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チーム天狼院

ヘーゼルナッツのカラオケ


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【10月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《平日コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

川田麻由(チーム天狼院)
 
カラオケの楽しみ方は人それぞれ色々あるかとは思うけれども、私が10代から嗜んできたカラオケは、気の合う2〜4人の少人数で立ち寄って、それぞれ人のことは気にせず好きな歌を歌いまくるという引きこもり系のカラオケだった。もちろん、一人で行くことも好きで、誰かと一緒に出かけたときでも、ご一緒ですか? という店員さんの言葉に、いえ別に、と答えては、それぞれ違う部屋で歌うことも多々あった。
 
そんな素敵引きこもりカラオケライフを送ってきた私が、色々あって知り合った賑やかパーティーな友人たちと初めてカラオケに行ったとき、あ、あ、歌う曲がない、この曲も知らない、アイドルの歌も聞かないのでわからず、なんの空間に来てしまったのかと絶望したことは言うまでもない。何を歌えばいいのかわからず知る限りの有名な曲を入れてはあたふたとする。
 
「歌うだけじゃあれだね、ゲームしよっか!」
 
彼らは歌を歌うだけでは飽き足らず、なんらかのゲームをしようと言い始めた。カラオケでゲーム? いやいや、私にとってカラオケは、歌えるだけで花マル大満足な施設であったため、やめてほしいなと思いつつも、何が始まるのか気になって、身構えつつも、ひとまず友人の話を聞く。
 
「カラオケの年代別メドレー入れて、1曲ずつ歌っていくの。歌えなかったら負けね」
 
年代別メドレーという言い方が正しいのかはわからないが、2001年に流行った曲とか、1998年の紅白歌合戦など、つまりは何年に流行った曲を雑多に色々歌えますよというサービスのことだ。同年代同士で行くときは中学生頃の年代を入れると、懐かしいねと話しも弾むので、共通する趣味の歌手がいないときに役に立つともいえる。
 
メドレーを歌う習慣のなかった当時、これがパリピのやり方か! と当時の私が大変ショックを受けたことをよく覚えている。流行りの曲はほぼ聞かないため、負ける気しかしない状況だったのだけれども、周りの友人の盛り上がりもあり、ひとまずゲームは始まることになった。
 
友人たちほとんどの年齢は私よりも少し下だが近いので、90年代や0年代の知っている曲はだいたい似ているようだった。気になっていたほどハンデのないゲームだったように思える。曲が流れるたびに、懐かしいね〜なんて言いながら、自分の歌う曲が知ってる曲であれとマイクの順番をまった。
 
いつの年代のなんの曲だったのかは忘れてしまったが、自分の番になんとか歌い終えたあと、隣にマイクを渡したところ、次の曲は今までとなんとなく音が違う。この曲調は……演歌だ! と気づいて隣を見た。これは無理だ! 知らない! などなどみんなで騒ぐ中、若者の盛り上がり怖いね大丈夫かなと一緒に参加していたお姉さまが本領を発揮した。
 
もともと歌が上手いなと思っていたけれど、伸びやかに歌い上げる声、こぶしの入れ方、何もかもが完璧! 知ってるんだ! とみんなでかなり盛り上った。これが社交的な民の遊び方なんだね、一体感すごいね、と私も感激し、お姉さまを見る。歌い終わったお姉さまに、上手いねー! とみんなで褒め称えたところ、ま、知らない曲なんだけどね、と得意げに彼女は言った。
 
「え、知らない曲なの?」
「そうよー! それっぽく歌えば聞けたもんでしょ」
 
これはゲームとしてセーフなのか否かが話し合われることになったが、いやもう完璧でしょう、と全員一致でのクリアとなった。その後、そのゲームは知らない曲をそれっぽく歌うという別のゲームになり、それはそれで楽しいカラオケになった。
 
以来、その友人たちとよく一緒に行動しているため、素敵なひきこもりカラオケの時間を取ることがなかなかできない。同居人とも邦楽の趣味が合わないから、charaや相対性理論を歌うことがなかなかできないでいる。先日、それでもどうしても歌いたい欲が爆発したため、みんなでご飯をしたときに、カラオケに行こう、そうだ、カラオケに行こうと誘い続け、ついにみんなでカラオケに行くことになった。
 
混み具合の関係でキッズルームに通された私たちは広いスペースをもらうことができた。私ともう一人が最近踊る機会のあった曲を歌って盛り上がる中、歌わない勢が曲に合わせて楽しそうに踊り始める。誰も歌えないDA PUMPの「U.S.A.」を入れては私以外の全員がマイクを置いてPVに合わせて踊るなど、その日は謎の盛り上がりを見せていた。ミスチルの「youthful days」ではコラージュに合わせてダンス担当班が奇妙な動きをしている。
 
「なんか今日楽しかったわ」
「キッズルームでよかったね」
 
相変わらず友人たちのテンションには付いていけないけれど、楽しそうにしている人たちを見ているのは楽しい。帰り際に夜のカラオケのビルを見上げる。四角く整列したお店の窓を見て、カラオケ屋さんの店内では、きっと部屋の数だけみんな別々の楽しみ方をしているのだろうなと思った。箱に入った外国のチョコレートみたいだ。ヘーゼルナッツやストロベリー、日によって食べたい味も変わる。色んな味を楽しめばいいのだ。
 
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この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。
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