恋をして大人になるってあながち間違いじゃないのかも
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記事;鈴木佑香(チーム天狼院)
“二十歳(ハタチ)”ってつまらない言葉だなと思う。
わたしは今年で21歳になる。1年間浪人をしていたため、大学の同級生はほとんどが1歳年下で、今年ハタチになる。最近は成人式の着物の話しやお酒が飲めるようになる話で持ち切りだ。
「ハタチだよ! もう大人じゃん!! やだーー!!」
なんてセリフをよく耳にする。
聞いていると「それじゃあ私ってもう大人なのか」と思うのと同時に「わたしは大人に成れて無いかもしれない」と考えてしまう。
2年生のみ受講している授業の講義中、先生がハタチになる多くの生徒に向かって「今が一番楽しい時だよ、僕も戻りたい」なんて話していた。「今年ぐらいしか遊べないぞ!」、「ハタチかぁ、いいなぁ」、「人生の夏休みだね」とか、「ハタチの夏は一度きりだよ」なんてハタチを過ぎて社会人になった人がみんな口を揃えて言う。
横で一緒に授業を受けてた友達は「そっか、楽しまなきゃな」なんて呟いていたけど、私は心の中で「ハタチの夏過ごしたけど、なにも特別じゃないよ」って返事をした。
もちろんハタチの夏は一度きりだけど、夏は来年もやって来るし、何歳になっても夏は来るよ。一度きりだったのは一番楽しかった夏だったからじゃないの?
ハタチ……ハタチ……ハタチ……。
呪文のように聞こえてくる。大人に成る呪文だ。
「『ハタチです! 大人です!!』ってわたし言えないなぁ」
なんて授業終わりに何気なく言ったわたしの言葉に、
「宣言するものじゃないでしょ大人って。 少しずつ、自然と。 じゃないの」
なんてさっき「ハタチ」っていう呪文に惑わされてた友達が答えた。
うーん。でも成人式でみんなで宣言するじゃん。私たちハタチ! 大人になりまーす! って。こんなひねくれたことを考えてしまう私はきっとまだまだ子供なのかもしれない。なんて考えながら、
「少しずつ、自然とって、なんか恋愛みたいね」と、適当に返事を返した。
友達と別れ、ふとさっきの会話を思い出す。適当に言ったけど、あながち間違ってないかもしれない。
そういえば、好きな人ができた時は「わたし○○くんが大好き! 大好きで夜も眠れない!!」なんて宣言しないよなぁ。って。
好きな人ができるって、ほんとに好きになるのって、なにか大きなきっかけがあったからじゃないと思う。漫画や映画、物語はそんなに時間がないから、好きになるきっかけが「コレです!!」ってあるけど、実際はふとした時に、「あ、好きだなぁ」って思うものだ。
大人になるのだってそういうことじゃないのかな。年齢とか、環境とか、そういった何か大きな節目だったり、ビッグイベントだったり、そういうのがあった時じゃなくって。もっと日常に隠れてる。
お酒が飲めるようになって、“飲み会”っていう単語が友達との会話の中で自然と増えてきた。お会計の時、クレジットカードを出して「一括で」なんて言ってみたり、終電に乗り過ごして酔っぱらったサラリーマンに紛れてタクシー待ちの列に並んだり、そういう何気ないことの積み重ねだ。日常にちょっとずつ“大人”の自分が入ってくる。きっと。
恋した時だって、日常にちょっとずつ「好きな人」がいて、影響されていくものだと思う。好きな人の好きな曲、好きな本、よく食べてるお菓子とかだんだんと好きな人の好きなものが自分の好きなものになる。
こういうのって恋愛しないと、「少しずつ、自然と」になる好きな人ができたことが無いと分からないかもしれない。
少しずつ、自然と。だ。
先週初めてタクシーに乗った。
飲み会帰りで終電が無くなっていたからしょうがなくタクシー待ちの列に並んで乗り込んだのだけど、初めて乗るタクシーの中から見える夜の街並みはいつもより違って、大人びて見えた。少しオトナになった気がした。自然と。
≪終わり≫
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