歯医者に行ったら美意識が高くなった話
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:新保爽(チーム天狼院)
「少しだけ歯茎が下がっていますね」
5年ぶりに行った歯医者で言われた言葉です。わりとショック……、いや、凄くショックでした。つまりは、歯周病になりかけているってことです。まだ24なのに! もうショックすぎて、歯医者の予防プログラムを申し込んじゃいました。
予防プログラムってご存知ですか? これは、虫歯や歯周病の原因となるプラークを自分でコントロール出来るようになり虫歯にならない歯を作るためのものです。そのため、歯科衛生士の方がブラッシングの指導や歯石の除去、フッ素など付きっきりでやっていただきます。大人になってから歯の染め出しをすることになるなんて思ってもみない事態。何がなんでもこれ以上歯周病を悪化させるものか。それだけを思って歯ブラシ指導全力で受けました。
大人になって歯ブラシ指導ですよ。もう、響きから恥ずかしい。「虫歯になるってことは歯磨きが十分でないということです」そう言われてしまえばごもっとも。久しぶりの染め出し……もうね、歯が真っ赤なんです。恥ずかしい。もちろん歯医者に行く前に歯磨きはしていったんです。それでも歯の隙間や裏側が取れ切ってないことが一発で分かってしまった。出来ていたつもりで、結果として全く足りていなかったことを思い知らされました。それを何度か繰り返すと、口の中の状態が自覚できる。どんどん赤いところが少なくなって、磨きにくいところが自覚できる。正直、めちゃくちゃ楽しくなってきました。
ところで、歯周病ってちゃんと知っていますか? 私は、知っているようで知らなかった。歯を失う理由の1番が歯周病です。歯茎が下がるって実はめちゃくちゃ怖いことだったんです。歯周病って、歯を支えている顎の骨が溶けているんですよ。だから、元に戻らない! 怖くないですか? 顎の骨が溶けているのに、痛くもない。ただ、歯周病には1つだけサインがある。それが歯茎の出血なのだそうです。それ以外は骨が溶けきって歯がぐらぐらするまで痛みすらない。つまり、歯茎の出血があるってことは、磨き残しがあるっていう最大のヘルプサインだったんですよ。お恥ずかしいですが、正直歯を磨いていて出血することたまにあったんです。それをまたか、と見逃していた自分! もうね、馬鹿野郎って話ですよ。ただ、磨きすぎも歯茎の負担になるわけで、丁度良い歯磨きが大事。もう鏡と向き合って研究です。
そうやって毎日歯磨きをしていたら、少しずついろいろなことが変化していきました。最初は歯が綺麗になってくが楽しかっただけなのに、肌や髪、身体……なんか色んな部位が気になり始めた。それは何故か。多分鏡と向き合う時間が長くなったから。
歯磨きって毎日しますし、その時間が長くなれば必然的に鏡に向き合う時間も長くなるんですよね。すると、肌の状態とか自分の髪型とか、メイクとか気になり始めたんです。綺麗にしている。綺麗になっている。じゃあ、ほかも綺麗にしようって思えてくる。つまり、ポジティブに自分と向き合い始めるようになった。
私にはたくさんコンプレックスがあります。そのくせ、そんな自分と向き合うのが嫌で結構目を逸らしていました。でも物理的に向き合い、さらには良くなっていく過程が見えることによって、もっとよく出来るかもって思えてきた。
歯磨きって実は自分と向き合う時間でもあったのです。
大学時代にメイクやマナーの講座がありました。そこで、毎日何分鏡を見ていますか? と聞かれました。鏡に向き合う時間が長いほど、綺麗になりますよと言われたけれど、信じられなかった。だって、自信の無い、コンプレックスだらけの自分と向き合っただけで何が変わるんだ? って。でも、今なら信じられる。多分講師の方が言っていたことって今の私の状態だと思うから。
鏡ってもうね、現実が映るんですよ。ニキビもクマも厚ぼったい右目も全部映ってる。私だって女の子ですから、綺麗になりたい欲望は人並みにあります。コンプレックスな顔は出来たら見たくない。でも、もう毎日そこそこ見るんだから、出来れば可愛くしたいわけで……どうやったらこのコンプレックスをよく出来るのか、歯だけじゃなくて、色々な部位のことを考える時間も増えました。
自分と真正面から向き合うきっかけが、まさか歯磨きになるとは、私も思ってもみませんでした。予防プログラムもいよいよ終盤。染め出しも、本当に染め出しした? ってくらいには磨き残しが無くなってきています。でもまだまだ意識改革は始まったばかり。これからも、鏡と向き合いながら自分をより良くしていきたい。
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