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チーム天狼院

お礼の代わりにできること


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:秋田珠希(チーム天狼院)

「何、これ」
私は眉をひそめた。
視線の先には、Facebookのタイムライン。SNSは好きではないが、情報収集のために日常的にチェックしている。
好きではないのは、どうしても誰かを嫉妬してしまうからだ。
こんなことをやりました、とか、ここに行ってきました、といった記事はきちんと読まずにスクロールしていく。あと、こんな嬉しいことがありました、とかも。
読んだとしても、「ふーん」「おめでとう」「良かったね」の三つくらいしか感想が言えない。

SNS疲れ、という言葉がある。
人の生活と自分を比べ、嫉妬感や焦燥感を感じてしまうことだ。
ただでさえ負けず嫌いな私がSNSなんて、興味ないフリでもしていないとやっていられない。 冷静におめでとう、と言いながら、心のどこかで先を越されたと悔しがる。
だから、私は 心からの応援ができない。心からの祝福もできない。
「こんなことを頑張ってます」というような投稿は、基本的に読めない。
勝ち組・負け組なんて言葉は意味がないのを知っていても、そういう投稿は「そう、良かったね」で済ましたくなる。
じっくり見てしまうと、どす黒い感情が吹き出してくるから。
友達がやっていることは、基本的に応援するし、成果が出ればいいなと思う。でも、実際成果が出た時、私がどんな気持ちでそれを聞くのか。想像するだけで嫌になる。
おめでとうと素直に言いたいのに、心から思えないことへの自己嫌悪。自分が置いて行かれたような悔しさ。そんな諸々を感じて、「すごいね」「おめでとう」と一言言うだけで精一杯だ。
そう思う自分が嫌いなだけに、私は読まないことにしている。

だがその投稿に、私は思わず目を留めた。
なんだこれ。
ちょうどFacebookを開けたところだった。開けた瞬間、目に飛び込んできた。
流れるように“詳しく見る”を押した。
その記事は、高校の友人が動画を投稿したものだった。
動画の中で彼女は踊っていた。
彼女の四肢が、ものすごい存在感を放って動く。
柔らかく、時に強く。足で地面を踏みしめたり、滑るように歩いたり。しなやかな動きで長い髪を揺らしたかと思うと、力がこもった動きでハッと空気を変える。
それは、曲に合わせたオリジナルのダンスだった。
リクエストされた曲に合わせて踊る、創作ダンスのプレゼント。
彼女は、今ニューヨークでダンス留学をしている。その動画は、留学情報サイトでライターもやっている彼女が、書いた記事をシェアすると、希望した曲を一曲踊ってくれるという企画だった。

一曲聞き終わると、私は次の動画をクリックしていた。さっき聞いた曲は洋楽だったけれど、J-POPだとどうなるんだろう。
先ほどの衝撃と寸分違わぬ出来だった。彼女はこうこうとエネルギーを放ちながら踊っていた。
たまたま私も知っているポピュラーな曲だったが、いつも聞く時それほど意識していない音が 、一つ一つ丁寧に聞こえた。歌詞も音も丁寧に受け止めて踊っているのだろう、彼女の息遣いまで聴こえてきそうだった。

無性に懐かしくなった。
高校の頃から、彼女が踊る姿は見たことがあった。ダンスなんて一つ一つの動きに神経を使うハードなものであるはずなのに、笑顔で幸せそうに舞っていた姿が印象的だった。
それは、ダンスが好きなんだな、と見る者に思わせるような姿だった。

あの高校の舞台で踊っていた彼女が、今度はニューヨークで、動画の中で踊っていた。しかも、プレゼントとして。
ダンス留学でアメリカに飛ぶ、ということ自体、すごいなと思っていたけれど。
「頑張ってます」という経過報告の投稿以上に、彼女が頑張っていることが伝わってきた。

かっこよかった。
いいなあ、と思った。
誰かに対して、自分がやってきたことでお礼ができるのか。

それはどす黒いやっかみではなくて、ただ純粋にその手段を持っている彼女がかっこいいと思った。
もはや冷静な振りなんか、している場合ではなかった。

私は、そんな彼女に何ができる?

連絡を取るのが苦手な私が、動画を見た数分後に彼女にメッセージを打っていた。
「久しぶり!」から始めたメッセージで、私は彼女のことを記事にしてもいいかと聞いた。
初めてだった。誰かのことを書きたい、と思ったのは。
書かせて欲しい、どう思ったか。どう感じたか。記事の形で伝えさせて欲しい。

あなたはすごい。かっこいい。
これからもずっと、応援してる。

同級生には負けたくない。だからなかなか素直に認められなかった。
誰かがやっていることに対して頑張れとは思うけど、それは所詮他人事。私には関係ない。斜に構えないとやっていられないはずだった。

でもそう思ったら、ふっと気持ちが軽くなった。

記事をOKしてもらった後、 私はちゃっかり曲もリクエストさせてもらった。
どんなダンスを見せてくれるのか、今からすでに楽しみなのだ。

***

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