チーム天狼院

【雑誌BLENDA休刊】元ギャルの私が考える、世界がギャルによってバランスがとれている理由《川代ノート》


 

 

BLENDA

スタッフ川代です。今回はめずらしく書店員らしい話題に触れてみようと思います。

雑誌のBLENDAが9月号で休刊になるらしいですね。

Cawaii、Happie Nuts、小悪魔ageha…中高生のとき親しんでいたギャル雑誌がどんどん休刊になっていくのは本当にさみしい気持ちがするものです。
最近はいわゆる「ヤマンバ」ギャルもほとんど見なくなり、センター街に行っても奇抜なファッションの人もそれほどいないし、渋谷自体がおしゃれな大人の街になりつつある。

流行というものがありますし、ギャル文化が衰退していくことはファッションの流れとして自然なことなのかもしれませんが、正直に言って、私は渋谷にはいつまでも「ギャルの街」「若者の街」であってほしいのです。根拠とかはなにもなく、超個人的な理由でですが。

こういうといつも驚かれるのですが、私は中高生時代、ギャルだった時期がありました。とはいっても校則があったので黒髪でしたし、肌も焼いていなかったので、本業のギャルの方たちからすればまだ甘いレベルではありましたが、一般的に見ればじゅうぶんギャルだったと思います。つけまつげは盛って二枚重ね、アイラインで目の周り真っ黒、土屋アンナみたいな全剃りで釣り上がりすぎの眉毛に、スプレーでガチガチに固まった巻き髪。109へ買い物に行き、毎週のようにセンター街でカラオケ、プリクラ。好きなブランドはセシルマクビー、好きなモデルは益若つばさ、愛読書はPopteen、小悪魔agehaと、いわゆる「ギャル」のイメージを追いかけていたような中高時代でした。

ギャルになったのはおそらく、自分を変えたい思いがあったからだと思います。私はおとなしくて地味で教室の隅で絵を書いているような小学生だったので、そのことでクラスメイトから馬鹿にされ、スクールカースト的に言えば底辺にいました。みんなに見下され、けっして目立つことを許されない自分。女子校の自由な校風の中学に入って、そんな今までの惨めさ、息苦しさでモヤモヤしていた気持ちやコンプレックスを払拭したくて、「私だって目立ちたい」という思いが爆発したのだと思います。

ギャル=カッコイイ、楽しい、目立ってる、エバれる(?)みたいなイメージ。中学二年生のただの女の子の自分にとっては、おしゃれかダサいか、かわいいかかわいくないか、友達が多いか少ないか、くらいしか自分を測る術を持っていないので、自信をつけるにはギャルになるのが一番手っ取り早い方法だったのかもしれません。

かわいくなりたい、目立ちたい、という思いを、女の子なら誰でも持っていると思います。コンプレックスだらけの中高生ならなおさら。自信がない自分を変えたいという夢、褒められたい、目立ちたいという野心を叶えてくれるのが、ギャルという存在なのです。とりあえずギャルになれば目立てる。思い切り個性を表現できる。嫌いな自分の顔を変えられる。それはもはや単なるおしゃれではなく、自分を変身させてしまう行為なのです。
アッコちゃんやセーラームーンや、キューティハニーや。子供の頃憧れていたヒロインのように、魔法を使って変身できたら。別人になれたら。そんな想いを誰でも持っているのです。

ギャル文化というのはある意味では現実逃避できる最高のファッションです。どんなに自分を盛り付けても、飾り付けても構わない。嘘をついても構わない。思いっきりおしゃれをして、渋谷の街に向かえば、そこでは「別人の自分」になることができる。少なくとも私にとっては、ギャルというのはそれくらい強い力がありました。どんな自分でも許してもらえるという安心感があったのです。

けれど今では、ギャルは姿を消す、まではいかなくとも、確実に少なくなってきています。渋谷に行っても前ほどは見ないし、一時期は話題になっていたセンター街にたむろするギャルサーも、今ではほとんど活動していないでしょう。
なんだかみんなコピーしたみたいに同じようなファッションをしていると思いませんか?お花柄のワンピースをきて、カーディガンを肩にかけて、レースの靴下で、少し明るめの髪をゆる巻きにして、ファンデーションで肌を白くしてチークを濃くして、でもナチュラルメイク風に。

個性爆発!みたいな子はかなり少なくなったような気がします。みんな周りと違うのがいい、個性的がいい、とかよりも、みんなと一緒がいい、変わり者になりたくない。出る杭は打たれるというのを、はじめからわかっているような。
ゆとり世代というのもあるのかもしれません。個性とかどうでもいいー、目立つとかアホくさい、無難でいいよ、みたいな冷めた考え方がじわじわと蔓延してきているのかもしれません。打たれる前に、出る杭になろうとしない。ネットの影響でギャル雑誌は売れなくなった、とも言いますが、ギャルのブームはネット上でも引いてきています。ギャルのブログよりもふわふわしてゆるい雰囲気の青文字系の読者モデルのブログの方がずっと人気があるのです。

