スタッフ。
1995年生まれ。千葉県出身。
早稲田大学卒業後、広告会社に入社。2年目に退職し、2019年7月から天狼院スタッフに転身。
2019年2月開講のライティング・ゼミを受講。16週間で15作品がメディアグランプリに掲載される。
メディアグランプリ33rd Season, 34th Season総合優勝。
『全く興味なかったはずのダンスグループ『BE:FIRST』のせいで、危うくノーパンで出勤しそうになった話。』など、累計7作品でメディアグランプリ週間1位を獲得。
その他、『ラブホテルの階段で、ボコボコに殴られた話』など。
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