ファッションや服は人に見せるためのものだ、TPOをよく考えて選ばないと恥ずかしい、という意見もよくわかります。けれど全力で自分のためにファッションを楽しむ時期もあってもいいと、と私は思います。
きゃりーぱみゅぱみゅみたいに、全力で自分のやりたいことをファッションで叶えて、しかもそれで多くの人を喜ばせることにも繋がっています。あそこまではいかなくとも、「まったく違う自分」を体験できるツールとしてのギャル文化に衰退して欲しくないと、私にそれを経験させてくれたものが無くなっていくのを見たくない、と個人的には思ってしまいます。

子供が変なファッションにハマっちゃったら心配だわ、というお母様方もいらっしゃることでしょう。でも意外に大丈夫なんです。限界まではっちゃけた自己表現をしてしまえば、必ずいつかは気付きます。他の人の目も気にしなくてはならないのだ、ということに。私は高校生も終わりに近づくと、ふっと憑き物が落ちたように、「あ、自分他人からしたらものすごいファッションしてたんだな」と気付いたのです。無難になろうとするのはそのあとで構わないと思います。恥ずかしい黒歴史があった方が面白いし、逆に思春期の頃にそういうはっちゃけ方をしないと、あとでモヤモヤしたり、おしゃれの仕方がわからなくなったりして、あとから自分を見失ってしまうことになる。

女の子にはみんなイメチェン願望、変身願望がある。「芸能人と顔交換できるとしたらさ、誰とする?」とか、相手からすれば絶対に交換してくれるわけないのに、そんな無謀な会話、よくしたりしますよね。やっぱりみんな心の奥底では、憧れの女の子に変身したいという願望があるのだと思います。そういう気持ちがあればこそ、ダイエットしたりメイクやファッションを研究したり、綺麗になろうと努力することができる。そしてそういう努力をしようというエネルギーの元は、自分がギャルだった経験だったりするのです。私にとっては、あの楽しかった変身体験、別人になれた時間があったからこそ、辛くてもダイエットしようとか面倒なスキンケアしようとか頑張れるのだと思います。見た目やファッションだけでなくて、内面的にも、もっと理想の自分に近付きたいという気持ちを生み出すきっかけになっているのは、あのときの経験です。ギャルであったことは、私にとっては絶対に必要なことだったんだ、どんなにあとから振り返って恥ずかしくても、と思うのです。

ギャルというトンがった存在がいてくれるとこで、世の中はバランスがとれる。自分と全然違うタイプの人間がいて、でも楽しそうに生きているのを見ると、変にホッとする。私は本屋さんの雑誌の棚に、ギャルの雑誌がぶわーっと並んでいるのを見て、その自分と全然違う文化を見て、なんだか不思議と幸せな気持ちになれるのです。ああ、ここは面白い国だなぁ、自由な国だなぁ、という風に。

ファッションは移り変わっていくものですし、原宿系とかの人たちが個性を爆発させてくれるかもしれないけれど、なんだか今はギャル文化が消えて行ってしまうことに不安を感じています。
昔の自分に重ねてるただの懐古主義かい、と言われれば否定はまったくできませんが、とにかくより思春期の若者たちが画一的になってしまうことはなんだか嫌なのです。彼らにとってはファッションが自己表現の一番身近な方法だと思うので。
渋谷が大人な街に変化しよう、なんて流れがありますけれども、渋谷がもっとおしゃれになってしまったら、ギャルたちは、コンプレックスを抱えるティーンエイジャーたちは、どこへ向かえばいいのでしょうか。たむろをしない、下品じゃない子どもが増えるのは良いことかもしれないけれど。でも大人に迷惑をかけない子どもが増えたらどうなってしまうのでしょうか。迷惑をかける経験、バカをやった経験がない大人が増えてしまったら?

ギャルがいなくなるというのは簡単なことではありません。気の張り詰めたティーンエイジャーが自由になれる方法がひとつ絶たれるということでもあるのです。

いろいろギャルの重要性、ギャルがいなくなってはいけない理由を考えていましたけれど、結局のところ、本音は寂しいからなのです。
自分の居場所が、ひとつひとつ消えてしまうようで。

私、未だに少し、ギャルに憧れているのかもしれません。
休刊になったギャル雑誌のみなさま、復活を心より願っております。

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2014-07-04 | Posted in チーム天狼院, 記事

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